変わり者の嵐
[ name change ]
「うっくーん!!」
大声で誰かを呼びながら1人の少女が走っている。
見なかったふりをしようと思ったのだがなぜか彼女は僕のもとに向かってくる。
もしかしてうっくんとは僕のことだろうか。
「ひっさしっぶりー!!」
僕のもとに来た彼女はほとんど息を切らしていない。
「久しぶりだね。……ところで君は誰かな?」
この少女に見覚えがない。
「えっ!うっくん酷い!!私だよー。名前だよー」
久しぶりと言ってきたし、こう言うのだからたぶん僕とこの少女は知り合いなのだろう。
ほんとに壊滅的な記憶力だ。
「少し時間貰えるかな?」
「いいよん。そして思い出してよ。
私のことまで忘れちゃうとなるとうっくんの記憶力も凄いね」
褒められたのか貶されたのか。ここは後者だろう……。
名前……名前…………
あぁ!!
「思い出してくれた?私のこと忘れるとか酷いよー」
「ごめんね、名前ちゃん。今日はどうしたの?」
「えっとね、うっくんに愛の告白をしに来たの!!」
……これはスルーでいいだろう。
「そういえば、なんで名前ちゃんは僕のことをうっくんって呼ぶんだい?」
「はぁ。前にも言ったんだけどなぁ」
ため息をつき、さもめんどくさそうに彼女は続ける。
「壊滅的な記憶力の持ち主であるうっくんだから仕方ないか。
みんなうっくんのことをいーたんとかいっくんとかって呼ぶから。“い”は“うの上”でしょ。だから“うっくん”」
「名前ちゃんはひねくれてるね」
「変わってるって言ってほしいなー。
うん。で、話を戻して、私はうっくんに愛の告白をしに来たんだっ!!」
「ふーん、そう」
「反応が冷たいよー。うっくん、好きだよ」
「真っ赤な嘘をありがとう。……戯言だけどね」
「もうっ!そこは真っ青な嘘って言ってほしいよ!」
「用はそれだけ?」
「うん!これだけ。じゃあねっ!!」
そう言って行ってしまった。
嵐のような子だ。
結局、何がしたかったのだろう。
というより、彼女はいったい何者なんだろう。
(はぁ……、本気だったんだけどなぁ)(まぁ、うっくんとはあの関係がちょうどいいか)