眩い日々の罪




「離せ!てめぇら誰に向かってそんな口聞いてんだ!」

処刑台に通じる階段に足を書けたところで左右にいた海兵に羽交い絞めにされ阻まれた。もう、すぐそこにエースがいる。

「だ、だめです!いくらベイン少将でも!処刑台には通せません!」
「うるせぇ、黙れ!俺にッ、俺に触るなぁ!!」

俺の周囲に薄い電気の幕を発生させて感電させて弾き飛ばした。焦ってた。タイムリミットはもうすぐそこまで着ていた。一足飛びに階段を駆け上がる。

「何事だ!」
「ジュール!!」

そこには、ガープじいとセンゴクさん、それと、エースがいた。拘束されて膝を付かされている今のあいつの姿を目に留めたとたん、ぎゅうと心臓が痛んだ。エースのそんな姿なんて一生見たくなかった。どうやらまだ戦争は始まってなかったらしい。両者が睨みあっていて一触即発、けど誰も死者負傷者はなさそうだった。その状況を確認してほっとしていると、俺に向かってセンゴクさんが手を伸ばして肩を掴む。

「ジュール貴様!あれほど処刑台に近づくなと…!」
「罰なら受ける!どいてくれ、センゴクさん!……エース!!」

センゴクさんのそれほど力の込められていなかった手を無理やり振りほどいて、俺も台に膝を付きエースの両肩を正面から掴んだ。久しぶりに間近で見るエースは、ボロボロだった。やつれてもいる。こいつの肩、こんなに細かったかな。

「ジュール…!!」

エースは驚きと悲しみを滲ませたような顔で俺の名前を読んだ。声も少し掠れていて、それら全部の変化に再び心臓がぎゅううと音を立てた。

「ッ、…エース、頼む!言ってくれ!海兵になるって言え!!」
「何…?!」
「コング総帥が約束してくれたんだ!お前が海兵になるなら処刑しないって!!お願いだ!言ってくれ!海兵に…、海兵になってくれ!!」
「なんじゃと!?そんな事、本当に総帥が?!コングがそう言ったのか!」
「約束してくれたんだ!何度も断られたけど、ようやく今日、約束するって言った!…エース!」

エースに向きなおると、エースは痛苦に顔を歪めて首を横に振る。揺れている。誇りを捨てた生か、誇りを守っての死か。

「ジュール…、無理だ、ジュール!そんな…そんなこと…!」
「頼むッ…!お願いだから…!言ってくれよ…!海兵になるって言え!」
「ジュール…!!」

俺は縋り付くようにエースの両肩に手を置いたまま、肩に頭を寄せる。抱きついているようにも見えただろうがどうでもよかった。


「おれは…!おれはっ、…おれは白ひげの息子だ!!オヤジを裏切るくらいならここで死ぬ!」
「エース!!そんなプライド捨てろよ!俺はお前を、こんなとこで死なせたくねぇんだよ!海兵になればいいだけだ!白ひげとだってまたあえる!お前がここで死んだら二度と会えなくなるんだぞ!…俺とも…!」

エースの叫びに心臓のあたりがぎゅうと締め付けられて顔を顰め、俺も負けじと声を張り上げた。
途中で悲しくなって声が落ちるその様子に、エースがはっとしたような表情で口を噤んだ。

「お前は俺のッ、初めてのダチなんだ!死なせたくねぇんだ!これからだってずっとずっと、……ずっとッ…一緒に…!」

辛い。
どうしてこんないいやつが。そりゃ確かに海賊だけど。
苦しくて、辛くて。ずっと一緒にいられるような気がしていた。そんな事あるわけないのに。

「ジュール…」
「生きてこそだろ…、これから先、もっと、楽しい事だってあるし、好きなやつだって…!」
「…海兵、なんて…!」

俺の言葉が、もしかしたらエースの前で初めて泣いたことが、エースの気持ちを揺さぶっているようだった。
揺さぶっているようではあったがそれだけで、エースの気持ちを変えるまでには至っていない事が悲しかった。

