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海上を進む豪華クルーズ客船『アフロディーテ号』のデッキから、蘭とコナンと花恋は夕日を眺めていた。
広いデッキには、三人と同じように乗船記念にもらったウインドブレーカーを着込んだ乗客たちが、思い思いに美しい景色を楽しんでいる。
真っ赤な夕日は空と海を茜色に染めながら、ゆっくりと水平線に沈んでいった。


「きれいだね······」


手すりにもたれるコナンと花恋が「うん······」うなずくと、蘭は潮風になびいて頬に張り付いた髪をそっと払った。


「こんなきれいな夕日、蓮華と新一にも見せてあげたい······」


コナンと花恋が驚いて見上げると、蘭は優しい表情で夕日を見つめていた。
夕日に再び目を移した花恋とコナンが、フッ··と微笑む。


((······見てるよ······))


すると突然、蘭が花恋とコナンを抱き上げた。


『うわっ!』
「な、何!?」

「上からの方がよく見えるよ」


ニッコリと微笑む蘭に、コナンと花恋は「う、うん······」と複雑な笑みを浮かべた。


(確かによく見えっけど······情けねぇ格好······つーか蓮華と顔近ぇ···)
(確かによく見えるけど······情けない格好······てか新一と顔が近い···)


女子高生に軽々と持ち上げられてしまう自分の姿とお互いの顔の近さに恥ずかしく思っていると、


「あ〜!!」
「見たぞ、コナン!花恋!」


歩美、元太、光彦が指をさしながら駆け寄ってきた。
後ろには園子もいる。


((やべっ!/やばっ!))

「『お、下ろして、蘭姉ちゃん!』」


コナンと花恋は体をジタバタさせ、無理やり蘭の腕から逃れてデッキに下りた。


「見ましたよ!また蘭さんに甘えてましたね」
「バーロォ、ンなんじゃねーよ!」
『しかもなに、またって!』


ニヤニヤと笑う光彦に、コナンと花恋は頬を赤くしながらそっぽを向いた。
すると、歩美がコナンと花恋の顔をのぞく。


「顔、赤いよ、コナン君、花恋ちゃん」

「な、何言ってんだ!夕日のせいだよ!」
『な、何言ってんの!夕日のせいです!』


コナンと花恋の言葉に、蘭は「え······」と驚いた。
蘭の頭の中に、小学生の黒瀬蓮華と工藤新一がふいに思い浮かぶ。



「何言ってんだ、夕日のせいだっつーの!」
『何言ってんの、夕日のせいですー!』



夕日を浴びた蓮華と新一が、頬を染めながら振り向いて言ったセリフ───。


「······のときと同じ······」


蘭が微笑みながらつぶやくと、そばにいた園子は「え?何が?」とたずねた。
その声にコナンと花恋が振り返る。


「ううん、何でもない」
「何よ!教えなさいよ!」
「何でもないってば」
「何でもないわけないじゃない。ニヤニヤ思い出し笑いなんかして」


不服そうに顔をのぞき込む園子に、蘭はアハハ···とあいまいに笑った。
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