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サクラクレパス ボールサインNXエコフィール GBRE105
2011/12/10 06:00



日本文化私観 講談社学術文庫

1936年出版

 戦前、滞日していたドイツ人建築家ブルーノ タウトBruno Taut1880-1938著、日本が誤ることなく近代化するよう望んだ本。図版40点。

 当時、一等国と喧伝しながらも工業的には発展途上国だった日本には模倣品や贋物が少なくありませんでした。
著者は「模倣によりて美は消失す」p3と宣言し、独逸工芸家連盟(ドイツ工作連盟DWB)の標語「信用のない輸出は国家を損ね、実質的な独創的な仕事は国家を利する。」p210を引用して模倣品を批難、日本の独創性を重視した結果、伝統を称揚しました。

 著者は日本工芸がわびさび≒簡素化傾向を持ち、バロックやロココを通過してきた欧州工芸に比べ工業化に適応しやすいと考えました。
「日本の仕事のうちには、原素的な原形式を失うまいとする傾向があって、実用価値と美しさとの完全な調和を持った、かかる原素的な形式を、日本は数限りなく作り上げてきた」p179

 ここで浮かぶ疑問は、独創性(≒知財)や個別性は商売上重要なのであって、実用上は坂口安吾が反論したように猿真似でなんら問題ない、ということです。
これは生産者と消費者の立場の違いのみならず、機能・実用を考えたとき避けられない問題です。
合目的な道具の形態は有限で、いくつかに逢着し、例えば筆記具なら棒状形態つまり「原素的な形式」に収斂する。
だから実用だけを追求すれば基礎的な形態に還元されて独自性が意味を失い、独自性のみを無闇に追求すれば実用を無視した俗悪珍奇なものになる。

 解決策は凡そその均衡点にあるのですが、デザイナーに対し「官吏とか支配人とかいった連中は、なんでも手っ取り早くすぐ眼に見えるような仕事を望んで止まないので(略)いわゆる剽窃をやる以外に全く道はない」p222。
そして先例である欧米製品を真似ると「世界中の文明国から、余りにもしつこい模倣者の国と見なされるということを自覚することは、外国人に対する劣等感覚を一層増大させる結果になるに相違ない。」p211

 そこで著者が仙台工芸指導所で実践した方法は、伝統工芸を起点に「あらゆる種類の、個々の品物の各様の基本型を系統的に精査し、さらにそれぞれの型をその技術と目的との上から解明し(略)大体の理解が得られた後に、皆は初歩の基礎的な型を図案にして」p220製作した。「タウトのもたらした根本思想─良質生産、見る工芸から使う工芸へ─は工芸指導所の一貫した造形理念になった」(高薮昭/日本の生活デザインp88/建築資料研究社1999)。
当時、同所にいた剣持勇はのちに「土着性と合理性の融合」(前掲書p130)を掲げ、それはタウトの考えと重なっていたと考えられます。

 「「素晴らしいデザイン」というとき、それは「マオ的(引用註、浅田真央)」なデザインであることが多い。デザインの最高峰、(略)デザインの先を行くデザイン。そういうものを目指すのが、「マオ的」なデザインだ。でも現実には、読者や見る人の立場に立った「ヨナ的(引用註、キム ヨナ)」なデザインの方が圧倒的に多い。(略)ちゃんと売れるとか、多くの人の役に立つとかいった「結果」が大切になる。マオとヨナをどうやって両立させるかというのは、デザイナーが抱える大きなテーマのように思う。(略)この2つは根本的に対決していて、人間はその間で葛藤するしかない(略)両立はしない(略)、両立できるはずだと信じるとしたら、そのことがすでにマオ的なのだった。」寄藤文平/寄藤文平は『ものぐさ精神分析』を読み浅田真央とキム・ヨナを思う/ケトル3号p108
タウトは実用性を軽んじたわけでも近代化を拒んだわけでもなく、文化と実用、伝統と近代の関係を「床の間と裏側」に喩え、双方を内包してきた日本家屋に第三の道を見ています。

 19世紀後半ドイツも贋物が多く、是正するため組織されたのがDWBでタウトもグロピウスもその会員でした。
晩年のグロピウスが認めた近代化の誤りを、タウトは予見していました。両人の日本観や文化観はよく似ています。

