深海にて41


※ まごうことなきえろのため、高卒前のお子さまはバックぷりーず☆
※ 君にスキだらけ に書いた話の途中補完話です。可能であればそちらの話を先に読んでいただければ。と思います
※ 追記より続きありです。




海なんかじゃなくても
人はどんなところでだって
深海に潜り込むことができる
沈み込むことができる
それは
比喩的な意味であって
詩的な意味であって
形ないものにとらわれる
それが深海に沈むこと



「っあーーーー…、疲れたあぁ」
 男鹿と葵はなだれ込むようにホテルの部屋のなかにダイブしていった。今日、今まで結婚式の最中にあり、なにを隠そう、彼らがその主役だったのだから疲れるのも当然だといえよう。本当ならこんな派手にけばけばしく式なんぞというものを行うことに、男鹿も葵も、したがるような性質ではないのだが。手荷物を部屋にぶん投げ、ベッドにダイブ。もちろんダブルのふかふかベッドだ。今日だけ泊まるこの部屋に愛着などこれっぽっちもないが、このふかふか感だけは懐かしいし、とても愛おしいと思うものだ。男鹿は布団に顔を埋めながらもう一度「つかれたぁ」とごちた。葵はそんな男鹿の隣に腰を下ろす格好でクスリと笑う。
「疲れたわね。でも、…たのしかった。し、嬉しかった。みんな、来てくれて」
 男鹿はうー、とかむー、とか音に近いものを吐きだした。それが肯定の意味だということを、葵はよく知っている。その答えの代わりに、葵は男鹿の髪をやさしく撫ぜた。楽しくても、嬉しくても、面倒なことにかわりはない。それは男鹿の思いであり、葵の心の奥でもあった。そしてまた、そんなしあわせな気持ちのなかで、二人でゆったりとした気分を味わいたい。そんな心持ちがマックスに達していた。男鹿はそれを前面に出して顔だけを上げ、物欲しげな視線を、隣に座る葵へと向けていた。はたとそんな男鹿と葵は視線を合わせ、絡ませる。
「今日は新婚、はじめての夜、だっけ」
 その意味は簡単だ。今朝、役所に行って婚姻届を提出し、役所で拍手とエールを送られたその足で結婚式場へと向かい、式を挙げてこのホテルで休む手筈になっていた今日というこの日。夫婦になって初めての日を越えようとしている今、妻と夫がなにをするべきなのか、と問われればそれは、どの国だってどんな民族だってきっと変わりはしないだろう。男鹿は民族さながらに上体を起こして、数時間前に神の前で捧げた口づけを、今度は二人きりの空間のなかで葵へと送る。だが、疲れたくちびるはカサカサに渇いたものだった。きっと男鹿自身もそんな口になっていたことだろう。潤いがほしい。それは男鹿としては、もっと性的な意味合いを含むものだったのだが。
「…しょや。 って、いうんだ、って古市が」
 口づけはすぐに深くなって、いつの間にか身体を起こして葵を押し倒すような格好になった男鹿は、葵を見下ろしながらくちびるをくっつけたり離れたり、舌を絡ませたり、歯を舐めたり、口のなかを舐めたり、葵の胸や背中を撫ぜたり、いろんなことをしながらすっかり自分のペースを握っていた。そんなことだけで葵の頭はポゥッとなって顔も朱に染まった。糸を引きながらに離れていく互いのくちびるらが、名残惜しげにつながろうと最後までもがく。が、やがてその糸は途切れてゆく。あ…、と葵のしずかな声が洩れる。
「わかる、けどっ…! お風呂っ」
「……あおい」
 めったに呼ばない下の名を呼ばれて葵は男鹿の目を見て息を飲む。その目があんまり深刻でまじめだったから、言葉なぞ声にならなかった。お風呂に入るより、今の男鹿にとってはだいじなことがある。野生に近くなる男鹿のギラついた目は、葵が心を寄せた彼そのもののように思われた。それを思うと、とてもつよく思う。すきだ、と。胸が締め付けられるほどに。抱き締めて、抱き締められたい、とつよく強く感じるほどに。だいすき。どちらからとはいえないくちびるどうしのふれあいがまた行われる。脳が、思考が、互いのことしか思われなくなる。男鹿は葵の衣服を剥がしにかかり、葵はそんな男鹿の服をわずかに脱がそうと試みる。こんなふうに部屋になだれ込んで行為に臨もうとするほど猛っているだなんて、男鹿にしてみればそうとう珍しいことだ。高校の時分ならばそんなこともあったのだろうけれど、三十路にちかいこの歳ではあり得ないほどの猛り具合。それを感じた葵はすぐに陥落した。むろんそれは、熱っぽい吐息だったり、強引な態度だったり、噛みつくような口づけだったり、下腹部の硬さだったりするのだったが。
「おが…っ」
 葵が抱きすくめられながら吐きだした言葉に、男鹿は生まれて初めて違和感を覚えた。それは、
「おめえも男鹿、だろ……」
 低く囁きかけながら男鹿は葵をバンザイさせ、上衣を剥ぎ取ってしまった。むろん、そうされることを葵は嫌がらなかったので。そして、葵は男鹿の言葉を理解して、彼を下の名でこれからずぅっと呼ぶべきなのだと、はたと気づいて赤面した。それはある意味での快楽というか、恥じらいとともにある心地よさを、胸から頭から、じんわりとお腹のほうにまで感じてゆく。と同時に、葵は己の身体の中心が熱をもって濡れていくさまを感じた。それが不思議と気持ちよかった。
「…た、たつみぃ」
 男鹿の名前を呼ぶ。それはせつなくて、熱っぽいものを帯びて、空気の揺らぎを通じて、艶っぽく色っぽさ、そしてやらしさも伴って響く。それに呼応するように男鹿は舌先を尖らせて葵を味わう。首筋、骨ばったところ、胸元の溝、ふくらみの下、肋骨のあたり、腹筋のうすい線、ヘソの周りからなかまで。まだ下衣はまとったまま。ヘソや腹筋線を舌でなぞりながらそれをずり下げてしまう。こうして攻めながらに脱がせると、彼女は決して拒否しないことを、積年の付き合いによりよく理解していたためである。

 いつの間にか裸になって、とろとろになっていたことに葵は、はたと気付く。それはあまりに遅い気づきというものだろう。熱に浮かされた目で見上げた男鹿はすでに上半身は裸であり、今か今かといった感じで下を脱いでいるところであった。今からあらわになるであろうそこがかたく、たかく猛っていることを葵は身をもって理解していた。それを欲しながらも、ほしいとは(恥ずかしくて)いえないジレンマ。その狭間でモヤモヤとした思いばかりが先行していく。
 男鹿の口がやさしく、そしてやらしく彼女の乳首をくわえてやわこく刺激する。まずは左に、歯を立てずに甘っこくねちっこく舌先を丸めながら、かたくなりつつある、色づいたそこを舌先で転がした。次は右へと転がす。同じように、だが、決して単調しはならないように。その感触が葵にはピリリピリリと、胸から脊髄、脳みそを伝って感覚としてまた身体のあちらこちら、もちろんおっぱいや股間へとそれは音もなく伝っていく。男鹿の舌先がぐりっと、だが音なく葵のヘソをほじっていく。今まで感じたのことのない、快感に近くて苦痛にも近い感覚。葵は、あ、と堪らず声を発する。それは言葉にはならなくとも。また、その感触の一つひとつが性感を刺激していることを感じながら。
 葵の頭のなかが真っ白になっている間に男鹿もすっぱだかになっている。見てしまうのがアソコだということに、葵自身なぜか恥ずかしい。見慣れたそそり立ったそこを見ないように目を背けながらも、そこから目を離せずにいる。どれだけ期待感と背徳感にも似た感覚に苛まれているというのか。だからこそ、彼女は男鹿のことをまっすぐに見ることができない。
「あ、え? え? え??」
──見ることが、できなくなった。なぜならそれは、葵はベッドの上に転がされていた。上からのぞく野犬のような鋭い眼。男鹿の目が野生の色に輝いている。今から、葵の身体を食べ尽くそうとしている。男と呼ぶにふさわしい、強くて固い決意をもった瞳。両の足を持ち上げられ、抱え上げられて葵は見下ろされていた。濡れそぼっているであろう足の付け根のアソコだとか、期待と懇願に潤んだ葵の目だとか、そういったものがすべて男鹿によって見下ろされている。そう思うと、それはいやだと思うより先に、キュンと葵の胸を締め付けるのだった。だが、それだけでは済まないのが初夜というもの。
「あっ! あぁっ…、んやぁあぁ」
 激しく葵が喘いだ。抱え上げられた両足を肩にかけて、足を担ぐような格好をしながら男鹿は屈み込み、その中心に舌先を伸ばした。ペチャペチャと音立ててすくい上げるよう、細やかにやさしく動かす。すでに濡れてぐっしょりとなったそこは男鹿を泣きながら呼ばんとしているようで、可愛らしいというしか他ならない。男鹿は葵が弱いぽってりと腫れた女の芽を舌先でチロチロやりながらその様子に気を良くした。花芽を積むつもりで、彼女のそこをやわっこく刺激した。それは葵にとっては泣くほどの気持ち良さで、身体の全体を震わせてよがる。ぬるぬるとした透明の液体はあれよあれよという間に溢れて、トロトロと舐めるものの舌先をあざ笑うかのように横すべりに流れ落ちていってしまう。口がひとつくらいでは足りないほどの溢れっぷりに、男鹿は心持ちを回復させた。悦びがよく感じられるからだ。男鹿はひと息つくために、葵のだいじなところから口を離した。その際には男鹿の口から糸を引き、離れたくないといわんばかりにねだらんとしているかのごとく、ねろねろとしたその繋がりを見やった。
「あっ…? だ、だめぇ。電気ぃ」
 その程度のふとした間に正気にかえる。葵はその電気の明るさに違和感を覚えていた。夫婦の営みにもつれ込むことは、夫婦になる前々から──これはその当時が高校生だったということにおいては、あまりよろしくないことでもあるのだが、恋人になり、やがて彼らは肉体関係を持った、というのが事実だ。また、その時分に婚姻関係を結ぶことなど、考えも及ばなかった。というのが正しい。悪びれることなく。──あり得なかったため、恥じらいについてはとても高く思えるのがさも当たり前の感覚といえるだろう。電気の灯りを変えることなく、息を深くしてからまた男鹿は、葵の股の間へとその顔を埋めていった。それは雄としての、本能に他ならない。
 くちゅくちゅくちゅ…。
 低く耳を犯すのはそんな濡れた音だけだった。それは、そんな音を起こす男鹿の耳にも、音を洩らす葵の耳にも、どちらにとっても平等に響いた(公平な意味では、それは平等になど響かない。音の鳴る箇所から耳への位置などを含めて考えると)。電気の煌々とついたなかで男鹿はそこを舐め、そして吸いつき、ヂュッと音立ててキスをし、舌を尖らせて葵の弱いところをチロチロ、とやる。これらすべての感覚が葵の性感をバシバシ刺激しているからに他ならない。その間、男鹿は葵のそこを見ている、というわけではない。むろん、見ていないわけでもないのだが、見るには近すぎて見えもしない至近距離であり、どちらかといえば目に入るのは壁紙のクロスの白っぽい色だったり、そのザラザラとした感じだったりとか、あるいは視線を動かし葵の近すぎる肌──それは局部を含まない、たとえば太ももだとか、そういった箇所であり──の質感を目に焼き付けたりすることを続けていたのだが、そのようなことはひっくり返されたようなあられもない格好の、しかも快楽という熱により浮かされた葵の脳みそに、この今の現状では理解などできるはずもない。ただ葵は身体を悦びに悶えさせながら、ひたすらにその快感に耐えるしかない。その間の行動や言動になんて、ほとんど意味などないだろう。爆ぜるように洩れていくひう、というしゃくるような喉の音とともに葵の喘ぎは途切れることなくだだ流れし続けた。
「んぁ、んっ、や、あ、あ、あ、あ、あ、う、うん、っく、やぁあっ、あ」
