ハンジ実験参加第三弾【入替り】





俺はフェリクス・リーベルト。
自己紹介ももういいかな?と思うけど一応!
リヴァイとエレンとエルヴィンがうふふふな関係になれるように日夜頑張っております!

ところで俺、また今ハンジの実験に付き合ってます。
3回目のこの実験、実は俺からハンジにお願いしてお薬を作ってもらいました。


「うーーーん……これでいいと思うんだけど……マウスで実験してもわけわかんないからなあ」
「それでいい」
「そお?」
「ん、」


トンデモなオクスリだけど、きっと失敗したとしても死にはしないと思うんだ!
さて、ハンジにお願いしてわざわざ作ってもらったオクスリとは!?
なんと、入れ替わりのオクスリです!中身入れ替えの夢のオクスリです!
それを飲んで俺とエレンが入替って、エレンとしてリヴァイやエルヴィンと……!ん?いっぺんに俺の夢をかなえるためには俺がリヴァイになったほうがいいのか?そうかな!?
思いついた内容に俺は心の中でもだもだしてハンジに向き直る。

「ありがとう」
「こちらこそいつもありがとね!大好きだよフェリクス!」
「俺も」

お互い見つめあってにこー!と笑い、「じゃ、リヴァイ連れてくる」と言い残してその場を去った。
少し間を置いてからハンジの叫ぶ声が聞こえ、なーい!何も聞かなかったよ!急いでリヴァイ連れてこなきゃ!
何でもあのお薬は、同じ場所にいて手を繋いだまま飲まないと効果がないらしいのだ。


「リヴァイ、」
「……?」

廊下を歩いていたリヴァイを見つけて後ろから声を掛けると、リヴァイは何も言わずに振り向いて視線だけで続きを促した。声も出さないなんて疲れてるのかな?

「ちょっと、付き合ってほしい」
「なんだ」
「……一緒に、来てほしい」
「どこにだ」

うおお、思ったより結構突っ込んでくる!
けどそうだよな、気になるよな。そこで、でも入替るために〜なんて言っちゃったら絶対来てくれないのは分かりきっているので、少々俯いて言い訳を考えるんだけど全然いい言い訳が出てこない!


「……言、わなきゃダメ……?」
「、……」

ちらり、と見上げるとリヴァイはなんだこいつという表情を上らせたものの、はああと盛大にため息をついて腕を組んだ。


「仕方ねぇ、行ってやる」
「ありがとう」

優しい!リヴァイ優しい!
思わずにこにこしてしまいながらリヴァイの手を取って歩き出す。ここで手を繋いでおいた方が後々楽そうだ、という打算も少しありました。少し?全部か!
リヴァイは繋いだ手を咎めるでなく、そのままついてきてくれました!嬉しい!


「ハンジ、」
「う、うん……じゃあ、はい」
「ん、」

ハンジがやや引きつりながらも薬を手渡してくれたので一気に飲み干した。


「おい、なんなんだ」
「わっくわくのマジックショーだよ!」
「ああ?……、?」


にこ、と笑ってからリヴァイと空いていたもう片方の手も取って繋ぐ。二人で輪っかみたいになりながら、成功しますようにー!と心の中で念じた。
やがて何か違和感が渦巻いてぐわんぐわん眩暈みたいなのを感じたけどすぐに収まって、目を開けたら。


「フェリクス?」
「ん、」
「な、これは……」
「やったー!!!成功したよー!!どうどうどんな感じ!?フェリクス返事して!」
「ん、」
「ブッフォ!リヴァイの顔だとフェリクスがすごい凶悪に見えるね!うける!こっちはこっちで、フェリクスの顔なのに中身がリヴァイだとこうなるのかー!凶悪!悪そう!」

自分を見ようとして失敗して、見上げたら自分の顔があって、不思議な感じになる。
まあ自分の顔と言っても、この世界での自分の顔だからそこまで変な感じはしなかったんだけど、外から見たら自分ってこんな感じなんだなって思った!なんか薄い!色が!
自分と?リヴァイと?手を離して、リヴァイに「ありがとう、」と言い残してから急いでエルヴィンの元に向かう!
リヴァイにつかまるわけにはいかない!その点で言えば、人類最強の体でスピードというのは最強だね!捕まる気がしないぜー!
早く我らがエルヴィンを騙して(!)エルリを楽しまねば!きゃっほーー!!

