01Q 6
 少し前まで夜の帳に支配されていた空間は、薄い灰色のカーテンの向こうから溢れる朝日の輝きに、淡く白みはじめていた。
 間もなく、カーテンとカーテンの僅かな隙間から入り込んだ光が、くすぶりの中に細い一本の路をつくる。

「ん……」

 丁度、その道と瞼が重なったようだ。
 その部屋の主である橙野 白美は、瞼を擽る眩しさに薄っすらと目を開けた。

「ん、何時――?」

 一夜を跨いで掠れた低い声で呟くと、長い睫に縁どられた目をゴシゴシとこすり、寝転がったまま枕元のデジタル時計を持ち上げる。

 薄緑に表示される、「6:15」の文字。

(んだ、15分早ぇし……損した気分)

 チッと小さく舌打ちをすると、再び時計を持ち上げ、頭越しに枕元に置いた。
 再び脱力し、枕に後頭部を預けて天井をぼうっと見上げる。

 が、既に目が冴えてしまっていた。二度寝する気にはなれない。

 
 視界の端にかけられている真新しい制服、すぐ傍らのバスケットボール。
 僅かに開かれた口は、弧の形に変わる。

 白美はふうっと息を大きく吐き出すと、腹筋に力を入れてガバッと上体を起こした。

「ま、いっか」

 小さく呟いて部屋を見渡せば、鏡の向こう――にやっと笑ってこちらを向く白髪の男と目があった。

(嗚呼、あれは、何かたくらんでる顔だ)


(You're me)

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