5万hit企画 | ナノ


▽ ヒートアップ


暑い。暑い。暑くて死にそうだ。
今日は夏休みだと言うのにFクラスは補習。まあ、僕らの成績が悪いのが仕方がないんだけど。…それにしても目の前が目ざわりだ。そのせいでさらに暑く感じられていると思う。


「ねえ、康太。此処分かる?」

「…………分からない」

「じゃあ私が教えてあげるー!」


僕のクラスメイトでもあるムッツリーニとその彼女である立花月乃。たまたま彼らは席が隣同士になってそしてたまたまその後ろが僕の席となっているため本当に目ざわり。え、何故かって?そりゃあ決まってるじゃないか。


「…………月乃、ち、近い」

「えー?いいじゃん。私と康太の仲なんだから」

「…………!!(ブシャァァア)」


目の前で平気でイチャついているから。いや、ムッツリーニの方はそんなつもりはないと思うんだけど立花さんが、ね。人の目を気にせずにムッツリーニに近づくわけだよ。好きな人と話したいってのは分かるけどね。でもね、見ている僕らの気持ちも考えてみてよ。…くっ、羨まし過ぎる…!


「先生ー!康太が鼻血出したので保健室連れて行っていいですかー?」


嬉しそうに手をあげて先生に聞く立花さんだが先生は苦笑いしている。そりゃあ、ムッツリーニが鼻血出すなんて日常茶飯事だからあえて保健室に連れて行かなくても、という考えからだろう。…ちょっと可哀想な気もするけど、ムッツリーニは保健室に行かなくても元気だし。それに、もしも保健室に行って立花さんとムッツリーニが二人きりだったら…


「先生ー!立花さんの代わりに僕が行きます!」


気が付けば席を立って自分が連れて行くと言い出していた。


「えー、なんで吉井君が出てくるの?もしかして康太のことが好きなの!?」

「ちがうよ!」


どうして僕がムッツリーニの事が好きって話になるの。てか男に興味は無いからね!?


「じゃあ良いじゃん。私が康太を連れて行って」

「まあ、お前ら落ち着け」

「雄二…」


自分が連れて行くと聞かない立花さんを止める僕に僕らの会話を止めたのはクラス代表でもある坂本雄二。


「間を取ってこうしよう」


さっすが雄二!僕らが納得する道があるんだね、と僕は期待しながら雄二の声に耳を傾けた。


「俺が立花を保健室に連れて行く」

「それ何も解決してないからね!?」


本当にクラス代表か?たまに的外れなことを言い出すもんだから疑っちゃうよ。


「えっと、そろそろどうするのか決めてくれませんか」


いつまでも授業を中断させるわけには、と先生が口を挟む。僕はすいません、と謝った。


「だから私が康太を保健室に連れて行けばいいの!そしてあわよくばイチャイチャして」

「おい、欲望がダダ漏れだぞ」

「え!?」

「…………(ブシャァァア)」

「何でも良いけどムッツリーニ、そろそろ死にそうだよ」


何だかんだ言って立花さんがトドメを刺しそうなんだけど、と血の海に沈んでいる友人を見てそう思う吉井明久でした。


* * *


午前の補習が終わって昼休憩になった。ちなみにムッツリーニは保健室には行かずに自分で応急手当をして難(?)を逃れた。普段から鼻血を出しているせいで手当ては惚れ惚れするぐらい手際が良かった。


「もー、吉井君が邪魔しなかったら康太と二人きりの時間が増えたのに」

「いや、補習中だから」

「吉井君に言われたくない!」

「なんで!?」


僕、間違ったこと言ってないのになんで怒られなければならないの!?


「なんだお前ら騒がしいぞ」

「雄二ー…」

「そんな情けない声を出すなよ。気持ちが悪い」

「四面楚歌か!?周りは敵ばっかりなのか!?」

「明久にしては難しい言葉知ってんじゃねーか」

「"僕にしては"は余計だよ!」


と、騒ぎながらも僕たちはちゃぶ台に弁当を広げる。


「あ、私、康太と二人きりで食べるから」

「「「えっ」」」


ごめんねと、謝る立花さん。そして驚くムッツリーニ。いや、なんで当の本人が驚いてるの。


「つーことで、さいなら!」

「あ、ちょっと」


と、立花さんは自分の弁当とムッツリーニの弁当を片手で持ち、もう片方の手にはムッツリーニの手を掴んで走り去って行った。
…あーもう、好きにして。


* * *


屋上。
補習はFクラスだけなため屋上は誰も人が居なかった。まあ、外だしこの時期だからかもしれないけど。


「康太。大丈夫?」

「…………問題ない」


私が勝手に連れてきたものだからもしかしたら康太、気を悪くしたんじゃないのかなと思ったけどそうではないみたい。良かった。


「影に行こっか。暑いし」

「…………(コクリ)」


屋上は暑いけど影に入ると幾分暑さがマシに感じられた。


「……康太、顔赤いけど大丈夫?」

「…………問題ない」

「………?」


影に入ったのは良いけれど、康太の様子が段々とおかしくなっていくのが分かった。どうしたんだろう。


「こう、た?」

「…………ごめん」

「え?」


壁に背を預けていると康太は私の顔の両側に手を着いた。そして私の上にまたがる状態。


「…………我慢できない」

「我慢、て?」


聞いた直後、康太の唇が私の唇に重なった。
いきなりだったため驚いたけど私は嬉しかった。康太が私のことを好きって言っている証でもあるから。
時折お互いの息が漏れてそのせいで心臓の速さが増す。


「「…………」」


少ししてから離れるとお互い頬を赤くしていた。暑さのせいでもあるけれどキスをしたせいでもある。


「…………月乃が積極的過ぎるから」


我慢できなくなった、と康太は言った。


「だって康太が好きなんだもん」


好きな人には積極的にもなりますよ。


「…………」

「康太?」

「…………もう1回してもいい?」

「…うん」


私たちは学校であるのにも関わらずそのあと何度もキスをした。なんか学校でするのって逆にドキドキするなぁ。


ちなみに昼休憩開けの補習に遅刻したのは言うまでもない。





ヒートアップ
…………汗がまた色っぽ…いや何でもない。





++++++++++++++++++++++++++
後書き

50000hit企画第20段。
間宮ルカ様からのリクエストでひたすらイチャイチャラブラブ、でした。
あまりイチャイチャラブラブではなかったような気がしますが(汗)
すいません、恥ずかしくてこれが限界です(笑)

間宮ルカ様のみお持ち帰りOKです。
リクエストありがとうございました!
(2012.07.21)
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