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闇に際立つ白い月



「むっ···さ···桜···」



玉章の振り上げた刀の剣先が桜の花びらで埋め尽くされているのを不敵な笑みを浮かべながら見上げた。その桜、ちょーと細工がしてあって絡みついたら氷のように固まる仕組みになってるんだよね。


戸惑っている玉章のチラリと見てくるりと後ろを振り返ると私は思い切り息を吸った。そして···。



『しっかりしなさい!奴良リクオ!!』



夜雀の技で目が見えていないであろうリクオの耳元で大声を上げる。うむ、結構耳に響いたと思うよ。周りで戦ってた妖怪達も顔を顰めるぐらいだから。多分、耳がキーンってなってると思う。


うん、なんかいい仕事したね私。スッキリした。



「神夜、お前······」
『文句はあとで聞くから』



顔を顰めて何か言おうとしたリクオを制して私達に向かって振り上げられた玉章の刀を夜桜で受け止める。夜桜を持っている手とは逆の手でリクオを抱き寄せると、そのままトンッと軽く飛んで玉章と間合いを取る。玉章の刀、片手で受け止めたからちょっと片手が痛いかな!すっごくビリビリするかな!!


地面に着地してふぅ···と息をついて離れたところにいる玉章を振り返ろうとするとリクオが口を開いた。



「バカ野郎···引っ込んでろよ」



あ?何だって?



「ほっとけよ。お前の出る幕じゃねぇ···」



こ、このクソガキ!人が折角助けてあげたのにその言いぐさ!?とガツンと言ってやろうと思って口を開こうとしたらリクオはスッと立ち上がって玉章に向かおうとするので、私ははぁ···と溜息を吐いて先程言おうとした言葉を呑み込んでとりあえずリクオを宥めることにした。


言っても聞かないだろうけど一応ね。



『ちょっとリクオ!下がってなさいよ!私がちゃんと守るから······ね?それにあんた今夜雀の術にかかっててまともに戦える······』
「のけ。下がってろ」



こ、こいつ···。カッチーンて来た。もうあったま来た!!



『何カッコつけてんのよ!!あんたは今私が来なきゃやられてたの!!勝手に一人でつっこんで、もーー!!』
「え」
『せっかく!!駆けつけたのにあんたって奴は!!』



急に怒鳴った私に驚いているリクオを置いて私は夜桜を持つとカシャリと横向きに構えて目の前の玉章を鋭く睨みつける。


さっき夜雀に逃げられたから戦い足りないんだよね!!決して戦闘狂な訳じゃないけども!!



『さぁ!!私が相手よ!!』



「お···おい」私を止めるリクオの声が聞こえたがそんなの無視!!こっちは暴れたりないんだっつーの!!



『わかってるわよ!!隠神刑部狸!!刀だけの武器なら私に分が···』
「違う!!夜雀だ!!」



玉章に向かって走り出した私の後ろからリクオの声が聞こえた私は思わず後ろを振り返った。目の前には夜雀の顔。


こいつの事すっかり忘れてた!!



『くっ···桜の舞!!』



周辺に舞い散っていた桜が鋭く尖り夜雀に向かっていく中、私は夜桜を回転するように斬った。向かってくる桜を払い落とす夜雀は私の夜桜を避けると、バッと羽をはばたかせて一度距離を置いた。


何方も睨み合う中、動いたのは同時だった。飛ぶ夜雀に走る私。有利なのは飛んでいる方なのだが、こっちにも作戦はある。さっき一発貰ったし、氷麗の分も返してない。


薙刀を受け止めて睨み合うと、私はニヤリと口角を上げた。それに驚いたように目を見開く夜雀の背後には大量の狐火。



『さっきの一発、返すよ』



その言葉と同時に狐火がボオッと燃え上がりながら夜雀を襲うが、それを避ける夜雀。だが、それも想定済み。な・の・で、夜雀が上に飛び上がった隙を狙って私もトンッと軽く飛ぶと夜雀の目の前に姿を現す。


驚く夜雀を前に軽く鼻で笑うと横腹を蹴り飛ばした。


ドンッと大きな音を立てながら夜雀の体が地面にたたきつけられた。さっきの私とは逆の立ち位置である。だが、まだ一回だ。氷麗の分を返してない。


ふむ。もう一回か。そう考えて私もリクオと玉章の間に降り立つと同時に私の上に影が出来た。ん···?と上を見上げると夜雀の姿。



『しまった······!!』



気付いた時にはもう遅い。バサッと羽を動かしたのを聞いて、舌打ちをしながら目を隠そうとするとバサバサと大量の羽根が私を襲った。



『うわっ···!!』



思わずそれに気圧され、リクオの近くまで吹っ飛ばされる。


やばい···目の前が闇だ···。



「神夜···どうした?」



リクオの声に私は体を起こす。が、目の前が闇でリクオが何処にいるのか見当が付かない。


遠くでフンと鼻で笑った玉章の声が聞こえた。



「ふふふ···夜雀。お前は本当に···役に立つ女だな」



そんな狂暴な女、君は必要とする!?······て人の事言えねーわ。こっちも狂暴な部類に入るのか···ちょっと悲しい。


吹っ飛ばされた時に打った背中が痛む中、私は夜桜を片手に体を起こそうとするが目の前が闇で如何しようもない。



『くっそ······』



思わず悪態を吐いても体は思い通りに動かない。



「残念だな、奴良リクオ···。かぐや姫は僕がもらう。夜雀······違いを見せろ」



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