「な、ちょっと待てフェリクス!俺の体でどこへ行くつもりだ!!」

聞こえな−い!






***




「エルヴィン」
「……リヴァイか、どうした?」

信じてるエルヴィンが面白い。書面から顔も上げずに声だけでリヴァイだと言い当てたエルヴィンさすがです。それだけで相当もだもだする!しかし、リヴァイ相手だと対応もやっぱり違うものなんだなー。
俺が行くと、必ずふんわり微笑してようこそ!みたいな感じなのに、リヴァイ相手だとなんというか、熟年夫婦みたいな、……。
熟 年 夫 婦 !
それイイ!!すっごくいい!心の中でもだもだしながらリヴァイっぽい感じでツカツカエルヴィンの真横まで歩を進めて立ち止まる。さすがに近づいたらエルヴィンはこっちを見たけど、その顔にはどうしたのかという疑念ではなく訝しむような気配が漂ってる。あれ?熟年夫婦ってこんな感じなの?
ちょっと心が折れそうなエルヴィンの視線だけど、負けちゃだめだ負けちゃだめだ負けちゃだめだ!頑張れ俺!モエのために!!


「エルヴィン……」


する、とエルヴィンの頬に右手を滑らせる、悩まし気(のような感じの)な表情を浮かべ、られていると信じながらデスクに軽く座り、左手はデスクで自分の体を支える。
するすると顔も近づける。
何をしようとしているかなんて一目瞭然だろう!と思ったけどまだ付き合ってない2人にはちょっと展開早かっただろうかと思わなくもない。起爆剤になればいいな……。
ちょ、ちょと、ちゅ、してみようかな。


「何をしている」
「……、」
「ふざけているのか?」
「あ……」


声だけでわかるくらい、エルヴィンは怒っていた。
あ、れ?おかしいな。ここは、まあせめて「何やってんだよこいつぅ☆」くらいの感じで終わるかと。思って。いたのに。
笑い話になって終わる、予定だったのに。どうしたことだ。
体を離してエルヴィンを覗き込むと、めちゃくちゃ睨んでいた。巨人を睨んでる時みたいな、そんな顔だった。
そ、そんなに怒る事、だったか?
エルヴィンとリヴァイって仲良い設定じゃなかったっけ?これくらい、中年の戯れ的な感じじゃないのか。
何も言えずにエルヴィンと目を合わせたまま何も言えないでいると、頬に滑らせた手を取られてぽいっと払われた。

「驚いたな、君が誰でもいいやつだとは」
「いや、それ」
「てっきり俺は、君とフェリクスを取り合っていると思っていたが、俺の勘違いだったようだ」

「……は?」


いやそれは違うぞエルヴィンだけだ!
って、言おうと思ったのに。
遮られた上に遮った話の内容が衝撃すぎてついていけないんだがどうしたらいい。
どうしたらいい。
どこから何を聞いたらいい。
えっと?


「取り合ってる……?」

「……、なんだ、本当に俺の勘違いだったか? 君が好きなのはフェリクスだろう。私も彼が好きだ。お互いそれを分かった上で牽制し合っていたと思ったがな」

「な、に……?」


え?
エルヴィンは何、言ってんだ?
え?
エルヴィンが俺の事好きだって?もしかして俺、告白された?
そして聞き間違いじゃなければリヴァイも俺の事を好きだと言ったがそれは、本当に?


「れ、ん……あいの、意味で……?」
「何を今更」


俺、エルヴィンとリヴァイがいい感じになればいいと、思ってたよ?
リヴァイとエレンでもいいなって。
その、3人のうち、2人が、俺の事好き、だって?しかも、恋愛の、意味で?


