short オンリーワンよりナンバーワンで
「ねえ、ホル・ホース。私はあんたに他の女がいたって構いやしないわ。世界中に都合良く使える女がたくさんいても、私もその一人だとしてもね。そのかわり、」
最後は私のところに帰ってきて。
己の弾丸が額に当たったときに死んだと思ったが、撃ち抜かれてはいなかったらしい。病院で目を醒まし、頭に巻かれた包帯に触れた。 病室は個室のようで、他にベッドはない。身を起こすと、見覚えのある黒髪が視界に入った。
「なまえ」 「……あぁ、起きたのね」 ベッドに顔を伏せて眠っていたなまえは目元を擦り、身体を起こした。
「誰かさんが怪我したって聞いたから、飛んできちゃった。いい男なのに顔に傷付けちゃって、間抜けったらないわね」 「闘いの傷を背負う男、ってのも悪いもんじゃないだろ?」 「でもその傷は馬鹿みたいだわ」
きびしいなぁ、と肩を竦めてみせる。
「しっかし、お前みたいな女が目元腫らしてちゃいけねえなぁ。俺のために泣いてくれたのか?」
目の周りを真っ赤にしているなまえの頬に手を添える。はっとしたような顔をしたが、すぐにその目を細めてその手になまえのそれを重ねた。
「あんた相手に誤魔化しても無駄なのよね」 「あったりめぇよ」 「ホル・ホース。私、あんたが好きよ。でもあんたは、私のことなんて沢山いる女のひとりなんでしょうけど」
なまえが目を伏せる。
「他に女がいたっていい、それは本当よ。だけど、私を一番にして、なんて言う女は面倒でしょう?」 「そんなわきゃねぇッ! お前だったら――!!」 「……え?」 「おっ、と」
なまえが目を丸くする。思わず口走ってしまった言葉に口元を押さえるがもう遅い。バツが悪くなって目をそらす。
「それなら、私の家に婿に入らない?」 「……そういうことは男に言わせてくれよ」 「否定はしないのね」 「仕方ねぇだろ……」
ひとりの女に惚れ込むなんざ、俺らしくねぇ。
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この子が実は裕福な家の娘で、その計らいで病院で特別待遇なホル・ホース。 だから婿入りで。 戻る
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