「何でだよ…!このままじゃお前死ぬんだぞ!誰にも会えなくなるんだ!誰とも笑えなくなるんだ!誰にも触れられなくなる!お前はそれでいいのかよ!死んで幸せなのか!満足なのかよ!」
「小僧…」
「満足なわけねぇだろッ!幸せなわけねぇだろうが!でもこれが俺の選んできた道だ!」

エースの叫びを聞いて。無性に腹が立って。だって。うん、て。言えばいいだけなのに。それなら助かるんだぞ。
エースの肩を掴んでいた手を離してだらりと下げる。不可解そうに眉根を寄せて俺を見る、エース。
何も、正攻法じゃなくてもよかった。エースも、能力者、だったな。クツリと人の悪い笑みを浮かべる。

「……『エース、お前は海兵になるんだ。海兵になると言え』」
「なっ、…ぐっ、…!!」

カミガミの実の能力だ。能力者は俺の言葉に逆らえない。本人の意思がどうあれ、命令された能力者は俺の指示通りに行動するんだ。最初からこうすればよかったんだ。
俺は答えを待った。唇をかみ締めて言葉を出さないようにしているが、それも時間の問題だ。なんて。少しだけ可笑しかった。これじゃ俺、悪者みたいだ。

「おまえ、は……俺たち海賊の敵だ!おれは白ひげ海賊団2番隊隊長なんだ!誰が何と言おうとおれァオヤジを!裏切らねぇ!!」

俺の能力さえ打ち破った。口から血反吐吐きながら命令に逆らったエースを、見て。

「交渉決裂だな。火拳のエースは処刑だ」

センゴクさんが俺に分からせるようにそう発言したが、それすらまともに耳に入らないほど、無性に。

「……んで、」
「……」
「…、何で素直にわかったって言えねぇんだよ分からず屋が!バカじゃねぇの!こんなに頼んでるのに!お前を失いたくないってすげー恥ずかしいこと言って涙まで流してるのに!」
「なっ、てめぇが勝手に恥を晒してんだろ!おれのせいにすんな!オヤジの船を下りるくらいならここで終わりでいいって何度言やわかるんだ!」
「ずっと分かるかぁ!しかも勝手に?!勝手にっつった!?てんめぇぇえ!お前を助けたいから命まで懸けたっつーのに何だその言い草!すげー腹立つ!勝手にくたばりやがれチョウチン野郎が!」
「なんだとこの、……命?」
「……あ。」
「命を懸けた?どういう意味だ」

エースをじっと見て。やけに真剣な目してるな、なんて他人事みたいに思って。
ふとガープじいに視線を向けると似たような顔をしてて。目を伏せ微笑する。
これを言ったら、エースだけじゃなくてガープじいはなんていうかな。

「…お前がもう少し、簡単だったらよかったのにな」
「ミステリアスな方がモテるんだろ?」
「記憶力はあるみたいだな」
「おかげさまでな」

少しだけ得意げにそう言うエースがいつもどおりで、この場所でなきゃ俺もきっと声を立てて笑えた。
今は二人ではしゃいでたあの頃と何もかもが違う。

「……じゃ、これは覚えてるか」
「?」
「お前ら兄弟は絶対に死なせねぇ。……俺の命に代えても。」
「ジュール…?!」

嫌な予感でもしたのか、驚いた顔をするエースがやっとおかしくて噴出した。
笑った顔はすぐに引っ込めて、エースの肩にそっと触れた。

「『ヴィエントファルコ』!!…帰れエース!ここはお前の居場所じゃねぇだろうが!」

風の鷹をエースの足元に発現させ、そのまま飛び去らせた。
エースを処刑台に繋いでいた鎖は鷹の風が断ち切り、ゴドリと重い音を立てて俺の目の前に散らばった。

「ジュール貴様ァ!裏切ったか!!」
「何をするんじゃ、ジュール!」
「そいつを連れて逃げろ、白ひげェ!」
「ジュール!!」

隼の背中で俺を必死な顔で見上げてくるエースに笑ってみせる。この処刑台からそれほど離れたわけじゃなかったけど、そこそこ離れた。3大将よりも白ひげよりの位置まで下がって、あそこまで飛べばもう、あとは白ひげがなんとかしてくれるはずだと思えた。本当は、俺の命がけの勧誘にイエスって答えてくれるのが簡単で楽だったけど。

「エース!お前のこと殺そうとしたけど、それでもここが俺の居場所でッ、…死に場所だ!……長生きしろよ、”クソガキ”!」
「ジュール、貴様ァ!」

後ろからサカズキパパが近づいてきているのは分かってた。でも俺は振り返りもせずにずっとエースと合ってた視線を外さずに笑みを浮かべ続けた。コンマ一秒ごとに生に近づいていくエースをずっと見ていたかった。
強い力で肩を捕まれ無理やり体を反転させられ、それと認識しきるまえに首に冷たいものを填められた。能力者を鎮める海楼石の首輪だ。そのせいで能力を維持できずに、空を飛んでいたエースが落下していくが一番隊の隊長が助けたのを横目に見てまた笑う。良かった、これで、もう。気が抜けたと同時に海楼石のせいで力も抜け切ってその場に倒れこむ。

「恩を忘れたかジュール……、そんな腑抜けた正義じゃ誰も守れやせん!」
「…は、…はぁ、…ぁ、く…!」

上から冷たい眼差しで見下ろすサカズキパパと目が合う。ここまで怒りをあらわにしてるサカズキパパは初めてで、謝りたかったけど息さえうまくできなかった。カミガミの実はその特異性から、他の能力者よりも海に極端に嫌われ呼吸さえままならなくなる。
俺は命を懸けた。こうなることはわかっていた。エースはもう助かる。1番隊の隊長が抱えてるのが少しだけ見えた。

「何も首にはめなくても良かったじゃろうが!」
「どこにはめようと同じじゃァ……火拳との交渉が決裂したその時ァ、自分の命を捨てるっちゅう条件出したんはこいつじゃけぇのお。終わりじゃジュール!おのれの正義は、海軍にゃァいらん!!」
「命かけるなんぞ言葉のアヤじゃろ!ジュールを殺すなんぞ許さんぞ!」
「ジュールーー!!」

ガープじいがサカズキパパに掴みかかって抗議してるのを見て少し笑った。よく殴られたけど、一番俺を許してくれた人だった。こんな状況でもやっぱりガープじいは優しいんだ。それが嬉しかった。でもサカズキパパはそれを聞く人じゃないのは海兵なら誰でも知ってる事で、だからこそ失敗したときの執行人にサカズキパパを選ぶ事で、こんな馬鹿みたいな取引が成立したんだ。ごめんガープじい。ごめんセンゴクさん。ごめん、サカズキパパ。今はこんなだけど、あの時びっくりするぐらいの勢いで俺を止めてたのはサカズキパパだった。
ルール破ってエース逃がしちゃった。ごめん、ありがとう、って、意味を込めて力の入らない体で精一杯笑顔を作る。サカズキパパは表情を一切消してガープじいを突き飛ばし、静かに腕を振り上げたそれを見て俺は目を閉じた。

「待つんじゃサカ、」
「……くっ、貴様ァ…」
「……?」

多分一瞬だろうと思っていたのに、サカズキパパの呻き声が聞こえたきり何の痛みも来なくて、ゆっくり目を開けた。

「フッフッフ……そりゃやりすぎだろうが、赤犬ゥ…!ジュールは能力者達の抑止力だってはしゃいでたのはあんたらじゃなかったか?いくらなんでも、仲間殺しは大罪だぜぇ?フフッフフフ…!」

ピンクのもふもふが見えた。俺を背にして、サカズキパパの動きを止めていたのはドフラミンゴだった。

「ドフ…?…な、…で…?」
「おーおー、かわいそうにな、ジュール。でっけぇパパって慕ってたやつに殺されかけるなんてよ」

ドフィの言葉に首を横に振る。俺が選んだ道だ。選んできた道だ。さっきのエースじゃないけど、ここで死のうと後悔はない。いつ死ぬか分からない世界で生きてて、大切な人間を守った代償でくたばるなんて最高じゃねぇか。否定する言葉を言いたいのに、首輪に阻まれて何もいえなかった。それどころか呼吸がうまくできなくて頭が白くなってきて、比例するように目には生理的な涙が溜まって視界がぼやけた。

「は、ぁ、っ、っ、ぅ、…!」

細い糸みたいな酸素しか喉を通らなくなってきた。悲しくもないのに馬鹿みてぇに目から涙が流れ続けるから薄ぼんやりとしか周囲が見えない。戦争の耳を劈く音さえ遠く。目の前に誰か来たようだったが何も見えなかった。状況はどうなっただろう。エースは生きてるだろうか。エースの弟は?白ひげは?最後に安否の確認くらいはしたかった。体全部が痺れているようでびくともしない。
ふと脳裏をよぎる赤い、あの。
は、と意識が戻った気がしたがそれは気のせいだった。あいつとの誓いも守れなかった。俺はこのまま死ぬんだ、もう二度と会えないな。あいつの目、もう一回見たかったな。あいつの声、もう一回聞きたかったな。
そう思ったら、喉が泣いてる時みたいに痛くなった。



***



「え…、……え!?、ぁ、〜〜ッッ!!」
「ジュール!?目覚めたのか!!」

何がどうなっているのか分からなかった。何でか俺は寝ていて、ようやく目が覚めたのかと理解したらなんでか隣にはエースがいて涙ぐんでて。状況が全く理解できなかったが、今にも泣きそうなエースを放っておくこともできず、頭を垂れているエースの頭をとりあえず撫でてみた。

「何が、なんだか……分かんねえんだけど…」

そうつぶやくように言うと、エースは突然バッと顔を上げて、悲しそうに繭尻を下げた。

「あっ、頭打ったのか!?いろいろぶつけちまったし…!!」
「ぶつけ、え?」

俺に一体なにしてくれてんだとは思ったが状況が全く理解できないままなのでとりあえずちゃんと説明してくれそうな人物のところ、に……。そもそもだ。そもそもここは、なんだか船の上のような気がするのだが。

「ここ、どこだ」
「な、それも分かんねえのか!?頭痛くねえか、やっぱり打ったんだ、それで、」
「あーーーー、もういい、もう分かった」

俺の肩を掴んだり頭撫でたり頬触ったりまた肩掴んだり俺の手を取ってみたりまた頭触ったりなんなんだこいつは。
寂しがりの犬のようなこいつを振り払って床に足を着いた。

「~~ッッ!」

つま先から頭のてっぺんまで突き抜けた激痛に自分の体を抱きしめながら膝を着いた。膝をついたその衝撃でさえ激痛すぎて声も出ない。

「まだ動いちゃだめだ!」

動けなくなった俺の肩を掴んでベッドに戻そうとするエースを手で制して腹に力を込めて立ち上がり、止める声を無視して扉を開けた。
やや眩しかったが目を細めて細い廊下を進む。やっぱり船だったか、とは思ったが。
見慣れた顔を見つけるたびに「嘘だろ」「まさか」という思いが膨れ上がってきた。それに加えて隣の、俺を支えたそうに手を出したり引っ込めたりするこの黒毛の男。
この男が大手を振って周囲を気にせず存在できる場所なんてひとつしかない。


「お、目ェ覚めたかい」


やっぱりか。そのとき俺は、脱力だったり安堵だったり、いろんな感情を一度に味わいながらようやくちゃんと説明できそうな人物を見つけて足を止めた。

「一番隊隊長、不死鳥マルコ……、これは一体どういう状況だ?何故俺は海賊の船なんかに乗ってるんだ」

それを聞いた不死鳥は、怪訝そうに眉根を寄せて俺を見た。

「……ここはモビーディック。白ひげの船だよい。……どこまで覚えてるか知らねえが、アンタはうちの愚弟をありえない方法で助け出した後、赤犬に殺されそうになりながらも何故か七武海のドンキホーテ・ドフラミンゴに助けられ、乱入してきた赤髪にドフラミンゴから身柄を押し付けられ、海軍に居場所はなさそうだと状況を察した赤髪はそのままアンタを抱えて海に出た後、大怪我もなんのその、愚弟のエース君がアンタを赤髪の手から奪い取り、エースからあんたを引き離そうとしても離さなかったため、結果的にウチに引き取られてきた。……こんなもんでいいかよい?」

