獣と炎・下


「そなたと手合わせをして、私の中で燃え盛る炎は幾分鎮まった。
……だが、まだ足りぬ」

張遼は宿舎の自室に英瑠を連れて来ると、抱き上げたままの彼女に得物を卓上に置くように言い、その通りにした英瑠が空手になるのを待ってから、その身体を優しく寝台に放り出した。
そこまでしてもらわなくとも英瑠には逃げる気など毛頭無かったのだが、もしかしたら張遼は自らの手で英瑠を寝台に連れ込みたかったのかもしれない。

「待ってください、鎧を脱がなくては」
「かまわぬ」

「っ、ん……!」

張遼は自らの帽子を無造作に脱ぎ捨てると、色気のない戦装束を自ら脱ごうとした英瑠の手を遮って噛み付くように唇を塞いだ。
待ち望んだ温もりに口内をなぞられ、英瑠は腕を張遼の首筋に絡めてそれを受け入れる。

それと同時に、彼女は悟った。
そうか、『あの』獣は、こんな風にしても鎮められるのか、と。

恐らく張遼はその事を知っていたのだろう。
だからこそ迷いなく英瑠を寝台に引きずりこんだ。
彼ももしかしたら、先程の手合わせの最中、英瑠と同じく『ざわめいた』のかもしれない。

英瑠の中で、獣が低く唸りを上げた。
目の前の相手を屠ることと、愛すること。
戦場と寝台の上では、真逆ともいえる情熱に駆り立てられる。
だがその本質は似ている、と彼女は思った。
熱く、激しく、熱した鋼を体の中にくべられたような激情。
羞恥を押し流して激情に身をゆだねれば、世界のあらゆる雑事から断絶された時間に溺れて行く。

元々軽装備だった英瑠の戦装束は時間をかけて脱ぎ着しなければならないものでもなかったが、張遼はそれを脱がす手間さえ惜しむように英瑠の装備の隙間から手を入れ、衣服のさらに下へそれを潜りこませると、乱暴に彼女の胸元をまさぐった。

「あっ、ん……!」

普段の彼とは違う余裕のない手つきが胸の頂点を弾き、英瑠の身体に痺れるような電流が走る。
肌の露出した首筋に唇を落とされ、英瑠は背筋から這い上がる期待に身体を震わせた。
張遼はそのまま英瑠の太腿に手を伸ばすと、このまま強引に進めても良いかと問うようにそれを撫でた。
確かにこの性急さは、いつもの紳士的な彼からは考えられない。が、その荒々しさこそが昂ったものの残り火なのだと、英瑠にはよくわかっている。
彼女もまた、自らに宿る内なる獣を鎮めるためには、優しく宥めて撫でられるよりも、牙を立てられて噛み付かれた方が効果的だということを本能的に悟っていた。
だからこそ、張遼の望みに答えるように自らの手で下半身の装束をずらし、続きを乞うように彼の目をじっと見つめたのだった。
そして、甘い声で囁く。

「私が丈夫なのは文遠様もよくご存知でしょう……
手荒く扱っても、傷つくことなどありません。それどころか、むしろ……。
ですからどうか、このまま」

その言葉に息を呑んだ張遼は、誘うように太腿を擦り合わせる英瑠の脚を割って、素早く己の身体を割り込ませた。
彼もまた戦装束のままだったが、手早く腰帯を解くと、最低限の部分だけを寛げる。

「あっ……! っ……」

伸ばされた指に直に下半身を探られ、英瑠の口から切ない声が漏れる。
甘い痺れが身体を疼かせ、指でなぞりあげられた部分が既に潤んでいるのを彼女は自覚した。

「英瑠殿」

確かめるように名を呼ばれたのも束の間、彼の熱が英瑠に宛がわれ、強引に中をこじ開けていく。

「ぅ、あぁ……っ」

遠慮なく突き立てられた杭は英瑠の身体を抉り、まるで首筋に立てられた猛獣の牙のようにずぶずぶと沈んでいった。

ずっと待ち望んでいた、自分のものではない熱。
その荒々しさに、英瑠は頭の中がびりびりと痺れていくのを実感していた。

「文遠様、あぁっ……」

拒む色など微塵も無い英瑠の声に安堵したのか、張遼はそのまま彼女を揺さぶり始めた。
英瑠の甘い声が激しくなっていく。

胸の内に在る獣が、悦楽に打ち震え、のたうっていた。
言葉は少ないが、恐らく張遼もそうなのだろう。
彼は『炎』とやらに身体の中を灼かれ、行き場を失った熱を放出しようと、英瑠の身体を貪っていた。

「あっ、あっ、んっ……、や……ぁっ」

胸の膨らみは空気には曝されず、軽装備の鎧の下に収まったまま、張遼の手によって形を変えている。
力の篭った指先は痛みさえ感じさせるものだったが、元来痛みに強い彼女にとって、さほど気にはならなかった。
下半身は最低限の部分を露出しただけで、一糸纏わぬ姿とはほど遠い。
互いの肌の温もりにゆるゆると包まれるなどというぬるさは微塵も無く、ただ性急に事に及んだという印象だけが強い。

ここが寝台の上でなかったら――否、たとえ寝台の上であったとしても、見る人によっては、龍と呼ばれる半人半妖の女武将が、鬼神の右腕とも言うべき剛勇を持つ張という将に、無理矢理犯されているように見えることだろう。

だが実際はそうではなかった。
互いに纏った鎧のせいで取れる体勢が限られ、そんな状態でも半ば身体を押さえ込まれながら、がつがつと獣のように腰を打ち付けられてうっすらと涙さえ浮かべている彼女は、微塵も男を拒んではいなかった。

英瑠は、先程まで刃を交えていた相手に身体を開かれ、あられもない声を上げさせられているこの状況を、心底悦び、ただ欲しているのだ。

駄目だと思ってみても、彼の昂りは勝手に英瑠の肉を掻き分け、犯し、内側を擦って快楽を引き出していく。
奥を突かれる度に身体の芯から蜜が溢れ、意思とは関係なく声が漏れるのを抑えられない。
胸の膨らみを弄ばれて、もし他人にされたら反射的に斬り捨ててしまいそうなこの失礼な行為が、どういうわけか彼の手にされると脳を蕩かすほど気持ちが良い。

言葉も紡げないほど横暴なこの時間が、心底快感で、幸福だった。

――もし、彼もそんな風に感じていたら良いなと。

英瑠は狂った頭の片隅でそんなことを考えながら、切ない声を上げ続けるのだった。


***********************


張遼に組み敷かれた形になった英瑠は、彼の下で薄く涙を浮かべながら身を捩り、喘ぎ続けている。

それを見下ろす張遼は、相反する二つの感情に囚われながら熱に溺れていた。

理性では、こんな強引な抱き方をして心底申し訳ないと感じていた。
彼女は拒まないが、このような、欲に駆られた男に尊厳を踏みにじるような扱いをされては、正気に戻った時に心が傷ついてしまうことだろう。
彼女を手酷く扱いたいとは思っていない。
平素から、その涙どころか、僅かに悲しむ表情すら見たくないと本気で考えているのだ。

しかし一方で、本能は自分自身でも手に負えないほど、猛り、昂って暴走している。
己を受け入れてくれた彼女の好意に甘え、手荒く扱い、嬲っているこの状況を、心底悦んでいる。
後ろ暗い欲をぶつけ、普通の女ならば後々まで禍根が残りそうなこの酷い行為を、彼女はどこまで受け入れてくれるのだろうかという期待と甘えがある。
それは、正気であったら、ひどく醜いものとして自分の中から遠ざけていた類のものだ。
だが熱に浮かされたこの状況は、とてもじゃないが正気とは言いがたい。

