short 2015花京院追悼


彼が突然に転校してから2ヶ月ほど経ったその日。母から彼の葬式があると聞かされた。

彼と私はたまたま通う学校がいつも同じで、そのくらいの関係だ。幼なじみと言うほど親しかったわけでもない。
彼は転校してすぐに登校しなくなったらしい。行方不明になっていたという噂も聞いた。この辺りでは有名な不良も同時期にいなくなっていたらしく、なにか関係があるんじゃないかと噂がたった。その人は彼の遺体とともに帰って来たようなタイミングで戻ってきたのだという。

私には彼が見ているものが見えなかった。それはつまり、彼自身を理解することは出来ないということなのだろう。
見えていたところで……私は何か変えられたのだろうか。彼の理解者として、友人になってその隣にいたのだろうか。彼が死ぬこともなかったのだろうか。
後悔とも悲しみとも違う感情が、静かに胸の内で渦巻く。
彼は何を見ていたのだろう。
疑問に答える声はない。ただ一人、答えを知っているもういない彼を思って、目を閉じた。

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