傍
[ name change ]
「出夢ー!」
叫びながら名前が僕のもとに駆けてきた。
そして息を切らせながら「よかったぁ。出夢であってたー。久しぶりー」と言った。
僕は「ぎゃはは。久しぶりーー」と答えた。
僕と名前が出会った経緯は単純といえば単純だ。簡単といえば簡単だ。そう、理澄だ。
姫織は食い倒れてる理澄に食事を与えてくれた。それも1度じゃなく、何度もだ。
そのうえ、理澄の奇行をなんとも思わず仲良くしてくれた。
だから、こっちの世界の住人かといぶかしんだこともあったがまったくの一般人だった。
さすがにここまでしてくれて僕が出ていかないわけにもいかなかった。
「ぎゃはは!おねーさんが理澄を助けてくれた奴?」
「!! 突然だなー。ビックリしたよー。
あなたが理澄ちゃんのお兄ちゃん?初めまして。よろしくー」
これが僕と名前との出会いだった。
「……む。……え、いず……。ねぇ!出夢ってば!」
「ん?あぁ、ごめん。僕ってばちぃぃっとぼうっとしてたぜ」
「ひどっ!でさ、出夢、どっか行こ!」
「いや、いいや」
「えー!出夢のいけずー」
文句を言いながらも名前は僕の後をついてくる。
名前は“匂宮”がどういう意味を持つのかなんて知らない。
今までたくさん人を殺してきた僕だが名前の傍にいたいと思う。
……あぁ、そうか。僕は名前が好きなのか。
ということは、僕は理澄が担当してた《弱さ》を獲得できたのだろうか。
たぶん、こんな気持ちになるのだから、できたのだろう。
もういいか……。
「なぁ名前。僕、名前のこと好きだぜ」
「……っっ!!ありがとっ」
名前は照れたように笑った。
(私も出夢のこと好きだよ)(あっ、違う。ごめん、嘘)(大好きだよ)