笑顔でさよならを 番外編
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
車を走らす蒼大。
そして、無言の車内。
気まずい空気。
やっぱり蒼大、本当は迎えに来たくなかったよね?
お兄ちゃんに頼まれて、仕方なく迎えに来てくれたんだよね。
そう思うと悲しくなる。
“別れ”を切り出したのは私なのに、悲しくなるって
私、本当にワガママで勝手だよね……
「……留学、どうだった?」
気まずい空気に耐え切れず俯いていた私に、蒼大は話し掛けてくれる。
「えっ?あっ……、うん。ホームステイ先の家族もいい人達だったし、大学も楽しかったよ。それに、英語を身近に感じられてし、行ってよかったよ」
本当にそうだった。
不安な事もあったけど、“一人で頑張る”って決めた私は、勉強やアメリカでの生活に慣れるように頑張った。
ホームステイ先の家族や、大学で知り合った人達が、本当にすごくいい人達ばかりだった。
だから、不安だったのは最初の頃だけ。
その後は、充実した留学生活が出来た。
「そっか」
蒼大がそう言うと、また無言が続く。
「そ、蒼大は元気だった?」
その無言に耐え切れなかった私は会話を探す。
「あぁ、ほとんど仕事と家の往復ばっかりだったけどな」
「そうなんだ……」
そして、また会話に詰まる。
久しぶりに蒼大と二人きり。
私は蒼大との距離がわからなかったんだ。
だって、今、私達は恋人でも何でもないのだから……
信号が赤になり、蒼大は車を止める。
「なぁ、繭花……。アメリカでさぁ……」
そこまで言うと、黙る蒼大。
私は何を言われるのかわからず、緊張する。
「彼氏とか……、好きな人、出来た?」
えっ?
何でそんな事を聞くんだろう。
「出来てないよ?」
だって、今でも私は、蒼大の事が好きだから。
そう思っているけど、言えるわけがないけどね。
だって、私が“別れよ”と言ったのだから。
「よかった……」
えっ!?
蒼大が小さく呟いた言葉に、私は反応してしまった。
蒼大、今、『よかった』って言ったよね?
それは、何で?
「そ、蒼大はさ……、その……、彼女とか出来たの?」
蒼大の答えを聞くのが怖い。
私は、蒼大の顔が見れずに俯く。
「いないよ」
その答えに、私はホッとする。
そして、顔を上げ、蒼大を見る。
「だって……」
蒼大が何かを言いかけた時、信号は青になる。
結局、蒼大は続きを話さず、無言のまましばらく車を走らせる。
← back / next →
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2011.9.29 魔法のiらんどにて公開
2014.8.30 再公開