9.飲み会@



私がリビングへと戻ると、既にシュラ様達の飲み会は始まっていた。
三者三様、好きなお酒をグラスに注いで、セーブする事もなくグイグイと煽っている。
そして、飲むだけでなく、目の前に並べられたお料理も豪快に平らげていく。
それは、シュラ様、デスマスク様のみならず、アフロディーテ様も。
これまで何度となく彼等の飲み会の給仕をしてきた私ですら、その見事な飲みっぷり、食べっぷりに呆然と立ち尽くし、暫くの間、唖然と眺めてしまう程だった。


「オイ、いつまでそンなトコに突っ立ってンだ? 早くコッチ来い。主役がいなきゃ意味ねぇだろ。」
「しゅ、主役? 私がですか?」
「さっきも言っただろう。今日はキミの快気祝いなんだから。」
「あ、そうでした……。」


私は慌てて彼等の傍へと駆け寄った。
テーブルの真横まで行くと、途端にムワッと立ち込めるアルコールの濃厚な匂い。
まだ始まったばかりだというのに、もうこんなにお酒の匂いがプンプンしているなんて。
思わず、ちょっとだけ顔を顰めてしまう。


「ホラ、飲め。」
「え? あ、はい……。」


椅子に腰を下ろした途端、手にグラスを握らされる。
そして、断る隙もなくドボドボと注がれているのは、どうやらデスマスク様お気に入りの白ワインのようだ。
こうなると、やはり私も飲まなければいけないのかしら。
お酒はあまり強くないし、出来れば飲みたくはないのよね。
そんな事を思いながら、グラスに満たされるワインを眺めていた。


と、その時――。


「それは駄目だ、アンヌ。コレにしておけ。」
「え、シュラ様?」
「これなら大丈夫だろ。」


スッと横から手が伸びてきて、白ワインの注がれたグラスをシュラ様に奪われた。
代わりに別なグラスが手渡され、そこに真っ赤なブラッドオレンジジュースを注いでくれる。
多分、さっき私が少しだけ顔を顰めた事に、シュラ様は気が付いたのだろう。
だから、気を遣って、お酒を飲まなくても良いようにしてくれたんだわ。
何だろう、凄く嬉しい……。


「オイ、コラ、黒山羊。勝手に何してやがる。」
「お前こそ、どさくさに紛れて、何を飲ませようとしていた? アンヌは病み上がりだぞ。酒など勧めおって、このバカ蟹が。」
「チッ……。」


明らかに何かを狙っていた様子で、デスマスク様は隠しもせずに舌打ちをする。
そうだわ、さっきのキッチンでの遣り取りがあるから、私にお酒を飲ませて、色々と聞き出すつもりだったに違いない。
如何にも面白くなさ気にシュラ様に向かってフンと鼻を鳴らすと、「イイさ、まだ時間はたっぷりある。」などと余裕たっぷりに呟いたデスマスク様。
ニヤリといつものように笑ってから、グラスに残ったワインを一気に煽った。





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