矛盾する二つの感情が張遼を支配し、今では後者が優勢となって、ただ英瑠を貪り続ける有様なのだった。


戦の残り火である炎。
その炎は元々張遼にとって、一人きりで鍛錬に打ち込むことによって鎮めるのが一番平和的ではあった。
けれども今日は、ふとしたことから道を外れてしまったと彼は自覚する。
まず張遼が、滾ったものを抱えたまま、彼女の事を思い出してしまったのがそもそもの原因だった。
それぞれに役目があるとわかっていながら、宴の場から彼女――英瑠が早々に居なくなってしまったことに、彼は図らずも寂寥感を覚えてしまった。

そんな時、男の欲を鎮めるために用意された女が張遼に近付いてきた。
不覚にも女に熱を煽られ、足元が揺らぎそうになるも、彼はすんでのところでそれを振り払い、鍛錬に赴き、何とか正しい道に戻る事が出来た……と、その時の張遼は思っていた。
だが、そこに現れたのは他でもない、彼が何より欲した英瑠だった。

彼女はあろうことか、張遼と同じものを引っさげてやってきた。
鎮まらない熱。獣と称する、戦の残り火。血が滾り、発散しなければ眠れないほどの昂り。

彼女も自分と同類なのだと知ったとき、張遼は安堵するような、形容しがたい高揚感に襲われた。
刃を交える中、生き生きと武を振るう英瑠の双眸が、月明かりを反射してぎらぎらと輝いているのを見た時、張遼の中で燻る炎が何か別のものに飛び火したのだ。
――そして気付いた時には、彼女を抱き上げていた。


いきり立ったものを強引に英瑠に捩じ込めば、抵抗されることもなく呑み込まれた。
彼女は痛みに耐えている様子もなければ、男の暴力が過ぎ去るのを待つふうでもない。
恍惚とした表情で頬を紅潮させ、甘く喘ぐさまは、彼女もこの獣のような行為を悦んでいるのだと錯覚させる。

英瑠の肉体の丈夫さに甘え、体格差も考えずに乱暴に腰を打ち付ければ、彼女はそれを全て受け止めた上で啼き続ける。
彼女でなければ身体のどこかが壊れているだろう。
自らの欲の深さと、衝動の強さに目が眩む。


「文遠さま……っ、文遠、さまっ……! 駄目……っ!」

英瑠の悲鳴にも似た声で、張遼はふと我に返った。
限界が近いのか、軽く抵抗しながら身を捩った彼女は、張遼の激しい攻めから逃れようと懇願する素振りを見せた。
その力は決して獣のそれではなく、褥で乱れる女のものだった。

だが張遼は、決して逃がさぬと言うように英瑠の脚を抱え込み、彼女の奥をただ突き上げていく。

「文遠さまっ、あっ、本当に、もうっ……!! あぁ……っ!!」

「英瑠、殿……っ!」

嬌声がひときわ高くなったところで、逃げ場を無くした彼女は身体をビクリと跳ねさせると、声にならない声を上げて達していた。
それに呼応するように、張遼は英瑠の奥に勢い良く熱を吐き出す。

くぐもった声で僅かに喘いだ彼の背中を、英瑠の手が労るようにそっと撫でたのだった。


***********************


「…………すまぬ」

「謝らないでください文遠様。
お恥ずかしながら、その、私も望んでいたのですから」

心底申し訳なさそうにポツリと吐き出した張遼を、英瑠はこれまた心底ハラハラしたような顔で宥めた。

「……しかし。いくら何でもこれでは……まるで獣だ」

「……」

「……先程は、そなたの『獣』という言葉を卑下だと申したが……
何のことはない、まことの獣はそなたではなく私であったようだ。
欲に逸り、女人をこんな風に扱ってしまうとは…………」

「そんな。それこそ、御自分を卑下なさらないでくださいませ。
私は、獣のような文遠様もお慕いしております。
それに……、文遠様が獣だとおっしゃるなら、やはり私も獣です。
何故なら、獣のような荒々しい扱いをされて、悦んでいたのですから」

「…………英瑠殿は優しい方だ」

「っ、お世辞ではありません……!
文遠様は今の私が、ただの優しさからなすがままに文遠様を受け入れていたとお思いですか……?
そんなことは絶対にありません……!
むしろ、荒々しくされて、私の中の獣が少しは大人しくなってきたところです。

