思い出を枯らせて 2


なまえは困惑していた。目の前に立つ大柄な男はなまえの腕を掴み、焦燥にまみれた表情で見下ろしている。

アメリカでSPW財団に勤めているなまえは日本支部に置いていた資料を回収するために日本に来ていた。久しぶりなので休暇もとった。友人の家に顔を見せて、実家のある杜王町に足を運んだ。

突然、名前を呼ばれた。聞いたことのない男の声だ。驚いて振り向くと逃がさないとばかりに腕を掴まれ、なまえは高い位置にある男の顔を見上げた。
既視感を感じたのは一瞬だけだった。知らない顔に目を瞬かせる。

「あの……どちらさまですか?」

男は走っていたのか息が荒い。しかしなまえの言葉を聞くと我に帰ったように手を離し、取り繕うようにコートと同じ白い帽子のつばを下ろした。

「ジョセフ・ジョースターの使いの者だ」

ようやく口を開いた男に、あぁと合点がいく。

「SPW財団の……?」
「そうだ。みょうじなまえで間違いないな?」

こくりと頷くと男は歩き出した。ついてこいということだろうか。足の長さが違うので小走りで後を追う。

「あの! あなたの名前は……」
「空条承太郎だ」

空条さん、と確認するように呟く。悲痛に噛み締められた口元はなまえには見えなかった。

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