……って、あれ?


アイオリア様が私に告白をするとか、プロポーズをするとか、そんな話をしていたのに、いつの間にシュラ様の話に切り替わってる?
やっぱり私、この人達の話にペースにはついていけないかも。
いつ、話題がシュラ様に移ったのか、それすら分からなかったんだもの……。


「何、キョトンとした顔してンだ、オマエは?」
「え? あ、あの、いつの間に話題が変わったのかと思いまして……。」
「別に話題なんて変わってないよ。」
「え、だって、今はシュラ様と、その……、シュラ様が想いを寄せている『彼女』の話をしてましたでしょう?」


私の言葉に、デスマスク様とアフロディーテ様は顔を見合わせ、半瞬後には、二人同時に呆れたような溜息を吐いた。
え、な、何?
私、何かおかしな事でも言いましたか?


「オマエね……。本っ当に、マッッッッッッジで鈍いんだな。鈍い鈍いとは言い続けてきたが、あまりにも過ぎンだろ。ココまで酷ぇと、女として問題アリだぞ。」
「キミの脳内は、どうなっているんだい、アンヌ? 大丈夫なのか、人間として?」


アフロディーテ様にまで、そんな事を言われるなんて!
ショックです、激しくショックです……。


「イイか。その足りない頭をフル回転させて、よーく考えてみろ。」
「は、はい……。」
「まず、アイオリアが任務から戻って来たら、キミに告白するかもしれないという話をしていたね。」


えぇ、そうです。
でも、いつの間にか、その話題は、シュラ様の話題に取って変わられていた。
私の気付かぬ内に。


「でもって、告白をすっ飛ばして、プロポーズになるかもしンねぇなって話から、子作りの話になり、アフロディーテがシュラに話を振った。」
「はい、そうですよね。で、そこから話が、シュラ様とシュラ様の好きな人の話題に――。」
「オマエはアホか? なンで、そこでいきなり話題が変わる必要性があンだよ。話は続いてンだよ、ずっと。」
「え……。」


話をしながら、私の両サイドへと移動してきたデスマスク様とアフロディーテ様。
身体の大きな二人に挟まれた私は、疑問符をいっぱいに浮かべて、その顔を交互に見上げた。
肩を竦めたアフロディーテ様から、まるで可哀想なものでも見るかの如く憐れみの視線を送られると、とても居心地が悪い気がして、小さく縮こまってしまう。


「単刀直入に聞くけど、アンヌはシュラの想い人が誰だと思ってるんだい?」
「え、あの、それは……。」


――ガタンッ!!


その時、大きな音がして、私はハッとして顔を上げた。
それは立ち上がったシュラ様の肘が、テーブルの角に当たって鳴った音。
見上げるシュラ様は機嫌が悪いのか、お酒に酔っているのか、やや充血した目が酷く据わっていた。
ちょ、ちょっと怖い、です……。


「氷を取ってくる。」
「あ、なら、私が……。」
「良い。俺が自分で行くから、アンヌはそこで座ってろ。」


氷を取りに行く振りをして、上手い事、この曲者なお二人の間から抜け出せればと思ったのに、今日は妙に親切なシュラ様に阻まれ、それは断念させられる。
キッチンへ向かってドスドスと歩いていくシュラ様の後ろ姿を眺めながら、私はちょっとだけ恨めしく思っていた。





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