short 口実はいくつでも


激しい風が窓に雨を叩きつけている。遠くからはゴロゴロと雷の音が聞こえてきた。

「これじゃあ帰れないね」

つい2・3時間前までは晴れ渡っていたはずの空にため息をつく。
時折稲光が瞬いて、いつ近くに落ちてもおかしくない。容易に外に出ない方が賢明だろう。

「泊まっていけよ。明日の朝送ってやる」
「ん、わかった」

一も二もなく頷いた。勿論考えなしにというわけではない。彼とは長い付き合いで、言葉が少なくとも欲も下心もお互いに理解している仲だ。この雨も風も雷も彼が私を泊める理由の一つに過ぎないとわかっているので、遠慮する必要はない。


部屋を白く染めるほどの閃光と、間を開けずに空気を揺らす雷鳴。

「……っ!!」

思わずビクリと体を震わせてしまう。
そうしている間にも窓の外で轟音が鳴り響く。小さく身をすくませながら、ソファーでくつろぐ露伴の隣へ座った。

「なまえ、もしかして恐いのか?」
「……うん」

弱みを見つけたとばかりににやにやと露伴が笑う。
そうだ。私は激しい雷が苦手だ。距離が遠いものならどうとも思わないが、近くに落ちたとなれば命の危険すら感じて不安になってしまうのだ。
そしてまた一つ雷鳴が轟く。
小さく身を震わせると、露伴は余計にくつくつと喉を鳴らす。

「我慢せずにこっちに来いよ」
「……ん」

私ばかり弱い部分を知られているみたいで、なんだか悔しい。
それでも彼の体温で安心してしまうのも事実だ。
遠くへ離れていく雷鳴を聞きながら、露伴の肩に頭をのせた。

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