嵐の前2

大切にしてきた。そしてこれからも。この想いはずっと変わらないだろう。
「クラウド」
手を伸ばすとクラウドは首を振って後退った。唇を噛み締めて悲痛な目でこちらを見ている。そして一言、ダメだと呟いた。
「っ、」
何を言われているのか分からなかった。この流れから返ってくる言葉は肯定のはずだ。そこでやっとスコールはクラウドの表情に気付いた。
「何故だ」
触れれば嬉しそうに目を細めていたのも今は嘘のようだ。手を握ればはにかんでそっと握り返してきたのは幻だったのか。
「何故だ!」
思わず肩に掴みかかり力の限り揺さぶる。だがクラウドは力なく首を振るだけだった。
確かにここにいる。この腕の中に抱いている。なのに存在が遠い。
「スコール」
離してくれと弱々しく押し返すクラウドの腕を捉え更にきつく抱き締める。離す気などない。腕に力を込めて掻き抱く。
「俺が嫌なのか」
「っ、違…っ」
「だったら!何で!」
クラウドが両手で顔を覆いふるふると首を振る。そして消え入りそうな声で呟いた。
「これ以上オレを掻き乱さないでくれ…」
頼むから。
それを聞いて最初から一人相撲だったのかと思い知る。流される形で付き合うことになったものの、クラウドはスコールを選ぶつもりはなかったのだ。
顔を押さえ付けてキスをしても抵抗はなかった。始めは荒々しく何度も角度を変えて唇を重ねた。服の裾を掴んできてまるで縋り付いているようだ。
「ん…んんっ」
うっとりとキスを甘受するクラウドの言葉は説得力に乏しい。スコールは考えた。クラウドは嘘をついている。それを見破るにはどうしたらいいか。
絡め取り吸い上げた舌を名残惜しそうに離すと、解放されたクラウドが肩で息をした。
「分かった」
びくり、とクラウドが震える。恐る恐る見上げる瞳は怯えを含んでいる。これではどちらから別れ話を切り出したのか分からない。
「あんたの気持ちを尊重しよう。だが最後にひとつだけ」
これは賭けだ。拒まれたらそれで終わり。二度とクラウドの前に顔を出せなくなる。
「最後に抱かせてくれ」
驚きに見開いた眼は何よりも澄んだ青い色をしていた。

[ 13/75 ]

[*prev] [next#]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -