頬を掠める残像 薫千(薄桜鬼)


おいで

どこからか声がして、
その声の主を探そうと私は辺りを見回した
でもそれらしき人はどこにも居なくて

問いだせば返事をしてくれるかもしれないと思い、
誰、と聞こうとしたのだが、何故だか声が出ない。

そういえば、ここはどこなのだろう
なんだか懐かしいような、落ち着く匂いのする、場所。
いつか、見たことがある・・・?

そんなぼんやりと今の状況を考えているところに、不意にまたあの声がする

「千鶴」

先ほどの声の主と同じ声。

「…誰、なんですか」

やっと、声が出た
すると、その人は予想通りに返事をしてくれた

「俺だよ」

優しい声
しかし俺、とだけ言って名乗ってくれはしなかった
返事と同時に後ろから優しく抱きしめられる感覚がした
きっと、抱きしめたのは優しい声の主だろう

覆われた背が温かい。しかしどこか寂しい冷たさもあって、
腹回りに回された腕に手を添えてみる
この人からも、懐かしい匂いがする

知らない人らしき者から抱きしめられているのに、私は反抗しようとは思わなかった。
何でかはわからない。だけど・・・とにかく言えることは嫌悪と恐怖を微塵に感じなかったから。


「かお、」


私は記憶から消えそうな、忘れてしまいそうな、人の名前を言おうとしていた

「じゃあね」

突然別れを告げられる
優しい声の主は私に回した腕を解き、私を解放した

そうだ、
別れを告げられ、やっと全て思い出した
私は息を荒げ咄嗟に叫んだ

「薫!!」





そこで夢は終わった










title...Aコース様




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