魔法少女と朝



ピピピピピ…


静かな部屋に携帯のアラームの音が鳴り響く
頭まで布団をかぶって寝ていた京子は先に手だけを布団から出して慣れた手つきでアラームをとめる。


頭を出して時間を確認すると、朝の5時
起きるのにはまだ大分早い時間だ。


鬼灯に起こしに来るとは言われていたが、そこまで面倒をみてもらう訳には行かないと思い早めに起きようとアラームを仕掛けておいたのである。

日本人は働き者だからもしかしたら凄く早くから行動するのかもしれないと思ったが、さすがにここまで早くはなかったようで安心した。


元々朝には弱く、なかなか起きられないタイプなのだが昨日早く寝たおかげでスッキリと目覚める事ができた


京子はベッドから降りると投げっぱなしのトランクを開けて、身支度を始める
身支度と言っても化粧などする訳ではないので顔を洗って歯を磨いて着替えて髪を整えるぐらいである。


そういえば服装など決まっているのだろうかと思ったが特に何も聞いていなかったので、持っている服の中で割と落ち着いた感じの黒を基調としたワンピースを着ることにした。

本当はいつも着ていたローブの方が着慣れているのだが、いかにも魔女ですとアピールするのもどうかと思って着るのは止めた。
サタン様に頂いた服やリリス様に沢山買ってもらった服など、当分着回すのには困らなさそうだ。

まぁ、制服などあったら一番助かるのだけど…


トランクの中を整理していると、ドアをノックする音が聞こえた。
時間は丁度6時を指している
いつもの私なら到底起きてはいないだろう
やはり早めに起きて正解だったようだ。

「はーい」

扉の外に居るであろう人物に返事をすると、ドアがガチャリと開く。


「おや、随分と早いですね」


既に身支度を終えている京子を見て鬼灯が言う。


「昨日たくさん寝たので、早起きできました!」

「そうですか」


身支度を終えた京子を連れて鬼灯は食堂へと向かった。
中に入ると時間が早いのもあってか、食堂で働く獄卒が居るだけで他の獄卒は見当たらなかった。

京子は壁に貼られているメニューを見たり、初めて来る食堂に落ち着かなさそうにキョロキョロする

「食事は基本ここで取ってください」

「分かりました」


先に朝食を注文する鬼灯。それに続いて京子も無難に同じ物を注文した。
食堂の従業員にジロジロと物珍しそうに見られたのでニコっと笑いかけると顔を赤くさせて奥に引っ込んでしまった。

「……?」

京子は何かしてしまったのだろうかと首を傾げる。

「気にしなくて良いですよ」

一連の流れを隣で見ていた鬼灯が口を開く。




別の従業員からお盆に乗った朝食を受け取り、鬼灯と向かい合って座る。
お盆の上には卵焼きに味噌汁にご飯、といかにも日本の朝食が並んでいた。


「わぁ、美味しそう!」

「いただきます」

「い、いただきます」

手を合わせる鬼灯の真似をして京子も手を合わせる。
昨日、おにぎりしか食べてなかったのもあって朝早くにも関わらずお腹が空いていたようで、甘い卵焼きが凄く美味しく感じた。


「地獄の食事は口に合いますか?」

「はい、とっても美味しいです!」


箸を進める京子を見つめる鬼灯。


「箸使うのお上手ですね」

「日本に来る事が決まってから練習したんです」



ぽつりぽつりと会話を交わし、二人共もくもくと食事を続ける。
食べ終わる頃には、もう何人かの獄卒が食堂に居て鬼灯と食事を取る見知らぬ外国人の少女に視線が集まっていた。

「さて、行きましょうか」

「はい」


集まる視線に耐えきれなくなってきた所だったので助かったと思いホッとした。
鬼灯の後ろに隠れるように、食堂を後にする。

「朝礼で京子さんの事は皆さんに紹介しますので。しばらくは注目されると思いますがじきに無くなりますよ」

「大丈夫です。この見た目のせいで、そういうのは慣れてますから」

京子は髪の毛の毛先に触れる。一瞬、顔を曇らせたが次の瞬間には笑顔に戻っていた。
鬼灯は特にそれに触れる事はなく、閻魔殿の廊下を歩いた。

「まだ時間がありますので、部屋で待ってて下さい。また迎えに来ます」

「分かりました」


鬼灯と別れ自室に戻ると、京子は殺風景で何もない部屋に家から持ってきたヌイグルミや本を並べたりして時間を潰す。



鬼灯と行動を共にする銀髪の美少女の噂が早くも獄卒の間で広まっている事を京子は知る由もなかった。



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