 伝統回帰を訴える彼の要求はしかし、産業発展にとって足枷に思えることでした。「日本は近代国であるという誇り、ヨーロッパやアメリカと同格であるという自負の念を持っている。この種の誇りを代表する一団の人々は、外国人が日本の伝統的な要素を礼讃すると、一般にこれを喜ばない。彼等はこうした讃辞の中に、自国の発展に対する、いかがわしい妨害を認めるのである。」p200

 そして和風の生活様式と機械化された産業社会は必ずしも整合しません。
坂口安吾は「昔日本に行われていたことが、昔行われていたために、日本本来のものだということは成立たない。外国に於て行われ、日本には行われていなかった習慣が実は日本人にふさわしいことも有り得るのだ。模倣ではなく、発見だ。(略)古代文化が全滅しても、生活自体が亡びない限り」「それが真実の生活である限り、猿真似にも独創と同一の優越がある」と同題著作で伝統回帰に反論し、さらに「無きに如かざる(何もしないのが最良)の精神」をもって全ての人工物=俗悪と定義し、どうせ手を加えるなら突き抜けるべしとタウトを批判する。
「俗悪を否定せんとして尚俗悪たらざるを得ぬ惨めさよりも、俗悪ならんとして俗悪である闊達自在さがむしろ取柄だ。」(前掲書)
ただこれは機能・合理主義ではないですね。
安吾はわびさびや因襲的な家の制度に反感を持っており、
また「文学に於ては欧州的な方法がもはや一つの行詰りを示していて、我々が新らたに出発するためには全然別の発足が必要であり(略)けれども僕は従来の最も日本的な枯淡の風俗やらさびとやらいうものには全く絶望しています。むしろ激しい反感を持っています。」(日本人に就て/1935)と述べ、大日本帝国の路地裏を好んで題材にしました。

 ここには伝統回帰と離脱のほかに、遠大に構築する建築家と刹那的に生きる無頼派小説家、そして模倣を制御した国と模倣も厭わず前進する国との対立があります。

 著者は日本では仕事に恵まれず、工芸指導所嘱託も三ヶ月で去ることとなりましたが、本書が出版された1936年にトルコ国立芸術大学建築科教授に招聘され、当地で建築家として活躍、多忙のなか二年後に客死しました。

 本書の「小アテンの文化」p28が何だかわからなかったんですが、篠田英雄訳では「眇たるアテネの文化」(忘れられた日本p134中公文庫)となっていました。篠田訳もオススメ。
 次回はタウトが来日半年余で書いた「ニッポン」。
 ゲルインク開発元、サクラのノック式ゲル。中国製。
ふつうのボールサインNXは透明軸で、黒軸は再生樹脂使用率が高いエコフィール。GPN適合、黒インクのみエコマークつき。

口金周りが見やすく、少し膨らんだゴムグリップには指を添えやすい。
 クリップが動くとペン先が引っこむオートリターンクリップ(クリップリリース機構)装備。ただノックの感触がギクシャクしており、またクリップを押さえるとノックできないのが難点。
耐候テストが不十分に思えるほどの不変性を示し、公文書にも使えます。
替芯R-GB(φ5.5mm×111.5, ペン先径2.3mm, JISゲルJ型)、
ボール径/筆記距離;
0.4mm/400m
0.5mm/500m
0.8mm/300m。
黒赤青3色、赤は朱色寄り。
パイロットを除く多くの日本製ノック式ゲルに転用可。
顔料ゲルインクで耐候性に優れ、モレスキンでも滲まず裏ぬけせず、ボールがセラミック製で書き味良好。
ただし筆記角度が浅いとざらつき気味になります。



 ボールサイン80に比べとてもマイナーで見かけない。今回0.5mmしか入手できませんでした。もうちょっと販路が拡がるといいですね。

ボールサインNX 水性ゲルインキボールペン 0.5mm くろ 袋入り


サクラ/水性ボールペン ボールサインNX05 黒/GBR105#49:Yahoo


サクラ/水性ボールペン ボールサインNX05 赤/GBR105#19:Yahoo!


サクラクレパス/水性ボールペン ボールサインNX04 ロイヤルブルー:Yahoo!


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