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秋もすっかり深まった十一月上旬の日曜日。
阿笠邸の表に止められた車の前で、コナンと花恋は同級生の歩美、元太、光彦、灰原と阿笠博士が出てくるのを待っていた。


「おせーな、博士······」


サッカーボールを手に持った元太が口をとがらせると、


「また、免許証が見つからないんじゃ······」
「いつもそーだもんね」


光彦と歩美もあきれた顔でつぶやいた。


「はやくしないと、サッカー教室に遅れちまうぞ!」
「せっかく抽選で当たったのに〜!!」


今日は米花スポーツランドで米花市とJリーグ、日売りテレビが共同で主催する『子どもサッカー教室』が行われるのだ。
阿笠博士がコナンたち六人の名前で応募して、みごと抽選に当たったのだが、阿笠博士が家からなかなか出てこない。


「本物のJリーガーに会える機会なんてめったにないのに······」


元太と歩美の間に立った光彦が顔をしかめた。
子どもサッカー教室にはJリーガーが来ることになっているのだ。
歩美の横に立っていた花恋は、イライラしながら阿笠博士を待ちわびている三人を見てコナンと顔を見合わせて苦笑いをした。
そしてチラリと後ろを見る。
コナンたちの背後には、スピリッツの帽子をかぶった灰原哀が車の助手席のドアにもたれていた。
彼女の本名は宮野志保。
幼いときに亡くなった両親が黒の組織に所属する科学者だったことから、組織の仕事に関わり、コナンと花恋が飲まされた毒薬『APTX4869』を開発した。
ところが、ある事件をきっかけに組織に反抗し、自ら命を絶とうとしてその薬を飲んだところ、コナンと花恋と同様に体が縮んでしまった。
組織から逃れた彼女は、雨の中、新一の家の前で倒れているところを阿笠博士に発見されたのだ。
そして、今は組織の目を逃れるために、小学生になりすまし、博士の家に住んでいる───。
花恋の視線に気づいた灰原が顔を上げた。
何よ?と言いたげに花恋を見つめる。


「あっ、出てきました!」


光彦の声に振り返ると、玄関のドアが開いて阿笠博士が出てきた。


「すまんすまん。免許証がなかなか見つからなくてのぉ」
「ほら、やっぱり!」


予想が的中した歩美が得意げな顔をする。


「まったくよぉ、ボケちまったんじゃねーのか?」
「しっかりしてくださいよ」


元太と光彦が口々に文句を言うと、阿笠博士はハハッと頭をかいた。
阿笠博士は小さくなった新一と蓮華のためにユニークなメカを作ってくれた発明家だ。
キック力増強シューズ、犯人追跡メガネ、伸縮サスペンダー、時計型麻酔銃、蝶ネクタイ型変声機、ターボエンジン付きスケートボードなど、コナンと花恋が身に着けているものはほとんどが阿笠博士の発明品で、その中でもとりわけ二人のお気に入りがボール射出ベルトと伸縮弓矢だった。
バックルのボタンを押すと、サッカーボールが膨らんで飛び出す超スグレ物だ。
しかし、残念なことに、ベルトから離れて数秒経つとすぐにしぼんでしまう。
伸縮弓矢はボールペンの天ピス(ふたの部分)を押すと、たちまち弓矢にかわる超スグレ物だ。


「博士の発明品はどれもどっか抜け気味なんだよな······」
『同感······』


二人が不満そうにつぶやくと、


「何ぶつぶつ二人で言ってるんですか?」


後部席のドアを開けた光彦が不思議そうな顔をした。


「行くよ、スポーツランド!」
「グスグスしてっと置いてっちまうぞ!」


歩美と元太が声をかけ、後部席に乗り込んでいく。


『あ、うん』
「お、おう!」


二人は駆けだして、後部席に乗り込んだ。
灰原が助手席に座ると、阿笠博士はエンジンをかけ、ようやく車が走り出した。
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