顔でよならを 番外編
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 4

 そして、

「着いちゃったね」

 車を止めた蒼大は私を見る。

「あっ……、うん」

 蒼大はシートベルトを外し、まっすぐ私を見つめている。
 その視線に耐えられなくなった私は

「えっと……、迎えに来てくれてありがとう」

 そう言ってシートベルトを外す。

 えっ!?

 私がドアに手を掛けた瞬間、蒼大は私の腕を掴み、グイッと引っ張る。

「そっ、蒼大っ!?」

 気が付けば、私は蒼大に抱きしめられていた。

「繭花……」

 蒼大は私の肩に顔を置き、私の名前を呼ぶ。
 それだけで、私の心臓は早くなる。

「俺……、今でも、繭花の事……好きなんだ……」

 えっ?

 私はパッと身体を反らし、蒼大を見る。
 蒼大はすごく真剣な目で、私を見つめている。
 そんな蒼大から、私は目を逸らせなくなった。

「繭花は俺の事なんて、もう、なんとも思っていないだろうけど……」

 そんな事ないっ!!
 今でも、蒼大の事が好き。

 そう言いたいけど、私……
 そんな事、言っていいのかな?

 だって、“別れ”を切り出したのは私なんだから。

「俺の事、嫌いじゃなかったら……、俺……、繭花とやり直したい」

 私はびっくりしすぎて、言葉が出てこなかった。
 蒼大は今でも好きと言ってくれている。

 夢みたい……
 でも、私……、勝手じゃないのかな?
 だって、私のワガママで別れたのに。

 黙っている私に

「もう、俺の事なんて何とも思っていないなら、断ってくれていいんだよ?」

 蒼大は、優しい笑顔で私を見る。

「そんな事ないっ!」

 私はつい、大きな声が出てしまった。
 だって、何とも思ってないわけがない。
 今でも、蒼大の事が好きなんだから。

「でも……、私のワガママで“別れて”って言ったんだよ?」
「うん。だから?」

 蒼大は本当に“だから、何?”って顔をしている。

「“だから?”って……」

 私はどう気持ちを蒼大に伝えたらいいかわからなかった。
 というか、私自身、どうしたらいいかわからなかったんだ。
 だって、蒼大の事は好き。
 だけど、1年前、“別れ”を切り出したのは私だから。

 私のワガママで別れたのに、蒼大と寄りを戻していいの?

 それが私の中で、一番気になっている事。

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 2011.9.29 魔法のiらんどにて公開
 2014.8.30 再公開



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