 ほんとうのところ、一度は気をやっていた。男はそれに気づかなかったし、葵は汗まみれでぐたりとしていたというだけの話だ。まだそれでも快感は強くなってくる。それが怖かった。その付き合いだしてしばらくした頃、互いの身体が触れることがあまりに気持ちよくて、あまりにそれが恐ろしかった。その気持ちをなぜだろうか思い起こさせた。それはきっと、今宵の男鹿の、いつものような余裕がどこにも見当たらなかったせいかもしれなかった。葵はそんな余裕のない、雄の顔をした男鹿のことを見上げ、また同時に彼から与えられる快感というものを感じながら、恐怖と甘やかさを同時に感じてもいた。それがどういった理由なのかは葵には、今の熱に浮かされた頭では理解など到底できもしないのだが。くたりとなった身体の向きをすこし変えてやり、片足を男鹿の肩にかけたままだらけさせてやる。呼吸がまだ正常になっていない。そんな彼女の太ももの内側に唇を寄せる。汗と、それ以外の気持ち良くて溢れ出た体液で濡れている。口のなかにわずかなしょっぱさと粘っこさがやんわり広がる。それすらも痺れるような気持ち良さで、葵はひくりと全身で応える。性器には触れずにそこに近いそこかしこに男鹿は唇を寄せていく。もどかしい感触が彼女の内なる炎のもとに火をつける。冷めつつある身体はふたたび火照り、戻りかけた思考も快楽のうちに沈んでゆく。また潤むそこのことなど見ていないのに、葵は腰をくねらせて今の格好からなんとか脱却しようと試みる。だが、そのまんま向きが変わり、葵の身体が腹這いの形になるだけで、なにも変化はない。男鹿が身を起こして上から見下ろしたときに見える性器の様子が違うだけだ。尻の窄まりが艶めかしく藤色に近い桃色で染まっている。女の性器の内側は驚くほど鮮やかな桃色に色づいているのに、それに比べればこのちいさな窄まりはくすんでいるように映る。そういえばこんなところを注視したことはなかった。もしかしたら、変態といわれてしまうのかもしれない。だが、ここだって性感帯なのだと彼女が知らぬわけもない。男鹿は急にそんなことを思う自分に自信に、煌々とついたままの電気に照らされたあられもない姿の新妻を見てムラムラする気持ちを爆発させんとする自分自身にひどく驚いてもいた。味わいたくてたまらない。そんな気持ちが抑えられないのだ。男鹿は後ろの穴に顔を寄せた。窄みの周りをゆるく指でなぞってから舌先でつついた。ひ、と葵が喉を鳴らす。今までに感じたことのない、その箇所からくる感触がどのようなものなのか、男鹿には想像するだけしかない。葵は脚をバタつかせた。が、逃す男鹿ではないし、まだ身体には十分な力など戻ってはいなかった。男鹿の舌先は窄みの周りのシワを塗りのばすよう丁寧にかつ、ちいさくうごめくように動き回り、そこをほぐすように刺激し続ける。葵の脳に届くのは意外にも不快感などではなかった。前の穴を舌先で転がされるのとはまた違った、鈍い気持ち良さが脳内に浸透していく。ほどなくして、気持ち良さのためにゆるんだそこが、男鹿の舌を奥へといざなったのは自然の動きというものだろう。むろん入ったのは舌なのでそう奥まで入るわけでも、太いわけでもない。無理がないそれは激しすぎない心地よさだけを葵へと伝え続けている。しかし男鹿の吐息が葵に触れるたびに、その行為の淫蕩さが頭にこびりつく感覚に襲われる。葵は泣き声にちかい声を発した。
「あ、…あ、あ、だめ、ダメよ……ダメ。そ、んなとこ。ああぁっ」
