デモクラシーのアポロン(1972年)
デモクラシーのアポロン―建築家の文化的責任
前回「モダン・デザインの展開」の最後に紹介された建築家Walter Gropius 1883-1969の講演を集めた自著、白黒図版約75点。原著は1968年刊。
著者はドイツのバウハウス初代校長として有名で、同校閉鎖後ナチス政権を避けて出国、米国ハーヴァード大教授となりました。熱心なプレファブ(プレハブ)工法推進者でもあります。
20世紀中葉、西欧では量産品の質と大衆の生活水準が向上しましたが、近代運動(モダニズム)先導者の一人である著者は反省し始めます。
「思索する近代人のだれもが、このとほうもない科学の進歩の目的はいったいどこにあるのかと、疑惑をもって自問しています。」(p14)「冷たい科学的事実そのものが人びとの想像力を刺激した結果、人びとが各人の虫のいい個人的野心を犠牲にして公共の利益を優先させるなどということは、ごく稀にしか起こりません。(略)科学の進歩は物質的な豊かさと富をもたらしましたが、文明そのものを新しい形として表現するほどの成熟度を現代文明に与えることはまだできないでいます。」(p17)
物質的には豊かになったが精神的には貧しくなった、という問題は19世紀に始まっており、当時の芸術家らは機械化と大衆化を否定し、
モリスらは機械のみを否定して解決を試みましたが、後に続いた者(著者はその一人)は機械化を規格で統御しようとします。
「しかし、われわれがあまりに機械を崇拝したため、人間的価値の基準を見捨てていると非難されるようになり(略)豊かさのまっただなかにありながら目的を見失って混乱し、どうすることもできない気持のまま取り残されているのであります。」(p34)
モリスを超克したはずがその失敗を吐露しています。
規格化と量産化の弊害はヒトにも及び「近代の組織人間は、独立した思想よりも順応力を高く評価し(略)集団のなかでの順応主義──これは多数による専制に陥ります──も、個人の勝手気ままも、ともに自発性と想像力の発展にふさわしい環境をつくり出すことはできない」(p83)。
このようなヒトの画一化を避けつつ、規格化と多様性を両立するには文化的公分母(芸術的心性)が不可欠と主張しました。
著者は1954年に世界旅行し、近代社会の誤謬を正す解答を日本で見つけます。
畳や襖などの規格化された建築部品から成る日本の伝統建築に、プレファブ建築の完成形を見、統一されながら多様化している建築群とそれを可能にした文化にいたく感動したのでした。
しかし当の日本人は、このグロピウスの態度に失望、訳者解説にはそれがよく表れており、近代建築と美術を鋭く批判しています。
※2013年4月に文庫化された。
建築はどうあるべきか:デモクラシーのアポロン(ちくま学芸文庫)
2010年、ぺんてるとパイロットから新しいシャーペン芯が発売されました。
今回はぺんてるの、「ギガ強い!」を売り文句に同年6月に発売されたAinシュタイン。
日本のシャーペン芯に改良の余地がまだあったとは驚きです。
0.3mm(15本入り)から0.9mm(36本入り)までの五芯径。60mm長。12硬度から4硬度。0.5mmには赤青あり。エコマークつき、日本製?
同社Ain芯を改良、強化シリカを配合した「シュタイン」構造が特徴。
ぺんてる公式HPから引用すればSTEINは
Strongest Technology by Enhanced SiO2 Integrated Network (強化シリカの統合されたネットワークによる最強のテクノロジー)
の略語。
従来品より色が濃くなってるはずですが実感できず、蛍光灯の光を反射する点もあまり変わりません。
一方なめらかさは向上、
三菱ナノダイヤ、パイロットneoxグラファイト以上に感じます。
自慢の強度についてはどうでしょうか。ナノダイヤと同じく錘を載せてみました。
.3/HB芯を40mmの空隙に30mm間隔で二本渡して錘を載せます。
結果40g荷重に耐えられましたが二回に一回は折れました。
次に芯を約0.6mm繰り出して、筆記角度約60°で力を加えると、700g前後で折れました。
.3mm芯でこれなら十分な強度でしょう。
既に完成されたと思われるものでも改良されるのは、更新によって需要を掘り起こすためと思われ、その実現には技術の進歩を要し、背景には競争市場があります。
というわけで次回は
パイロットのneoxグラファイト。