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「琴葉ちゃん?」
『はい…』
「私が言いたいことわかる?」
『はい…』
「なあに?」
『えっと…勝手にアメリカに行ってごめんね?テヘッ』
「可愛いぃぃ〜〜!!!」
「「「そうじゃねぇだろ!!!!」」」


クソッ。やっぱりこの野郎共は無理か…!!

テヘペロっと舌を出して謝れば、怖い顔をしていたさつきはすぐにパァァッと表情を変えて抱きついてきたが、周りにいたキセキの世代は騙されてくれなかった。

全く……さつきみたいに純粋じゃないから困る、このバカ共は!


「桃っち、そういう話じゃないっスよ!」
「そうださつき!確かに今のは可愛かったけどよ!」
『ありがとう』
「おう」
「「「ちがぁぁう!!!」」」


チッ。思わず舌打ち。

ていうか、あんなに仲悪かったくせに仲良しかよ。仲良しこよしかよ、キセキの世代。(若干キャラ崩壊してるやつもいるけれども)


「なんで琴葉っち、オレらに何も言わずにアメリカに行ったんスか!?」
『ん〜っと、まあ言わなくてもいいかな〜?みたいな軽い気持ちで…』
「羽月??」
『本当にすみません。私が悪う御座いました』



赤司君の真っ黒な笑みにスライディング土下座した。くそこわ。


『いや…なんかちょっとほら…気まずかったじゃない?あの時は。だから言うに言えなくて…』


本当は日本で彼らを見ているのがツラくて逃げたのだが、そんなこと言えるはずもなく。
結局はまたこうやって言い訳をする。


「それでも、琴葉ちゃんと突然連絡が取れなくなった私たちの気持ちもわかってほしいな…」


うるうるとした瞳が揺れる。
私はさつきの目を見れなくて、罪悪感にいっぱいになりながら目を背けた。あの時とーー同じように彼女の目から逃げた。


「心配したんだ、僕たちは」


赤司君が目の前に膝をついて、私の頭を撫でる。
紫原君も大きい巨体を折って下から私を覗き込んだ。おい、上目遣い可愛いな。


「オレたちすげ〜琴葉ちんに連絡したんだよ。それでも電話は繋がらないし」


国際電話にしてないからね。


「唯一行方を知っていそうな黒子に聞いてもわからずじまいだったのだよ」


テッちゃんにも言わなかったからね。


「黒子っちから同じ誠凛を受験したって聞いた時も驚いたけど、入学式から見かけないって言われたときは本当にビビったんスよ?」


春休みにはアメリカにいたからね。


「オマエ……オレらに何か言うことは?探し回ってもいねぇし、連絡つかねえしで、どんだけオレらが心配したと思ってんだよ」


そうか、探し回ってくれたのか。


『うん。何も連絡せずにアメリカに行ったのは本当にごめん。訳は言えないけど…でもまた帰ってきたから』


逃げていた目を戻してひとりひとりの顔を見る。


『赤司君、紫原君、緑間君、黄瀬君、青峰君、さつきもーー心配かけてごめんね』


私の謝罪にみんなは顔を曇らせた。笑って頷いてくれる所だろう…本当なら。だけど私は彼らを本当に"呼んだわけではない"。
中学の頃の私は、彼らをもっと違う呼び方で呼んでいた。

赤司君は征ちゃん。紫原君はあっくん。緑間君は真ちゃん。黄瀬君は涼ちゃん。青峰君は幼なじみだったから大輝かーーもっと親しく大ちゃん。

だけど、私は今の彼らを前のようには呼べない。いや、呼びたくない。

何か言いたそうに顔を歪める彼らにニッコリと笑って私は言った。


『心配かけたのは本当に謝る。けどね……何も全員集合しなくてもよくない?


緑間君と黄瀬君と青峰君とさつきはわかるよ?近いもんね。けどね、赤司君は京都だしーー紫原君なんて秋田じゃん。
何もわざわざ戻ってくる必要なかったよね?みんな私のこと大好きかよ。


「何言ってんスか!琴葉っちが帰ってきたんスよ?集まらない道理はないでしょ!」
『道理って使い方合ってる?』
「みんな、羽月に会いたくて集まったんだよ」


赤司君の言葉に私はぐっと押し黙った。
そしてーーはぁ…とため息を吐いて、私はみんながよく知る羽月琴葉の笑顔を浮かべる。


『ただいま、みんな』
「「「おかえり、琴葉」」」


あぁ、彼らのこれからをちゃんと見届けなくてはーー


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