 そこだけではやはり快感が足りないのだろう。男鹿は興奮の熱に浮かされた頭ながらも冷静に、葵の性器を己の指で割った。さっきよりもヌルヌルだ。笑えてくる。ダメだというのが言葉だけだと証明される瞬間。メスである葵の恥じらいの仮面を剥ぎ取る瞬間は何度やっても加虐性にも似た悦びを男鹿へ伝えてくれる。わざと指を奥に入れずに入口を弄りクチュクチュと水っぽい音を鳴らす。ほとんどが葵の喘ぎにかき消されてしまったけれど、それでも葵自身の耳にも聞こえていることは明らかだ。尖らせた舌を狭い窄まりのなかでピストンするように動かし、やがてひと息に引き抜く。その光景は想像よりもいやらしい。思わず男鹿は見魅入ってしまうほどに。舌が入っていたことを示すようにちいさな、ほんのちいさな穴が開いて、また入れてくださいとねだっているように、しばらくそのまま口を開けていた。なかは暗くてどうなっているのか見えないが、それを見たいとすら思わせる妖しさをたたえている。と同時に男鹿はそろそろ自身の興奮にも限界がきたと思う、下腹部の張りに対する痛みを感じた。服はすでに脱ぎ捨てていたが、股間はもうガンガンに張っている。早く出してしまいたい気持ちと、我慢して射精したときの解放感の半端なさに身を委ねる快楽との板挟みにその気持ちはあった。その間に、葵の後ろの穴は常時のように口を閉じ、わずかに寄ったシワだけをほんのすこしひくつかせている。男鹿はそのまま立ち上がり、股間を葵の股の間に擦り付ける。触れただけで頭のなかをかき回すほどの気持ち良さ。そのまま暴発してしまうのだけは、避けたかった。腰の動きはそう早くはしない。だが、それだけでも葵には十分すぎるほどの刺激だ。また男鹿にもいいぶんはある。入れるその気がないのだ。まだ、今は。ワレメに沿って、だが入り込んでしまわぬよう、ゆっくりと腰を上下に動かす。ぬちゃ、ぬちゃ、と粘りつく透明の液体が男鹿の男根を色なく染めていく。これは色に染まるけれども、色のない淫猥な粘液だ。染められれば染められるほどにぬめりによって滑りがよくなり、気持ち良さも増すというもの。だから知らぬ間に、徐々に腰の動きが早くなっていくことに男鹿自身が気づくと、はっとしてその動きを緩める。入口を弄られて気持ち悪いはずがない。むしろ、早く擦ってくれといわんばかりに葵の息は上がっている。
「ふっうっあっあっ、んっう、う、ん、あぁっ。あ、熱っ、熱ぃいっ…! んあぁっ…!」
 二つの穴を擦り上げる動きをしながら、男鹿は足下に手を伸ばし用意していた避妊具を手にした。これを装着しなければ膣に挿入してはならない、そう思っているからだ。だから今は擦り付けるだけ。それだけであっても、それは熱をもって気持ち良くて仕方がない行為に相違ない。葵は男鹿の動きに誘われるように呼吸を荒げ、ときに声を抑えきれずにいる。コンドーさんの袋を切って取りだす。この感触はべたつくのでなんとなく苦手だが、必要なことと思って続けてきたことだ。葵が予防も含めてピルを続けていることを知っていてもだ。男鹿は葵の片方の足を抱え、その逆の太ももを手で抑えつつ腰の動きを早くした。そのたびにクチュクチュという卑猥な音が耳に届く。それは性的な興奮を煽る音に他ならない。このまま推し進めて、奥に入ってしまいたい気持ちをとどめて腰を離した。糸を、ほんのわずかな距離、引きながらその粘液の糸が途切れるのを確認しながら(そんなことはなんの意味もないと、むろん男鹿自身も分かってはいたけれど。だがしかし、その淫らな様子に目が離せずにいた。ただそれだけのことだ。)身を引ききって、男鹿は薄皮を己の性器に被せた。手馴れたものだ。商品に書かれた(それすら、ほんとうのことなのかどうかは、彼らには分かりはしない)0.3mmの薄皮がどれほどの意味があるのか。それは、今までの男鹿と葵とのまぐわいを感じればまごうことなきことだろう。男鹿は葵のひくつく膣に自身をあてがいながら、指では先まで避妊具に触れていたその指で(それは、無菌である避妊具に触れることによって、ある意味ですこし前よりもきれいなったかな、と勝手に思い込んだからではあったが)後孔にその指を滑らし、指を入れることなく軽く入口を、はじめて指で弄った。そこはもっともっと、とヒクついているかのように映る。
「っ、すげ。…挿れるぞ」
「だ、め……! そこ、電気消してぇ」

つづきを読む 2017/05/18 22:52:01