「?……なぜ君が赤く、」

「エルヴィン!!」

「は?」
「っ……!」

「な、おい待てフェリクス!」
「何……!?」


リヴァイが丁度部屋に入ってきたのをいいことに、俺は部屋を飛び出した。
逃げたりしてずるかったかな、けど、なんというか、ずっとあそこに、いちゃいけないような気がして。
あと、一人になりたくて。
エルヴィンは俺の事が、好きだって。
リヴァイも、俺の事が、好きだって。
恋愛の意味だって、そんな、嘘言いそうな気配じゃなくって。俺、もしかしてすっごく酷い事、した?
あれ、えっと。
俺、どうしたらいいんだ!?


「あ、兵長!庭の掃除終わりました!」
「……、」


エレンが充足感からかにこーと笑いながら駆け寄ってくる。
いつもならクソカワとか言うんだけど。言うんだけど。今はちょっと無理!
えっと、リヴァイって普段どんなだっけ!?

「……悪い、エレン!『待て』だ!」
「は、え!?ま、待てって……!」

あ、ちょっと違ったか!同人の知識か!?まあいいか!
ちょっとこの姿でウロウロするの危険すぎる!ハンジ!ハンジ助けてー!!!




***



「もう戻りたいの?楽しくなかった?」
「……、」
「すぐ飛びだして行ったけど、どこ行ってたの?」
「……団長の部屋」
「……、…………あのさあ」
「ん、」
「何があったかは大体想像できブフッ、できるから聞か、聞かないけど、フッ、……とりあえず、入れ替わった話を聞かせてよ!折角だし!」
「ん……、」

ハンジの部屋で向かい合ってなんか病院みたいな丸い木の椅子に座って。
ズーンと沈んでいたらハンジはものすごく激しい笑いを堪えながらも研究者だった。
それもそうだなと思って、自分の、リヴァイの体を見る。

「スピードはさすがだった。俺じゃあんなに早く走れない。視力は、よく分からなかった。多分そんなに違いがないんだと思う。聴力は、少し聞こえないかも知れない。あと、体が重いのに、良く動く。多分筋肉の違い?」
「ふんふん、なるほどねー!自分の体の分しか使えないんじゃなくて相手の分をしっかり全部使えるのか!疲労感とかは?それだけ動いて、どっか痛いとか、違和感があるとか」
「いや、特には。本当に体だけ変わった感じだ」
「うっわー!いいね!いいねー!!これが実用できたら、危険なエレンをリヴァイが入替って☆とかできそうじゃないか!それだけじゃなくて、誰かに潜入させるけどそれが実はリヴァイだった!とかもいけそうだね!」
「ん……」

研究者として俄然やる気を出して立ち上がり顔を上気させたハンジを見上げながら、そこまでなっても沈んだままの気持ちに引きずられて目を伏せた。
あああだめだなんか浮き上がれないよー。
ごめん、聞いちゃいけない事聞いちゃった!うわーん!!
あれ!?
じゃ、じゃあ……俺の夢のエルリとかリヴァエレとか……見れないってことじゃないか!
俺を諦めてもらうしかそれを見る事はできないよ!いや、諦めてもらったところでリヴァイがエレンを好きになってくれるかどうか……それとも同時に諦めてもらったら二人がくっつく、なんてことになったりしないだろか。
あのー、ライバルが最大の理解者!的な?
あれ?俺、すっごく最低な事言ってる?言ってるよね。はああ。俺の馬鹿。
どうしたらいいのか分から無すぎるよ。


「……ハンジ」
「ていう事だから、……ん!?何フェリクス!」


ずっと色々話してたハンジを遮って声を掛ける。

「戻るにはどうしたらいい?」
「さっきと同じように手を繋いで、さっきと同じ薬を飲めばいいよ!原理は一緒ね!」
「ん、……」

ハンジから小瓶に入った薬を受け取って、それを手のひらで転がしながら自分の色々最低なとこを考えてた。
俺、色々、ダメすぎる。。
知らなかったんだもん。。
でも知らないというのは言い訳にはならないってことも、俺は確かに知っていて。
知らないというのは罪だ。
はああ。
2人は、まだ団長室にいるのかな。
もう目の前なんだけど。
ノック……しづらい……、けど、頑張れ俺!
コン、コン、コン。


