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笑顔のなくなった試合。楽しさを微塵も感じさせないプレー。合わさることがなくなった拳。背を向けた背中。
「羽月。ここを痛めてしまったみたいなんだが手当てを頼んでもいいかい?」
「羽月、オマエの今日のラッキーアイテムはこれなのだよ」
「琴葉ちん、お菓子ない〜?」
「琴葉ちゃん!今度ここ一緒に行かない?」
「琴葉っち〜、今のオレのプレー見てた?カッコよかったスよね!?」
「おい、琴葉。昼寝に付き合え」
大好きだった笑顔は今は隣にはない。
誘ってくれていたーー近くにいてくれた彼らに背を向けたのは私だ。
私は彼らを変えようとしている彼についてきた。
だからーー一緒に…………前のようにみんなで楽しくプレーできる日を夢に見てる。
原作を知っているから、彼がみんなを変えてくれることを知ってる。赤い光に出会って、がむしゃらにバスケをして、キセキの世代を変えてくれるのを私は待つことにした。いや、待つしかなかった。
原作を知っていながら、私は何もできなかった。一回目の転生。そしてこの世界へのトリップ。
私はーー何もしなかった。
誰にも行き先を言うことなく、私は彼と同じ高校を受験した。
「琴葉さん」
そして、影の彼にも告げずに私はーー中学卒業後すぐにアメリカへと旅立った。高校は事情を説明し、休学中。そこで赤い光の彼と出会った。
「オマエ……日本人か?」
彼は本当に私の幼なじみと似ていた。
楽しそうにバスケをする彼はーー最初に才能を開花させてしまった彼に似ていてーー
彼がこの人と一緒にキセキの世代を倒すと言ったのが何となくわかってしまった。
その彼が日本に行くと言ってから数ヶ月。私は日本の学校が夏休みに入った時期に日本へと帰国した。
まぁ、誰にも知らせずに帰国した結果ーー今怒られてます。
「琴葉さん。ボクは入学式にあなたがいると思っていました。けどあなたの姿はなかった」
『はい…』
「今までどこにいたのかと思えば……アメリカですか」
『はい…』
「しかも火神君とも知り合いだと」
『はい…』
「ボク、桃井さんや青峰君たちから連絡きて、どう返せばいいかわからなかったんです。ボクもあなたの居場所を知らなかったから」
『はい…』
「アメリカですか???」
『アメリカです…』
怖い……!!
夏休みが明けて、始業式に顔を出せば終わった瞬間即効でテッちゃんに連れ出された。
花壇に座る私と、目の前で仁王立ちするテッちゃん。しかも黒オーラ満載でとてつもなく怖い。
「おい、黒子!テメェ、なんで急に……って琴葉?」
あぁ、会えて嬉しいよ。大我。でもね、今は会いたくなかった〜。
「なんで日本にいるんだ?」
『帰ってきたんです…』
「ふ〜ん。うおっ!なんだよ、黒子!」
「いえ、ちょっと腹が立っただけです」
理不尽にぽこぽこと背中を叩かれている大我には悪いけどーーこの隙に私はダッとそこから走り出した。目指すは職員室!!!
「あ?おい、琴葉!」
「火神君のせいで逃げられてしまいました……」
「オレのせいかよ!?」
「火神君のせいです」
大我ごめんね!私のために犠牲になってーー!!
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