わかりました、協力します 雨の日のこと
「もうやだーっ!」 朝は降っていなかったのに、昼から降り始める。そんな日は傘を持っていない人が大半で、濡れて帰る羽目になる。 鞄の中身だけは守り通すため鞄を抱き抱えて前屈みになりながら走る。 雨足は強くなるばかりで、もし傘を持っていたとしても役に立つかどうか。しかし無いよりはずっとましだったのだろう。 ひとまずは近くの軒先を目指した。一度一休みがしたい。 水溜まりを散らしながら駆け込んで一息つく。気休めでしかないが雨水を吸った制服の端を絞って、雨空を見上げる。多い尽くす灰色はしばらく晴れることはないだろう。ため息が漏れた。
「なまえ、」 驚いたような声になまえがその方向を見ると、同じようにズブ濡れになった花京院の姿があった。 「花京院も傘忘れたの?」 「ああ」 待てども雨はいっこうにやむ気配はない。どうしようかと考え始めたとき、よし、と花京院が呟いた。 「君の家の方が近い。ほら、行こう!」 「わっ、花京院!」 手を引かれて雨の中へ駆け出す。一歩踏み出すごとに水飛沫があがり、振り続く雨で制服が冷たくなる。それなのに、繋がれた手だけは恥ずかしくなるくらい熱かった。 戻る
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