「……どうぞ」
「……、」


エルヴィンを見て、すぐに視線を逸らしちゃった!つい!
そして自分の姿でリヴァイみたいにソファに座って紅茶を飲むリヴァイを見つけて、すぐに駆け寄った。
紅茶のカップを奪ってソーサーにガチャンと置いて、手を繋いで小瓶の中身を一気に飲む。
ぐらり、と来て、眩暈に耐えて、目を開けたら目の前にはリヴァイがいて。
俺は急いで手を離してエルヴィンに歩み寄る。駆け寄った、の方が近いかもしれない。


「エルヴィン、」
「……」
「さっきは、悪かった」
「……」
「お遊びが、過ぎた。俺が聞いちゃ、いけない事聞いて、本当、ごめん」


何て言っていいか分からずとぎれとぎれになってしまいながらも、やっぱりエルヴィンの目を見れないまま何とか謝りきる。
しばらく沈黙が流れて、俺はもう泣きそうになりながら目をぎゅっと閉じた。
嫌われたって仕方ない事を、したんだから。


「……順序が、逆になったな」
「ん……?」


エルヴィンが椅子から立ち上がって俺と向き合って立ったかと思ったら、俺の、握りしめて白くなった手を優しく取り上げて両手で包み込んだ。
あ、れ?怒ってないのか?


「フェリクス、君が好きだ。リヴァイにも、誰にも渡したくない」

「え……」


間近で優しいのに真摯な目でじっと見つめられるとどうしていいのか分からなくて、うろうろと目を彷徨わせる。
ど、どうしたら。
告白なんて、されたことないんですけど!
告白したことも無いけど!
な、何?!どうしたらいいの!?


「聞き捨てならねぇな」

「……リヴァイ」

「ん、……っ」


手を取られていない方からリヴァイが近づいてきて、今度はなんだ!?と頭が真っ白になっている間に腰を抱き寄せられてた。エルヴィンと手を繋いだままなので、虹的に言えば両手に花なんだけど、うわあもう、うわああ!


「フェリクス、俺はお前が好きだ。お前も、俺の方が好きだろ?」

「っ、……、」


好 き で す!
ああでもまって、俺エルヴィンも好きなんだって!そしてエレンも好きなんだって!どうしたらいいの!?
これ、どうしたらいいの!?
顔あっつい!俯くしかできないよ!

どうしてこんなことになってるんだ!
俺は、俺はいちゃいちゃするエルヴィンとリヴァイとエレンが見たかっただけなのに!
こ、これが人の心を弄ぼうとした報いなのか!
弄ぶって言っちゃった!弄ぶつもりはなかったよ!?なかったけど!
何も言えずにいると、横からチッという舌打ちが聞こえてきて、いきなり後頭部を掴まれて引き寄せられたかと思いきや。


「っ、」


あ。
そっか。
そういえば。
俺、前リヴァイからキス、されてた。ってことを、今ようやく思い出していた。
その時は、心配させんなとか心臓がもたないとか。色々言われていた。そうだった。ということは、最初からリヴァイは俺の事。口内で暴れまわるリヴァイの下に翻弄されて、体が震えてきて、力が抜けて行って。

「んっ、……はぁっ、は、……んん!?」
「チッ」

くったりしてリヴァイに体重かけてると、今度は顎を取られてぐりん!と反対の方へ向かされた、と思ったら今度はエルヴィンに口を塞がれた。リヴァイよりも優しいのに激しくてどうにかなってしまいそうだった。


「ん……」


俺は両サイドからリヴァイとエルヴィンに支えられないと立っていられない。
それくらい力が抜けきった。


「これからは、抑えなくていいんだな」
「ああ、そうだな」
「ん……?」

「いいか、フェリクス。お前が、どっちのモンになるかは好きに選べばいいが、どっちかを選ぶまではコレが続くと思え」
「え……」

「早く決めてくれると嬉しいがね」
「な……」



獰猛な、二匹の狼が見える。
黒いのと金色の。


頭真っ白です。
とりあえず。


俺の受難、始まる。






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2015/09/15 gauge.


SK

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