文遠様は、この獣のようなひと時を後悔してらっしゃいますか……?
今の行為に、まったく心地良さは感じませんでしたか……?」


「………………いや」

不安そうに零す英瑠の言葉に、張遼は言い澱んでから気まずそうにそれを否定した。
その答えは、彼女が発した二つの問いの両方に対するものであり、その横顔には、存外悪い心地では無かったからこそ余計に罪悪感と戸惑いを感じたのだと書いてあった。

「戦以外で私の猛りを鎮められるのは文遠様だけです……。
手合わせも、……『これ』も。
今宵は文遠様のお手で私の中の獣を宥めてくださって、とても感謝しております。
私も……文遠様の炎を少しは鎮めることが出来ましたでしょうか……?」

英瑠は冷めない余韻に頬を紅潮させたまま、いい加減寝台には似つかわしくない鎧を静かに脱ぎながら張遼に問いかけた。

「……ああ。存分にな。そなたが居なければ、この炎は鎮まらなかったであろう……」

「……良かった」

張遼もまた、寝台に腰掛けながら、中途半端になっていた戦装束を脱ぎ始めた。
それは、鎧を外して眠りにつくというよりは、もっと別の意味を含んでいることに、二人とも薄々勘づいていた。

「はしたないと自覚した上で申し上げますが……、その。
…………こんな鎮め方もあったのですね。
知らずに居た私は、毎度鍛練にばかり打ち込んでしまっておりました。
文遠様のお陰で一つ、新しいことを知ることが出来ました」

ぺろりと舌を出しそうな勢いで悪戯っぽい笑顔を浮かべながら述べた英瑠に、張遼はまるで、教えなくていい悪い遊びを調子に乗って後輩に教えてしまったあとの軽い後悔のような、バツの悪い顔を浮かべていた。
張遼は小さな溜息をつくと、軽く呆れたように言う。

「英瑠殿……。そなたは私が恐ろしいとは思わなかったのか」

一瞬だけキョトンとした表情を浮かべた彼女は、即答する。
「はい、全く。
むしろ先程も申し上げた通り、荒々しく手加減をされない文遠様も魅力的だと思いました。
その…………、お慕いしている方に強引にされるというのも、悪くないものですね。
今でも胸の高鳴りがおさまりません」

「……。そなたという方は……!
そのように申されたら、つい甘えてしまうだろうに」

英瑠は、張遼の至って真面目な様子に内心微笑ましさを覚え始めていた。
彼女は切なく疼く心と身体の余韻に浸りながら、彼にそっと身を寄せて密やかに、しかし一息に告げた。

「私で良ければ、存分に甘えてくださいませ。
……私も、文遠様に甘えて良いですか……?
今宵だけは、嵐のような文遠様に、私の中の獣を完全に鎮めてもらいたく思います……。
なにやら、まだ……完全に大人しくはなってくれないようで」

張遼の目が見開かれる。
彼は無言で英瑠の反応を伺っていたが、彼女がどうやら本気らしいと知って、心を決めたようだった。

張遼の声色が、低く、熱を帯びたものに変わる。

「ほう……これは奇遇だ。私も、炎がまだ完全には鎮まっておらぬ。
……ところでその獣とやらは、どの位で鎮まりそうか、英瑠殿」

そう口にしながら、彼は英瑠の遠回しな誘いに応えるように、その手を英瑠の頬に当てがった。
彼の親指は英瑠の返答を待つように優しく唇をなぞり、細められたその双眼には未だ消えぬ炎がちらついていた。

英瑠はもう、張遼への愛しさと期待で、身に宿った熱が勢い良く背筋を駆け上がり、脳内を侵食していくのを実感していた。
頬に当てられた彼の手の熱さが心地良い。油断すると、たがが外れそうになる。
彼女は張遼の手に自らの手を重ねると、自分から唇を寄せたくなる衝動をこらえて彼の問いに答えた。

