不屈の精神

一昨日のことなのにまだ動揺している。目を閉じると浮かび上がるクラウドの姿はいつもより艶っぽい。スコールに押さえつけられて無理矢理といった感じなのにうっとりとそれを甘受しているような。あ…ヤバい。あそこに血が集まってきた。真っ直ぐに歩くことができなくなって近くにあるベンチに座る。ぼんやりするとまたクラウドの痴態を思い出しそうになりフリオニールは首を振った。
「はよーっス」
今日も無駄に元気なティーダが力任せに背中を叩く。赤く痕がついたんじゃないかと思うほど痛い。
「ティーダ!もっと力を加減してくれ」
「悪い悪い。なぁ、クラウド先生のとこ行かない?」
「え…ええっ?」
今一番考えたらまずい人の名前が出てきてフリオニールは飛び上がらんばかりに驚いた。だ、ダメだ。今は直視することができない。
「あ…いや、俺はちょっと…」
あたふたと挙動不審になるフリオニールにティーダが首を傾げる。普段の彼からは考えられない狼狽えぶりだ。
「どうしたっスか?クラウド先生に会いたくないんスか?」
「いや…そういう訳じゃ…」
理由を言うのも恥ずかしいやら情けないやら。と、そういえば、と思い出す。一昨日大失恋したばかりではなかったか。
「そういうお前は大丈夫なのか?」
「何が?」
「その…クラウド先生の恋人…」
そこでまた一昨日のラブシーンを思い出して赤面してしまう。ごにょごにょと言い淀むが意外にもティーダはすっきりしていた。
「ああ、今はスコールに預けておくっス」
「は?」
「恋人は別れたら終わりっス。でも友達はずーっと友達でいられるんスよ」
「はあ…」
気持ちの切り替えの早さに唖然とする。こんなに頭の回転が早かっただろうか。そこまで考えてなんとなくバッツの入れ知恵なのだと感じた。昨日のあれを見てあの二人が別れる想像をする方が無理がある。それに…
「友達って…?」
「クラウド先生のことっスよ。クラウド先生は友達っていう言葉に弱いってバッツが言ってたっス」
伊達に年はくってないなと笑うティーダにそれでいいのかと突っ込みたかったが、本人がそれで満足しているようだから黙っておくことにする。さあさあ、とティーダが追い立てる。
「クラウド先生のところに行くっス」
「あ、ああ…」
上手く断る言葉も見つからず、フリオニールは引き摺られるように準備室に向かった。

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