東雲様より:恋に落ちる三秒前
気が付けば、私の目の前に居たはずのチャラチャラした男は視界から消え失せていた。
その代わりにストローハットを被った青年がニコニコと笑顔で私の手を握りながらそこにいた。

「平気かいお嬢さん、何処か怪我とかしてない?」
「え、えっと、あの…」
「あぁ、俺の名前?六条千景っていうんだ。ろっちーって呼んでね」
「はぁ……」

ギュッと両手で握られている私の手はどうやら離してもらえないらしく、青年・六条千景は1人で熱く語りだそうとしていた。

「しかしお嬢さんも災難だよね、あんなブ男なんかにナンパされちゃって。どうせなら俺みたいなイケメンの方が良かったよねぇ。あ、っていうか名前聞いてもいい?」
「…桜で「桜か、なんていい響きなんだろう!!」

君にピッタリの美しい名前だ!!と1人感動するように言う千景さんはちょっと変人にしか私の目には見えない。
でもどうやら私をナンパしてきた男を撃退してくれたらしい。
そういえばナンパの真っ最中に横から伸びた脚によってチャラ男は飛んでいった気がする。

「…あの、どうもありがとう」
「どういたしまして、というかこれは俺の仕事みたいなもんだから気にしないで」
「……それでも、助けてもらったのは事実ですし」
「桜はいい子なんだね、ますます惚れちゃうよ」

うんうん。と頷きながら言う彼に、私は思わず驚いた顔をしてしまった。
だってこの人、ドサクサに紛れて『惚れちゃう』とか言わなかったか?
これでは先程の男となんら変わらない展開になるんじゃないかとさえ思えた。

「はっきり言うよ、桜…。是非俺と付き合ってください。君の美しさに惚れてしまったんだ」
「いや、まだ初対面なんですけど…」
「所謂一目惚れってやつさ。俺なら桜を一生幸せにするから、ガチで。いやマジで」

だから一緒に埼玉へ行こう!!と言って私の手を握っていた手を今度は両肩へと移した。
言ってる事はプロポーズっぽいけど、私池袋から出る気はないのに…。

「…あー、その、断る事って出来ますか?」
「ムリ。でも『Yes』の返答を待つくらいなら出来るかな」
「……じゃあそれで譲歩します」
「ホントに!?やったね、俺絶対桜の事落としてみせるから!」

そう言って嬉しそうな笑顔を見せられ、私はその笑顔にきゅんと胸が鳴ったのは秘密だ。




恋に落ちる3秒前


(因みに俺To羅丸ってとこの総長やってるんだ)
(…思い出した、昼間はハーレム作ってうろついてるって噂の人だ!!)
(え、ちょっと何その噂)
(知り合いの上司の人が言ってました。そっか…私はその中の1人に入れられるべく告白されたんですね)
(それは絶対に違うから、本当にガチで!じゃない、マジで!!)
(……冗談ですよ、ちょっとからかってみただけです。可愛いですね、千景さん)
((きゅん))
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