「…………朝になれば、恐らくは」

口に出してからでは遅い。
動き出した獣は理性の働きを鈍らせ、容易く本音を紡いでしまう。
彼女が発した一言には、とてつもない意味が込められていた。
それは、一晩中獣を宥めて欲しいということと同義だった。
勿論、その意味に気付かない張文遠ではない。

「朝までと申したな。それが本音か英瑠殿」

「…………、いえ」

ずばりと返され、さすがに言い過ぎたと思った英瑠は身を引いて頭を冷やそうとしたが、既に手遅れだった。
寝台の上ですっかり戦装束を脱いだ張遼は、逃がさないというように英瑠の腰に素早く手を回し、欲の篭った眼差しを目の前の獲物に向けていた。

英瑠の身体がさらに疼く。達してからそう時間が経っていない自らの芯に、火が灯る。

「出来ぬと思っておられよう。
だが不眠不休で武器を振るう激戦に比べたら、随分容易いことだ」

英瑠は自分の不用意な一言が張遼に火をつけてしまったと気付きはしたが、しかし青くなるどころか期待している自分が居ることに気付いていた。
ゆえに、今しがたの発言に言い訳はしなかった。

「……さようですか」

「疑っておられるな。
英瑠殿、そのような態度は挑発と受け止める。
男の本能に火をつけるようなことをして、後で困るのはそなただぞ」

「…………。」

はしたないと自省する理性はあれど、もはやほとんど役には立っていない。
彼女は、自分の本音が顔に出てしまうのを止められなかった。

「……む、そのように嬉しそうな顔をしていられるのも今のうちと心得られよ。
あとで後悔しても遅いぞ」

英瑠はもう、己を隠すことはやめ、正直に彼の首筋に腕を回した。
無言で、ねだる。唇の端を蠱惑的に釣り上げて。

彼女は、張遼の最後通告とも言うべき念押しに、一つの行動でもって応えた。
ありったけの熱を込めて、自分から唇を重ねることによって。

英瑠の焦がれるような激情に煽られた張遼は、ようやく確認など不要だと悟ったのか、彼女に覆い被さると寝台に沈んだ。

今度は、自然な形で、互いの肌の温もりを感じながら。

唸りを上げる獣と燃え盛る炎は、こうして朝まで互いを鎮め合ったのだった――




翌日。

「張遼殿、英瑠殿。
何やら夜更けに物騒な、物騒な勝負をされていたとか……
係の者が怯えておりましたぞ。よもや痴話喧嘩ではありますまいな。
喧嘩に武器を持ち出すのはやめた方が良いかと。万一のことがあっては大変ですぞ」

唐突にあらぬ疑いをかけられた二人は、陳宮の小言に耳を疑い、しばし固まってしまった。
だが英瑠が口を開こうとした瞬間、先に口を開いた張遼の言葉に、英瑠の心臓は図らずも跳ね上がることになる。

「ただ共に鍛練をしていただけのこと。
……ふ、痴話喧嘩か。むしろその逆と言えましょうな」

何やら含みのある言い方に、英瑠はハラハラしながら張遼と陳宮の顔を交互に見やった。
だが鍛練という言葉尻だけを捉えた陳宮は、軽く呆れた声で会話を続ける。

「鍛練なら何も、何も夜更けになさらずとも。
鍛練に打ち込みすぎて、お二人とも疲れが取れていないように見受けられますぞ」

二人の様子を観察しながら述べる陳宮に、英瑠は痛いところを突かれたように気まずい気持ちになった。
だが、直後張遼によってさらに投下される爆弾に、英瑠は息が止まったような錯覚を覚えることになる。

「己を鎮めるための鍛練に精を出す必要は、もう無くなり申した。
……それよりも、もっと効果的な方法が判った故」

ちらりと英瑠に目を遣りながら、平然と告げる張遼。
陳宮には分からないその真意に気付いた彼女は、顔を真っ赤に染めて狼狽える羽目になってしまうのだった――――





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