short 熱に浮かされたような


「私、花京院のことが好きなの」

密かに片想いをしていた相手から告げられた言葉に、僕は素直に喜ぶことができなかった。



「承太郎の友達なんですか?はじめまして、なまえです」

初めて会ったとき、そう言って微笑んだ彼女に一目惚れをしていた。
その後もなまえのことを考えるたびに胸が高鳴った。しかしなまえの隣にはいつでも承太郎がいた。二人はお互いを名前で呼び合うし、学年の違う二人だったが登下校は毎日一緒だった。
そして、当然のように承太郎の家に入っていく姿も何度も見た。
他の女子には向けない承太郎のやわらかい表情や、それに甘える由の腕も。
友人と呼ぶには近い距離を見るたび、胸のどこかをひっかかれるような心地になった。
二人はきっと付き合っているのだろう。そんな結論に辿り着くのは容易で、そのたびに胸の内の黒く汚れた感情を押さえつけた。

そんな彼女が何故、自分に好意があると伝えたのか理解ができない。

「君は……承太郎が好きなんじゃあないのかい」
「……? 承太郎のことは好きだけど」
「それならどうして、僕のことが好きだなんて……」
「おかしいの?」

なまえはきょとんと目を丸くする。話が噛み合っていないのか。

「もしかして……私の苗字、知らない?」




「あはははははははっ!」
「……あまり笑わないでくれないか」
「ごっ、ごめん、だってふふっ」
「二人とも、一度も言ってくれなかったじゃあないか!」
「知ってると思ってたんだもーん!」

恥ずかしさでなまえをたしなめるも、変わらず楽しそうな笑い声を響かせる。
友人と呼ぶには近い距離も、お互いに向ける柔らかな表情も、すべて家族のそれだとすると納得がいく。

「仕方ないよ。私と承太郎、似てない兄妹だってよく言われるし。……それよりさ、そろそろ返事聞きたいなー、って……」

笑いを止めて、声が小さくなっていくなまえ。
そうだ。僕は先程なまえに告白を受けたばかりだった。意識した途端に、冷めていた頭に急激に熱が上りだす。
恥ずかしさに顔を赤くして二人揃ってうつむく。
相手の顔は見れないし気のきいた言葉も出ない。それならばと、なまえの身体をぐっと引き寄せた。





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またもや、七人目連載の番外らしきもの。
書き換えて本編にぶっこめられたらいいなー……

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