short 2014シーザー追悼1


いつだって彼は、



街中でその後ろ姿に気づいたがすぐには近付かない。彼の隣には女の子がいたから。
甘い言葉を囁かれているのだろう、頬を仄かに染めながら笑う彼女。
今日もまた見たことが無い相手だ。


シーザーは浮気性なわけではない。飽き性な訳でもない。
彼はいつだって本気だ。
本気で、女性に愛をささやいている。
しか女性の勘は侮れず、その言葉が自分だけに向けられていないことにやがて気付き、別れを告げる。そのときにシーザーが嘆く姿を見ることがないのは、女性が優しい言葉を選んでいるからなのだろう。勿論それに気付かない男ではなかったが、彼女が自分のことを最大限考えて送る言葉だとわかっているのでそれでいいらしい。


シーザーは女の子の手に口づけをし、二人は別の方向へ歩き出す。
逢瀬は終わったようなので、私はシーザーへ駆けていく。

「シーザー!」

「なまえ」

声をかければ直ぐに気付いて、振り向いて笑う。
船がある方へ向かっているので館に帰るのだろう。
私は隣を歩いた。
 

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