顔でよならを 番外編
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 5

「1年前、繭花が“留学するのに、一人で頑張りたい”って言って、俺達は別れた。だけど、今、繭花は留学を終えて帰って来ている。繭花のあの言葉は、“留学”を一人で頑張りたいって事だろ?この先も、一人で頑張りたい、って事じゃないだろ?」

 私は頷く。
 もし、留学をしないで日本にずっといたら、私は蒼大に別れを告げられない限り、別れていないと思うから。

「俺が聞きたいのは、“今”繭花が俺の事、どう思っているか。
諦めが悪いと言われようが、俺は今でも繭花の事が好き。だけど、繭花は俺の事なんて、もう何とも思っていないなら、俺も頑張って諦める。
だから…、繭花の今の気持ちを聞かせて欲しい」

 蒼大はまっすぐ私を見つめている。

 言っていいの?
 私の今の気持ち……

 私は、蒼大から視線を逸らさずに

「……好き」

 その瞬間、蒼大は私をぎゅっと力強く抱きしめた。

「よかった……」

 それは本当にホッとした声で蒼大は言う。

「ねぇ……、私、また、蒼大のそばにいていいの?蒼大と一緒にいていいの?」

 私は蒼大の腕の中から、蒼大を見上げる。

「あぁ。これから先、ずっと俺のそばにいて下さい」

 そう言うと、蒼大は私の唇に軽くキスをする。
 蒼大の唇が離れた後、私は蒼大の背中に腕を回す。

「繭花……、もう絶対に離さない」

 蒼大はそう言って力強く私を抱きしめる。

「私も……。もう、蒼大から離れない……」


 不安な事、辛い事があった時、
 “蒼大と別れて一人で頑張るって決めたのは私“
 その事を思い出し頑張った。
 私が、くじけずに留学を頑張れたのは、私のワガママで、“別れ”を受け入れてくれた蒼大のおかげ。
 蒼大は、こんなワガママで勝手な私の事なんて、忘れていると思っていた。
 だけど、私が留学している間もずっと私の事を想っていてくれた。
 本当に、本当に、ありがとう。
 もう、絶対に蒼大から離れたくない……
 離れないよ。

 ずっと、一緒にいて下さい――…


  【End】

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 2011.9.29 魔法のiらんどにて公開
 2014.8.30 再公開



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