「友達」でも油断しないで
「あ、坂田じゃん」 「あ?」
久しぶり―と校舎裏の日陰で寝そべっている友人に声をかける。
「あれ、高杉は?」 「知らね」
という事は今日もサボりだろうか。 全くわかりにくくてわかりやすい奴だ。
「ね―坂田―」 「あんだよ」 「私、彼氏できるかも」 「はあ?」
やる気のない態度は相変わらずだけど表情は驚きを隠せない、といったふうだ。
「昨日告白されてさ、どうしようかなって」 「馬鹿だろお前馬鹿だろ。そんな軽はずみで付き合ったら馬鹿の極みじゃね?つーかどうせなんかキモい根暗なヤツだろ」 「うるさいよ馬鹿。残念ながらイケメンです―」 「そういうヤツに限ってとんだインチキ野郎だからな、地獄落ちるぞ」 「お前が地獄落ちろ」
しばらく言い合いをして思いの外エネルギーを使った私達はだんまりになった。
「…別にさあ、誰と付き合おうがいんだけどよ」 「うん」 「ついこの前までお前俺のこと好きだったわけでよ」 「うん」 「俺がフッたからその辺はアレだけど」 「うん」 「…俺、一人になっちまうだろ」
ぽつり、と坂田が言ったとき私はそれまで空を見ていた視線を坂田へ向けた。
「お前だけ、俺を冷やかさないでここにいてくれるの」 「坂田…」 「お前がいるからこんなとこにいるけどもしインチキ野郎と付き合ったら俺学校に行かなくなるわ」 「や、それは大袈裟な」 「本当だよ」
その優しい視線は今この瞬間、私にだけ向けられてるもので以前の私やほかの女子ならこんなに嬉しいことないのに今の私には此方まで切なくなるような悲しい目にしか見えない。
「全部、本当」 「…っ」
何も言えなくなる。 たかが学年の同じ男子に告白されただけなのに坂田の気持ちが重くてこのままだと支えてやりたくなる。
「坂田、私は次に進みたいんだよ」 「はっ、次に進みたいってなんだよ」 「このままだと坂田を諦めれなくなりそう」 「………」
世の中ある意味上手く回っているのだろうか。 私は坂田を好きで坂田は高杉を好きで高杉は、
「なんで俺、女を好きになれないんだろ―な」 「本当ね。勿体ない」
なんて言っても坂田の気持ちを知った今じゃ同性より理解しあえる仲でありそこから恋愛なんて生まれないけど。
「お前が男なら良かったのに」 「はは、まあこれからもマブダチでいよーよ」 「マブダチって古くねーか?ニコイチとかじゃね?」 「変わらないでしょ、多分」
で、私は昨日告白してくれた高杉になんて返事をしようか。
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