湯浅高校、教室

渋谷さんの結論では、通販ではない藁人形…いわば手作り型の呪詛?が今回の原因らしい。私、藁人形に釘打つ丑の刻参りしか知らないんだけど、それは民間伝承の域とか。渋谷さんの解説曰く、歴史を遡ると藁人形を使用することで人じゃないモノが術者の変わりに目標に危害を加えにいくことが原型、らしい。で、今回はその原型に基づいて呪詛が行われていると。そして、今後の行動方針としては

「みんなには遇人を捜してもらいたい」

ということらしい。厭魅を打ち砕くには呪詛を呪者に返すか、遇人を捜して焼き捨てる2つの手段がある。そして渋谷さんが呪われたのは2,3日前のはずなので、痕跡が残っているはず、と渋谷さんが難しい言葉を使いながら説明した。げんなりした滝川さんが、何故か私の方に近づいて来る。何?何?

「さや、お前の鼻で人形見つけられねぇか?」

んな無茶な。そして、何故皆さん滝川さんと同じ目で見てくるの?私たちの鼻はそんな万能じゃないやい(多分)。渋谷さんも何でかじーっと見てくるんだけど、ないからね、できないからね私たちは。

「さやにそんな力があるかどうか調べることは大変、興味深い」
『くぅ…』

ないのに。できたら早く問題が解決するんだろうけど、私たちの鼻は何も異常を訴えていないし。惹かれるものも避けたいものも感じられないんです、はい。むしろそんな危なそうな物に近づきたくもない。そんな気持ちが耳と尻尾に現れて、垂れ下がる。

「さや、悪い。もう言わねぇから、そうしょぼくれるな。な?ナルちゃんもさやを怖がらせるんじゃねぇって」

滝川さんが慌ててフォローするくらいには、情けない風貌だったと思われます。感情がそのまま表に出てくるのは、良いのか悪いのか。

「…怖がらせるつもりはない。さやに関しては継続して様子を見ていく」

何だかな。前々から思ってたけど、今初めて怪しんでます!興味あります!調べさせろ!って渋谷さんの本音が宣言された気がする。気がするけど、私はただのもふもふわんこです。何にも知りませんー、て顔を必死に取り繕う。私ただのわんこです、日本語ワーカリーマセーン(今更感が果てしないけど気にしない!)

「まずは、この件だ。取りかかろう」

あ、でもやることは変わらないんですねそうですよね。


◇ ◇ ◇



とりあえず、渋谷さんに引きつられて校内を探索中。生徒とすれ違うたびにぎょっとされる私。そりゃあねぇ、子犬だったら撫でられるんだろうけど、私、意外と大きいからね。オオカミ様が怖がられているんじゃないよ、だから落ち込まないで。
着いたのは教室。渋谷さんがすたすたと一番後ろの机に近づいていく。嫌な感じは、すごくする。ってか、視覚的に赤黒い煙?おどろおどろしいものが溢れ出ているんですけど!渋谷さんが何かを探し出した瞬間、に。私の意識が、沈む。体の支配権がオオカミ様になる。

私たちにしか見えない筆が、墨で渋谷さんの手にあるものを塗りつぶす。何か書かれていた文字も塗りつぶされていた。

「…なんだ、これは」

墨だらけになっている何か。形は人形の板、であった。私がオオカミ様の体を動かせるようになったところで、全力で目を逸らす。私何も知りませんよー、ただの犬よー、最初から墨だらけだったんじゃないでしょうか〜、のアピール。何故か渋谷さんの視線が私一直線だったけど、何でもかんでも私の仕業扱いはよくないよ!合ってるけど。

「あとで、カメラの確認をしよう」

まずい。忘れてた。
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