わかりました、協力します 1


「あれ、花京院じゃん。どうしたの?」
「匿ってくれ。追われてる」
「はぁ?」

花京院は友人だ。クラスメイトで、趣味もゲームと同じだったためそこそこ仲良くしている。
玄関にいる私の横を通り抜けて、花京院はすぐに戸を閉めて鍵をかけた。

「……とりあえず、部屋に上がる?」

こんなところで立ち話も悪いし、と部屋へ勧める。

「そうさせてくれ」

憔悴しきった表情で花京院は言った。



「最近、誰かにつけられてるような感じがしてたんだ。ちょっと探ってみたら同じ高校の女の子だった。その時はまだ気のせいかもしれないと思ってたんだけど、ポストに毎日手紙を入れられるようになってさ。切手が貼られてなくて、本人が家まで来て入れたみたいなんだ。その頃にはもう隠れずに僕の後をつけるようになっていた。次見たら『もうやめてくれ』って言おうと思ったんだ。でもさっき家の前にその子がいて、なんだか様子もおかしかった。近付くべきか迷ってるうちに気付かれて、僕に向かって走ってきたから思わず逃げてきた」
「つまりストーカー?」
「まぁ……うん、つまりそうなんだろう」

自分に(おそらく)好意を寄せる女の子をストーカー呼ばわりするのは歯切れが悪そうだ。邪険にできないのはわかるけど、こういうところも付きまとわれる原因だったりするんだよなぁ。

「で、なんで私の家に? 近所だから?」
「それもあるんだが、君に頼みがあって」
「うん?」
「僕の恋人のふりをしてくれないか」
「……はぁ?」

本日二度目の間抜けな声が漏れてしまった。
だって仕方がないだろう。
「実は以前からこういうことは何度かあったんだ。恋人がいないならいいだろうって迫ってくる人も。だからせめてこの件が終わるまででいいんだ」
「ちょっと待ってよ。女って怖いんだよ! 恋人ですなんて言ったら刺されかねないじゃん!」
「その点はすまない、耐えてくれ! 僕も出来る限りフォローするから!」
「そんな……」

もうここまでくれば私は断ることができない。
花京院がまっすぐにここへ来たのなら、この家に逃げ込んだところまで見られているだろう。つまり、既にその子の矛先は私に向いている。彼を家へ入れた時点で既に確定していたのだ。
毒を食らわば皿まで、だ

「仕方ないな、わかったよ」
「ありがとう。こうなってしまったのは僕の責任だ。出来る限り早く決着がつくようにするよ」
「……間違っても、恋人がいるから、なんて断り方はしないでね。恋人がいなくなればいい、って考え方に傾くかもしれないから」

漫画や小説ではよくある理論だ。相手がもしそういう考えだったら花京院はどうするつもりだろう。

「そのあたりはちゃんとやるさ。心配しないでくれ」
「ちゃんとやらなかったから今の状態なんじゃないの?」
「うるさい」
 

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