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そして場所は化猫屋の座敷。ワイワイとカナを真ん中に騒いでいるのをリクオと横に並び見る。周りが妖怪だらけのカナはジュースをドキドキしながら飲んでいた。


私は出されたお酒をリクオに注いでいる。まあ、あれだね。酌をしてるって方があってるかも。



「ひゃっひゃ〜姫も若もすみにおけませんな」
「こんな可愛い愛人連れて〜」
「若には姫がいるのにな〜」
「もー私、しっとしちゃうー」



そう言って腕に絡みつく猫女をリクオは引き剥がすと隣に座っていた私の肩を引き寄せてニヤリと不敵に笑いながら口を開いた。



「バカ言ってんじゃねえよ。オレには神夜こいつだけだ」



そんなリクオの宣言に私は飲んでいたお酒を思わず『ブッ···!』と吹き出してしまった。そんな私の反応にニヤニヤ笑うリクオとワアアと盛り上がる妖怪達。


こいつ、よくもまあ恥ずかしげもなく言えるわ。



「ささ、お連れ様もどーぞ。当店名物マタタビカクテル!!」
「お名前なんてーの?」
「カ···カナ···」
「いくつー?」
「12······じゃない。今日で13···」



マタタビカクテルを飲みながらそう言ったカナに妖怪達は盛り上がった。



「うぇえー!!誕生日ィ!?祝わなきゃー!!」
「てゆーかめっちゃ若いしー!!」



当たり前だ←



「で、何の妖怪なの?」
「え···?」



あ···これはマズイ。


一人の店員がそうカナに尋ねたのを見て、私はカナの耳元へと顔を寄せる。



『人間てバレたら後で喰われるかもよ···』



急に近づいてきた私に驚いたのかカナは淡く頬を染めながら肩を跳ねあがらせた。ドキドキとうるさい心臓を落ち着かせてなんて答えようか悩んでいるカナを私とリクオはニヤニヤと見つめる。



「かぐや姫」



一言そう呼ばれた私の名前。


リクオは「ん」と私の前に御猪口を出したので私は『はいはい』と溜息を吐いてから御猪口に酒を注いでやる。


お願いしますの言葉も言えんのか、この生意気坊主。


上機嫌でお酒を飲んでいるリクオを見ながら心の中で罵倒していると「この人形カワイー。どこで売ってんの?」と騒ぐ猫女の声に私は顔を向けた。猫女たちが群がっているのはカナの鞄。そして手に持っているのはあの薄気味悪い人形。


あれを可愛いだって?君たち、目大丈夫?


私はあれを見た瞬間どこの呪いの人形だよとか思ったんだけど。


ワイワイ盛り上がっているみんなの様子をリクオとお酒を飲みながら見ていると「若!!姫!!」と私達を呼びながら暖簾から顔を出したのは良太猫。



「来てくれてたんですかい!!」
「うまくやってるみてぇだな、良太猫」
「まかして下さい!!旧鼠がいなけりゃ···きちんと人と妖怪わけられますから!!」



そんな良太猫の言葉に私はチラリとカナに視線を向ける。


カナは今周りの人たちにマタタビカクテルを勧められて飲んでいるが···あの子未成年だよね?大丈夫かなぁ···。いや人のこと言えないんだけど。



「それよりどーです?これ!!うちの組といえば百鬼花札···!お手合わせ願いたいっすねぇ!」



そう言いながら取り出したのは花札。笑顔で私たちに勧めてくる良太猫に苦笑いをしているとリクオが笑いながらそのお誘いを断った。



「やめとくよ···良太猫はギャンブルに熱すぎるってきくしな」
「誰です、そんなこと言ってる奴!!」



身を乗り出して噛みついてきた良太猫に私は小さくフフッと笑うと視線をカナへと向ける。



『あんまほっといて熱中するわけにいかないしね···』



視線の先のカナは周りの店員たちと一緒に遊んでいるところだった。ワイワイと盛り上がっている一角を微笑ましそうに見つめている私の視線の先を良太猫とリクオが追いかける。納得したようにリクオが頷くが良太猫は訳が分からないという風に首を傾げてカナを見つめた。


それから数分するとカナはすっかりと夢の中に入ってしまった。


そんなカナの傍には何杯目かわからいマタタビカクテル。「う〜んねこさん、マタタビおいしいよぉ」と寝言を言っているカナを見ながら良太猫が「この、家どこですかねー?」と尋ねてきた。それを耳にして私はカナを背負う。



『いい···わかるから。小さい頃からよく行ってるから···』
「え?」



驚く良太猫を横目にリクオが私の隣に並んだのを見てお店のドアを開けて暖簾をくぐる。外まで見送りに来てくれた良太猫がそんな私達を見ながら目を見開いて声を上げた。



「え···まさか人間の娘だったんですかー!?」
「『············』」



「妖怪の巣に連れて来るなんて嫌われますよ〜」嘆いている良太猫を私とリクオは目を細めてあきれたように見つめる。


あんたさっき「きちんと人と妖怪わけられますから」とか自信満々に言ってなかったっけ···。


そんな意味を含んだ私達の視線を気にもせず驚いている良太猫に私ははぁ···と深く溜息を吐くとリクオと一緒に足を進めた。



『いいのよ、怖がらせた方が』
「ホ」



間抜けな声を出した良太猫にクスッと笑みを浮かべてその場をリクオと一緒に立ち去った。



「神夜、これでよかったのか?」
『ん?なにが?』
「カナちゃんのこと」



カナの家への帰り道。背中で静かに寝息を立てているカナをチラリと見てリクオが口を開いた。そんなリクオを一瞥して落ちそうになっているカナを背負い直す。少しだけ冷たい風が頬を撫でた。


あんなところに連れて行ってもよかったのかって言いたいんだろうな、リクオは。



『いいのよ···これで』



むやみやたらにこっちのことを知る必要はない。


それから静かにカナの部屋の窓を開けベッドにカナを寝かせると彼女の頭を一撫でして私とリクオは本家への帰り道を歩いた。


道を照らす月を見上げて私は目を細めた。母が私にあの言葉を言った日も私が想いを閉じ込めた日も月は綺麗に輝いていた。



「なあ···あんたは何をおそれてる?」
『は?おそれてるって何よ。私は何もおそれちゃいないわ』
「嘘だな」



確信をつくようなリクオの一言に思わず歩みが止まった。私の一歩前で歩みを止めたリクオはその紅の瞳で真っ直ぐに私を射抜く。


ああ···なんて綺麗なのかしら。何も知らず無垢な瞳。ねえ、リクオ。もしあなたがおじいちゃんと母のことを知ったらどうする?私と同じ様に想いを封じ込める?それとも───。



「なんで神夜はそんなに悲しそうな顔をするんだい?」



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