思い出を枯らせて 6
なまえが目を冷ますとホテルの一室にいた。起きてすぐは見慣れない部屋に戸惑っていたが、ほどなくして承太郎が他の部屋から現れて、ようやく落ち着くことができた。
岸辺露伴の家で用事を終わらせた承太郎は別室に待たせたなまえの様子を見に行った。しかしなまえはぐっすりと眠りについていた。あまりにもよく眠っていたのでそのまま承太郎の泊まる杜王グランドホテルに運んだのだという。 承太郎がさらりと話したのでなまえは思わず納得しそうになってしまった。
「わ、私、予約したホテルが」 「問題ない」
いったい何が問題ないというのか。気付けば外は真っ暗だ。眠っている間に夜になってしまったようだ。
「ここに泊まればいい」 「でも……」 「今日はもう遅い。それに、ジョセフ・ジョースターの要望で数日後にアメリカの本部へ君を迎えることになっている。休めるうちに休んでおくんだ」
有無を言わせぬ承太郎の言葉になまえは困った顔をした。 承太郎は承太郎で、嘘を織り混ぜた罪悪感から目を合わせられずにいた。
承太郎が読んだなまえの記憶には、犯人の所在がわからないとあった。おまけに犯人はなまえに執着するような言動があったらしい。だからまだ犯人がなまえを狙っている可能性は充分にあった。あくまでも目的はなまえの保護だ。 なまえを傍に置きたいという感情も少なからずあったのだが、承太郎本人は自覚していない。
「……わかりました。じゃあ、電話だけ貸してください」 「あぁ」
短い了承をした承太郎は部屋を出ていった。それを確認してからすぐになまえは電話をかけるべく立ち上がる。
しかし相手は電話に出ず、なまえは留守電に用件だけ残すことになった。
「みょうじです。財団の方の紹介で杜王グランドホテルに泊まることになりました。細かいことは掛け直して報告します」
なまえのいる財団支部では、休暇の際は行動予定表を書かなければならなかった。変更する場合は上司に連絡する。今回の休暇でも例外ではなく、なまえはそれに従っていた。 部下のプライベートまで完璧に把握しようとするその様は異様なのだが、なまえは気付いていない。 戻る
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