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一話

「すみません!誰か居ませんか!」


そんな声が聞こえて、私たちはあの子の部屋のふすまを開けて顔を出した。


「大胆だなあ、おまえさん。捕らわれの身分で俺らを呼びつけるなんてよ。で、自分から声をかけてくるなんざ、そろそろ腹も決まったのか?」

「そうではなくて……私の話も聞いて欲しいんです。」

「恐らく、あんたの事情は汲めないだろう。それでもよければ話すといい。」

「う……」

「おまえの運の無さには同情する。ま、成仏してくれな。」

「ほら、男なら諦めが肝心だろ?」


えっと…もしかして本当に気付いていないのかな?この人たちは。

私は呆れたようにため息を吐いて目の前の男たちを退かすと、あの子の前に膝をついた。
心配そうに此方を見つめて揺れる瞳に安心してという風にニコリと微笑みかける。


『確かに事情も聞かずに人を殺そうとするなんて男子としても恥ずかしいことだよね。』


そう言うと平助が口を開いた。


「でもさあ、千華。そっちこそ男らしい態度取らなきゃだろ?オレらの事情を素直に受け入れればいいんだから。」

『でもこの子、男じゃないよ。』


私のその言葉に、平助は目を見開いた。
他の男たちも目を見開いて彼女を凝視している。
そして平助が確かめるように私に言う。


「もしかしてさ…………女、とか?」


私は立ち上がると、後ろにいる男たちを振り返って頷いた。
その瞬間、愕然とした雰囲気がその場に流れる。
例えるならそう、ガーンッ!ってショックを受けた感じだ。


「ちょ…………ちょっと待てって!」

「それは……その……えええっ!?」


平助と新八さんが信じられないという風に叫んだ。


「ま、確かにそんな感じだな。身体の線が女性的で柔らかいというか。」

『左之さん、その発言色々とヤバイよ。』

「そんなんわかるか!ふ、普通、女は袴なんて、はかねぇだろうが!」


私、はいてるじゃない。

視線で訴えると、新八さんは私から気まずげに視線を逸らした。


「女子でも薙刀や馬術の時に袴は用いるぞ。この者のように旅姿に男装をするのは珍しいが……身を守る処世術と言えなくもない。」

『まぁ、何かと男装の方が便利だからね。』

「なるほど……そういう事もあるかもな。いろいろ言って悪かった。」

「いえ……あの、では。」


私を見上げてそう言う彼女に私はニコリと微笑みかけた。


『うん。君の言うとおり、せめて事情くらいは聞いてあげないとね。』


同じ女なんだから、そこの所は気になるし。
だけどまだ、貴方に私が女だって言うのは黙っとこう。
面白いし。


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