吃驚した、吃驚した!
本気で心臓が止まるかと思った!
気配どころか足音すらしなかったから、全然、気が付かなかった!


「シュラ様、いつの間にいらしてたんですか?!」
「今さっきだ。」


アイオリア様と全く同じように、首から下げたタオルで濡れた黒髪をゴシゴシと拭いながら、ドカリと席に着くシュラ様。
椅子に座ると同時に、その鋭い瞳で隣のアイオリア様をジロリと眺めやる。


「ふん、俺の服か。」
「あ、あぁ、スマン。借りているぞ。」
「仕方ない、気にするな。まあまあ似合っている。と言っても、俺程ではないがな。」
「そ、そうか……。」


心なしか、アイオリア様の顔が引き攣っているように見えるのは気のせいじゃないと思う。
だって、シュラ様ったら、「似合っている。」と言いつつも、まるで斬り掛かるタイミングを伺っているかのような殺気の籠もった鋭い視線。
流石のアイオリア様もタジタジするのも頷けるというもの。


「……アイオリア。」
「ん?」
「パンツはどうした? まさかノーパンか?」


――ブフッ!!


表情一つ変えずに尋ねたシュラ様の問いに、丁度、コップを口に運んでいたアイオリア様は、盛大に水を噴いた。
顔はシュラ様の方を向いていたので、お料理に掛かる事はなかった。
シュラ様自身も、流石に黄金聖闘士と言うべきか、見事に避けましたし。
それにしても、シュラ様の天然パワー恐るべし、ですね……。


「ゲフッ、ゴホッ、ゴホ!」
「何故、そんなに焦る? まさか本当にノーパンなのか?」
「ま、まさか、そ、そんな筈はない、だろ! さ、サガじゃ、あるまいしっ! ゴホッ!」


激しく噎せながらも、必死で言い返すアイオリア様。
噎せているせいか、怒っているためか、顔が真っ赤だ。
いや、それよりも……。
サガ様ってノーパンなんですか、そうなんですか?


「あの、シュラ様のをお出ししておきました。アイオリア様が履いていた下着は、お洗濯中ですから。」
「新品か?」
「勿論です。お洗濯してあるとはいえ、流石に一度でも履いたものは出せませんでしょ。」
「そうか……。なら、アイオリア。」
「な、何だ?」


シュラ様に名前を呼ばれてビクッとするアイオリア様。
また何か爆弾クラスの質問でもされるのではないかと身構えている様子が、まるで本当に猫のようだ。


「あの派手なパンツ。まだ未使用のものがあるなら、俺にくれ。そのパンツと交換だ。」
「……は?」
「ないのか?」
「い、いや、あるにはあるが……。かなり派手だぞ? 有名メーカーのものだが、色が真紫で、星がいっぱい飛んでる物凄い奇抜デザインで……。」
「それで構わん。」
「そ、そうか……。」


かなり退いているっぽい様子のアイオリア様に対し、淡々とした調子で了承するシュラ様。
いや、淡々というよりも、心なしかウキウキしているようにも見える、相変わらずの無表情ではあるのだけれども。


それよりも、シュラ様。
派手なパンツに興味を持たれたんですね、驚きです。
今度、お買い物に出た時に、シュラ様に似合いそうな派手なボクサーパンツを買って上げようかと、ホンの少しだけ思った。





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