11.捻挫と君

テストが終わると待っているのはそう、楽しく辛い部活動生活である。テスト期間は体も鈍るし心も荒む。丸井は最後のテストが終わるとすぐに教室を飛び出した。

廊下でジャージ姿の幸村とすれ違う。

「あ、間宮さんまだ教室にいる?」
「 いると思うぜ?」
「赤也が、英語は大丈夫だけど数学がたぶん赤点ってラインしてきたから」

今日の練習楽しみにしててねと笑って3-Bに入っていく部長に、いつもなら悪態をつく所だが今日はテニスができればなんでもいい。運動できる喜びに心は浮つき、階段を数段飛ばしでかけ降りていく。

調子に乗っていた丸井は前から女子が登って来るのに全く気付かない。そのまま正面衝突してバランスを崩し、身体が宙に浮く感覚に冷や汗が流れる。手すりを掴み着地には成功したが、右足から捻挫の痛みが感じられた。

「ってぇぇ」

涙目で謝る下級生であろう女子生徒をなだめて、走り出そうと足を踏み出すが力が上手く入らない。

丸井は周囲の心配の声に笑顔で対応したが、大会が近い事もあり保健室に向かった。

保健室は薬品の匂いが苦手で今まで来ることは殆どなかったが、若い先生がなかなか手際よく処置をしてくれた。今日は足をつかないのよと言われ、松葉杖を受け取る。


「ついて無さすぎだろぃ……」

コートに立てない事が確定し、気を落とす丸井。

「……すみません」

ガラガラと戸が開き、足を引きずる間宮が保健室に現れる。

「前方不注意で、階段から落ちそうになって足挫いちゃいました」



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2人で松葉杖をつきながら、校舎の中を歩く。慣れない動きはとても窮屈で、スピードはとてもゆっくり。雑談をしながら昇降口へ向かう。

「さっき幸村くんに赤也くんの数学補修頼まれちゃった」
「幸村くんに目つけられたら生きて帰れないぜぃ」
「あはは、怖ーっ」

隣でケラケラ笑う間宮に、以前のスマホのメッセージ内容を思い出す。

「そういえばさ、お前彼氏できた?」
「え?急にどうした?」
「あー、いや、クラスのやつが何か言ってた」

間宮の反応を伺うが、慌てる様子はない。丸井は"まだ付き合ってない関係"に認識を改めた。スニーカーに履き替え、それぞれの練習場に向けて歩き出す。

「あ、さっきの話。今度デートは行くけどね」

別れ際にそう言った間宮に丸井は相手を尋ねる。しかし間宮は誰か答えず、バイバイと手を振ってから歩いていった。

「宍戸か………」

間宮が去るのを見送り、丸井もテニスコートへ向かった。

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