燐のことが、好きだから。
たとえ、もう自分は死んでいても。燐が死んでいても。
それでも、茉樹は、早瀬茉樹は、桜庭燐のことを好きになった。
何も、余計なことは何も考えず、気がついたら好きになっていた。
「すごい、嬉しかった。告白されて」
何か、何か言わなきゃ。
このままでは、伝わらない。伝えきれない。自分の想いが。
涙をぐっとこらえる。泣きたいのは自分じゃない。泣いていいわけがない。
茉樹は、今できる精一杯の笑顔を作った。
「ありがとう」
そして、もう1度言う。
「ありがとう、トオル」
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