17Q 6
白美とのやり取りの後、独りトイレにのこされた高尾は彼に対する憤りをどうすることもできないでいた。
(やべえ、腹の虫おさまんねぇ……こんな時は)
「ふんふんふんふ〜ん」
というわけで、軽快な鼻歌を歌いながら手を洗う。
そうすれば思い通り、少しは気分が収まった。
高尾は目の前の鏡に映った自分の表情を確認し、それが至って普通であることに少しほっとした。
(ビックリだよ実際、マジであんな奴だとはね……どうしよっかな)
緑間に言うべきか、チームに言うべきか。そして、どの程度伝えるべきか。
とはいえ、考えられにくいが、今のが彼の戯言であるという可能性も拭えないのが実状。
悩みどころだと、高尾は貌をしかめて蛇口を閉じた。
とその時、背後を水色の髪の選手が通るのが視界に入る。
「あ」
「……?」
反応を示した彼に思わず立ち止まった黒子に、高尾はにやりと笑いかけた。
「やぁ」
「お?」
黒子はいつもの真顔で高尾をじっと凝視し、後ろの小金井は目をぱちぱちさせて、鏡越しにこちらを見る高尾に視線を送る。
「どうも」
黒子が戸惑いながらも挨拶をすれば、高尾はそれに返事をすることなく、黒子たちの横を通り過ぎた。
「お? 先輩も? つれションッスか〜? 次の試合、よろしくでっす」
高尾は彼等の視線を感じながら、そんな言葉と共にトイレを出る。
――奴がその気なら、いや、その気でなくとも元より同じことだが、無論こちらも容赦はしない。
(心外だぜ、もっと警戒してくれないと。例えば俺だって、割とやれる方だっての)
もうすぐわからせてやると、高尾は、ギラリとその眼を光らせた。
一方、トイレでは小金井が、高尾が後ろを通る黒子に気が付いたことに驚きを隠せないでいた。
どういうことだ、と。
(Everything is within my field of view)
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