琥珀色のスープの中には、大きめにカットされた柔らかそうな野菜が浮んでいた。
スプーンが触れると直ぐ、ほろっと崩れてしまう程に、良く煮込まれた野菜。
そして、香辛料などは全く入っていない優しい香りがする。


「デスマスクが作っておいてくれたスープだ。」
「デスマスク様が?」


驚きながら、そのスープを口に運ぶ。
あぁ、確かにデスマスク様の作る料理の味だ。
この野菜スープは初めて口にするものだけど、彼の味の特徴が感じられる。
それは懐かしくて、そして、とても優しい味だった。


「料理は性格を表すと言うが、とてもあの極悪非道な男が作ったものには思えない味がする。」


シュラ様の言葉に、私はフッと軽い笑いを零した。
きっとシュラ様は、キッチンで味見をしたのだろう。
スープを一口、口に運んで、そして、顔を顰めるシュラ様の姿が目に浮かぶようだ。


「何だこれは? 本当にアイツが作ったのか? と、疑ってしまったぞ。あまりに優しい味なんでな。」


ずっと心配そうな色だけを浮かべていたシュラ様の瞳が、やっと軽い笑みに和らいだ。
そうだわ。
シュラ様は、こういう笑みが素敵なの。
私はいつも、スッと目を細めるこの笑みに心奪われてしまう。
だから、心配そうな顔は、もうしないで欲しい。
私などのために、どうぞその心を痛めたりしないで。


「デスマスクも心配していた。無理はするな、と。だから、今日は気兼ねなくゆっくり休め。」


少量ではあるがスープを飲み終えた私から食器を回収すると、シュラ様が立ち上がりながら、そう言った。
私は逆らわずにコクリと頷く。
もう心配は掛けられない。
少しでも早く元気になるために、今夜はシュラ様の言葉に甘えよう。
明日からは、また元の私に戻って、シュラ様にお仕えするためにも。


「あと、『元気なったらみっちり説教してやるから覚悟しとけ。』とも言っていたぞ、帰り際に。」


デスマスク様なら、本気でお小言を一時間くらいは言い続けそうだ。
そんな場面を想像しただけで、酷くうんざりした。


「デスマスクが説教したくなる気持ちは分からんでもないな。と言って、俺は説教出来る程には口達者ではない。ここはデスマスクに任せるか。」
「すみません……。」
「どうして……、始めから言わなかった? 日光が苦手だと。」
「すみま……、せん……。」


ベッド脇に立ったまま、シュラ様は私をジッと見下ろしている。
その視線は、私の心に、とても痛かった。
今はただ謝るしかない。
言う必要がある時になってからでも遅くないなどと、勝手に判断して黙っていた結果、こんなにも迷惑を掛けてしまったのだから。





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