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逃げようとした。逃げようとしたんだけどクラスメイトたちがそれを許してくれなかった。
「…えと、おかえりなさいませえ、ご主人様っ、?」
俺の目の前には勝谷先輩とかなちゃんが立っていた。
かなちゃんはいいんだよ?優しくまるで兄のような目で俺を見守ってくれてる、trumpの年上の人たちと同じ眼差しなんだもん。でも勝谷先輩はがっつり俺に見惚れてるよね??!もうやなんだけど!!
「のんたん、かわいいね。似合ってるよ」
「えへへ、ありがとー。…お席に案内しますねえ?」
かなちゃんに褒められてついついメイドさん口調を忘れそうになりながらも俺は2人を席まで案内した。勝谷先輩からの視線が痛いのなんのってね。
「ご注文決まりましたらお呼びくださあい」
俺はそう言って早々と2人、…勝谷先輩から逃げて厨房スペースに向かった。
そこではれんちゃんが待ってくれていて、俺はれんちゃんに抱きついた。
「もうやだあ、誰があの人たちの接客代わってよう、」
「笹原以外行けるわけねーだろ!会長たちの接客なんて!」
「ほんっとやだから勘弁してください、、あぐー」
変わってくれとお願いしてもみんなそろって首を横に振るばかりだ。困った俺はあぐに助けを求めた。
「…しょうがないな、のんたんは。みんなこのこと一生口外しないでね」
そんな俺を見かねたあぐりは困ったように笑って俺の頭を撫でてから、顔にかかっていた前髪を上げて手早くピンで固定した。
クラスメイトが驚いた顔をしていたが、あぐりはそんなこと気にすることもなく、余っていた適当な衣装に着替えた。
あぐりが着替え終わったタイミングでかなちゃんに呼ばれ、あぐりは魔女っ子コスで2人のところに行ってしまった。
「れんちゃん、おれ、…」
「あぐりが頑張ってくれてるんだから戻ってきたらお礼言えよ」
「うん、」
あぐりが頑なに人前で顔を晒したくないのだと言っていたのを俺は知っている。もちろんれんちゃんも。そんなあぐりが俺のためにやってくれているのだ、俺のわがままで
俺はずっとあぐりを見つめていた
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