何だか、涙が出そうだった。
それでも、嬉しかった。
彼が自分を好きだと言ってくれたこと。
こんな時間まで、待っていてくれたこと。
茉樹が、彼を好きだったこと。
全てが、嬉しかった。
「好きって………言ってくれて、ありがとう」
茉樹は言う。
今自分にできるのは、これしかなかった。
「ごめんなさい」
茉樹は頭を下げる。
表情は見えなかった。
「好きな、人が………いるの」
茉樹ならきっと、自分も好きと言っていただろう。
でも自分は。茉樹は違う。
茉樹は………燐のことが、好きだった。
「全然、アイツのこと知らないけど………それでも………」
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