※4

ジョニィは徐に、ベッドに横たわるジャイロの上に身を屈めた。
野宿でない夜は久しぶりで、柔らかで清潔な寝床に浮き立つ心のままに、談笑をしていたはずだったのだが。
近すぎてぼやけるジョニィの瞳は故郷の海のような碧色で、あまりにも深く揺らいでいたので、ジャイロは何も言えなくなってしまった。

唐突にジョニィの舌がペろりとジャイロの唇を濡らした。
べろっと舐めあげられ、舌先でつつかれる。
縁をなぞり、引き結んだ上下の境目を解すように何度も往復する。
ジョニィは親指をジャイロの顎にかけ、うすく口を開かせると、次は濡れた唇の奥に覗く金歯を舐めていった。
どうやら行為に夢中になったらしい。
ジャイロも嫌ではないので、ジョニィの好きにさせておいた。
第一、ここで邪魔をして拗ねられでもしたら後で困るのだ。
金歯の表面に施された細工を丁寧になぞり終えると、ジョニィの唇から熱い吐息がそっと漏れた。
温い風がジャイロの頬を撫で、大地の色を含んだ毛先を揺らす。
「舌、出して」
ジャイロはゆるりと歯列を割ることでこれを是とした。
ぬらりと艶めかしく、肉厚な桃色が重厚な金とのコントラストをつくる。
ふるふると睫を揺らし、瞳でもその様を堪能した後に、ジョニィは自らの舌をそっと重ねた。
やわく、しかし確かにその熱を舐め取り、こくりと喉が咽下に動く。
何度も、何度も。
飽きることなく愛撫は繰り返される。
「…おい、ジョニィ おまえさん、猫にでもなったつもりか?」
とうとう片眉を上げ、揶愉するようにジャイロが問うた。
さて、どんな顔をするかしらと思っていると、ジョニィは臥せていた瞼を開いた。
「にゃあん」
瞳の中に広がる碧、空が海を囲み、キラリと星が瞬いて、その中にジャイロがたゆたっている。
もう、どこにも逃げられはしないのだ。
ジャイロは理解した。

たとえ世の理である死でさえも、二人を分かつことはできない。



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