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リクオに学校で助けられた時、カナが私に身を預けている姿を見たリクオは踵を返して帰ろうとしていたので私はまだちゃんとしたお礼をしていないと気づき、カナを私から離して彼の後を追おうとして立ち上がった。
『待って!!あの···』
思わず走り出した時、足首がズキッと痛んで『うわっ』と転けそうになった所をリクオが私の手を取ってフワッと優しく受け止めてくれた。
『「·········」』
ほんの数秒私とリクオが見つめ合うとカナが「大丈夫!?」と慌てて駆け寄ってきた。カナが駆け寄ってきたのを見たリクオは私の足に目を向けた。
「足···ケガしてんのかい···」
その言葉に私はリクオに視線を戻すと彼はじっと私を見ていた。
あぁ···無理してんじゃねえって目で訴えてる。わかる、わかるよ私は。すっごい目で無茶すんなって言ったよな?って睨みつけてるよ。怖い怖い怖い。思わずリクオから目を逸らすと小さく溜息を吐いた彼はグイッと私を横抱きに持ち上げた。
『キャッ!!』
ヒイイィィ!降ろして降ろして降ろしてえぇぇぇぇ!
『あ、あの別に大丈夫なんでいやほんとに。おろしてくれるとありがたいなーって。
だからお願い降ろしてえええぇぇ!!』
早口にそう伝えるもリクオは聞いてくれない。私の声など聞こえていないという風に顔をカナに向けたリクオは「あんたは大丈夫かい?」と声をかけた。
無視しないでえええ!降ろしてええぇぇぇ!!
心の中で悲鳴を上げているとカナはこくんと頷いた。するとカナが肩から下げていた鞄がブルブルブルと振動しだした。
「ひええええ!?」
「『···』」
驚いて私にしがみついたカナを私とリクオは見つめる。カナが鞄の中からあの気味の悪い人形を取り出すとガーガーと音がなった。
そんな人形をリクオは物珍しそうに見ている。
〈どーなったー?無事かーー家長さーん〉
随分と呑気な声だな、おい。
カナは私から離れると後ろを向いて清継くんと会話を始めた。その隙を見て私はリクオの腕から降りると彼の後ろに隠れて金狐の姿へと変化する。
そんな私の姿を見たリクオの一言。
「オレに抱えられるのがそんなに恥ずかしかったのかい?」
人の羞恥心を恥ずかしげもなく口に出してニヤニヤ笑っているリクオを殴りたいと心底思いました←
リクオの足を踏んでやろうと少し足を上げようとするとカナがばっと振り返った。思わずびくっと肩を震わしてリクオの袖をつかむ。
するとカナはえ、なんでという顔をするので誤魔化すように曖昧に笑うと首を傾げながらも清継くんとの会話に戻ってくれた。
〈まさか···またあの方々に助けられたんじゃないだろうねー〉
「え!?」
〈いや···君ばっかり出会うからさー。まぁ無事ならいーけどね!〉
「私ばかり···?」
おい、ワカメ頭。変なこと言うんじゃねぇよ。通信を切ったカナは何か考え込むように暫く黙っているとバッと音がつきそうな程の勢いで私たちを振り返った。
「あの!!あなたたちって······ひゃっ!?」
カナの言葉が続く前にグイッとカナを引き寄せて横抱きにすると窓に足をかけた。
窓枠に足をかけてフワァッと飛び出すと学校の近くにある電柱にトンッと足をつけてまた飛び上がる。金色の髪と九つの尻尾が風に揺れた。
え?足は大丈夫かって?ええ、まあ。なんせ妖怪ですから?小さい傷ならすぐに治ります。牛鬼の時の横腹はすぐには治らなかったけど。
リクオが後を追いかけてきて隣に並ぶとカナが悲鳴を上げた。
「そ···空飛んでるーー!?」
『家におくるだけよ。こっち···よね?』
「いや···」
私の着物を握って反射的に出たであろうカナの言葉に私とリクオは首を傾げる。なんだなんだ。
「お願い···もうちょっとだけ一緒に···」
淡く頬を染めて上目遣いに私を見上げるカナ。
「あなたのこと······もっと、教えて下さい!!」
え···?思わず目を丸くした。
え、なんでこんなどこぞのラブコメみたいな感じになってるの。いや、上目遣いのカナは大変可愛らしいが。
ってそんなこと考えてる場合じゃない!!と心の中で突っ込んで私はチラリとリクオと目を合わせた。仕方ないなぁ〜。
『怖い思いしてもいいのね?』
「えっ?」