くらり。
的確すぎる説明にぐうの音も出ないほど状況を理解させられ、逃げ道を塞がれた気さえした。

「ッ!!じゃあちょっと待て、ここはどこなんだ!」
「モビーディ、」
「うるせえ分かってんだよ!どのへんの海だって聞いてんだ!本部からどれくらい離れてる!」
「……あれから3日は経ったねい」
「みっ……! 嘘だろ、じゃあ、じゃあみんなは……! 『ヴィエント・ファルコ』!」
風の鷹を生み出す俺の腕を掴んで、怪我を気にかけない方法で俺の注意を引いた。
「ジュール、何してんだ!まだ出歩ける体じゃねえだろ! そもそもどこに、……赤髪か!? だめだ、行かせねえ!……ぁ、」

吐き出し終わってようやく俺の状態に気づいてくれたらしいエースは、怪我を抑えて苦しんでいる俺の体を支えて気遣ってくれた。

「バカ、痛ぇ……!」
「ごめん!だ、大丈夫か、ジュール!?」

あんなに勢い良く俺の体を振り回したくせに、今は打って変わって優しい力加減。
なんとか痛みをかみ殺してなんとか立ち上がる。気づいたら能力の風の鷹は綺麗にいなくなっていた。

「赤、髪の、ところに……行くんじゃねえよ。……はぁ、本部に、帰るんだ、俺は」

ダメ。もう痛すぎてなんか胃にきて吐きそうになってる。
そんな状況に当然気づかないエースは、子犬から鬼に変化した顔を近づけて、吐きそうになってる俺の胸倉を掴む。
おいお前俺を労わりたいのか痛めつけたいのかどっちだ。

「本部だって!?それこそダメだ!何しに行くんだ!ジュールを殺そうとしてただろ!」

これ言ったらどうせ引くし、どうせ引き止めるだろうから曖昧に笑ってエースの手を解く。

「おい!ジュール!」
「……死にに行く気かよい」

今まで口を開かなかった不死鳥が静かに口を開いた。
死にに行く。
そうだな。確かにその通りだ。
不死鳥の言葉は何もかも的確すぎて微笑した。

「なっ、ダメだ!そんなの許さない!行くとこねえんならここにいろよ!ジュールなら大丈夫だって!」
「大丈夫、大丈夫じゃないの問題じゃねえんだよ。お前、ここが自分の居場所だって言ったよな」

みっともなく生きるより親父の息子のまま死ぬって。
続けてそう言うと、困惑しながら小さく頷くエースから視線を外してポーチからエターナルポースを取り出して指針を確認する。

「俺だってそうだ。お前が白ひげに命を預けてるように、俺も海軍に命を預けてる。お前のことや、お前の大事な人たちのことも殺そうとしたけど、あそこが俺の家なんだよ。だから家に帰るんだ、邪魔するな!『ゲイル・シュヴァルベ』!!」

エースを勢い良く突き飛ばし、距離を取ってから急いで能力の中で最速である疾風のツバメに飛び乗って空を飛んだ。
後ろではエースが何事か叫んでいたようだが無視をして前だけを見つめた。
風圧に晒されてようやく、「あ、そういえば俺大怪我してたんだった」と目が眩んだがもう到着まで何とか我慢できる事を祈るしかなかった。



:::



「ジュール!待てよ行くな!!ジュールーーー!!……ッチ!」
「待てエース!お前までどこ行くつもりだい」
「追うんだよ、当たり前だろ!!このままじゃジュールが殺されちまうんだぞ!」
「待て!」
エースはマルコの制止を振り切ってストライカーに乗り込みジュールを追いかけた。
何の装備も無いまま飛び出すことがどういうことか分かっているだろうに、それにさえ気づかなかったのか、どんどん小さくなるジュールの影を必死に追いかけていった。
「……あのクソガキ…!!また突っ走りやがって!……オヤジ!緊急だよい!」
飛び出していったエースの背中を横目に収めつつ、マルコは白ひげへの報告に駆け出した。




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