其の四 歓迎会はキャストが大事だよね



私は病弱だ。いや訂正。病弱だった。
トリップする前の元の私の身体は10分すらの運動でもバテバテになるほどひ弱だったが、今の私の夜兎の身体はまさに健康体そのものらしく、どんな運動を長時間してもバテることはなかった。更にさすが戦闘民族とも恐れられている夜兎族の身体。屋根に飛び移れるほどのすさまじいジャンプ力にすさまじい腕力が私をフィーバーさせるには十分だった。

これも私であって私でない身体に私の精神が入り込んでしまったおかげだ。何故そうなったのかはわからないが、ま、どーでもいいだろ。伊達に夢小説読みまくっていたわけじゃないんだぞ。順応性は高いんDAZO!
まあ、色々だべっていたが何より言えることは



「健康体ばんざーーーーいっ!!!」

「おいいぃぃぃ!!!修理する屋根壊すんじゃねぇーーーー!!!」



で、私達万事屋は今、屋根の雨漏りを直す依頼を受けている。結構なぼろ屋敷だったため、雨漏りの数が半端ねぇ。手分けして直している最中なのだが、まだこの身体の力加減を覚えてない(+フィーバーしていた)私はことごとく屋根をトンカチで破壊しまくっている。



「たははは....いや〜今まで外に出てこんなに動き回れて事なかったもんで嬉しくてつい、な。」

「にしても限度というもんを知れ!俺が修理してく数とおめぇが壊していく数が比例しねぇんだよ!むしろ、反比例してんだよっ!!」

「ぎ、銀さん!!」

「あ〜〜?んだよ新八。おめぇもさっさと仕事しろ。」

「それどころじゃないですよっ!神楽ちゃんが屋根一体破壊しまくってるんですよ!!」

「今日の仕事の報酬で酢昆布十箱以上買えるネ!!酢昆布食べ放題アル!キャッフォーーイ!!」

「誰かあぁぁぁぁ!あの凶暴娘止めてきてぇぇぇ!!!屋根どころか家自体なくなるぅぅぅーーー!!!」



酢昆布を買えることを予想して嬉しそうにバッキッバキ音を鳴らして屋根一体を破壊していく神楽に、必死で止める銀ちゃんと新八。そんな三人を微笑ましく見つめる私の姿が正午の江戸の街に見受けられた。



「よし!じゃあ私も頑張って直すかな!?ほりゃっ!」



バキッッ!!



「いい加減にしろっこのバイオレンス姉妹がぁぁぁぁ!!お前らの頭トンカチで叩き割んぞぉぉぉ!!!」




*****




「あーあ....。結局約束の半分しか報酬貰えなかったじゃねぇか...。どーすんだよ今月よぉ〜。もう仕事はいってこねぇよ。今月の給料でねぇかんな。」

「あ、神楽。酢昆布1個頂戴。」

「乙実姉になら、ドンドンあげるアルよ!」

「聞けよ、人の話を!!」

「銀さん。乙実さん達に何を言っても無駄ですよ。」



すまんな、2人とも。私は健康体になれた嬉しさからもう人の話なんか左から右に流れていっちゃってんだよ。いつも人の話なんか聞いちゃいないけどな!!

呑気に歩く私と神楽の後ろからはアンニュイなオーラを放つ銀ちゃんと新八が歩いている。すると前方のスーパーから出てきた人物に声をかけられた。



「あら?新ちゃんじゃない。それに神楽ちゃんに銀さんも。...あら?見慣れない子ね。」

「姉上!!」



あ〜なんか見たことあると思ったらお妙さんか。間近で見てみるとホントに綺麗な人だな〜。腹の中に魔獣抱えてるとは思えないほどの笑顔だ。



「姉上、前に話した神楽ちゃんのお姉さんの乙実さんですよ。」

「まあ!あなたが神楽ちゃんのお姉さんの乙実ちゃん?初めまして、私は妙って言うの。ヨロシクね。」

「あ、どーも。こちらこそヨロシク。」



何とも優雅に頭を下げられたので、慌てて私も頭を下げた。



「それにしても神楽ちゃんに似てるわね。ホントに可愛いわ。銀さんと一緒に暮らしてるんですってね。あの変態天パーに厭らしい目で見られたり、セクハラまがいのことされてない?何かあったらすぐに私に言ってね?5秒で刺殺してあげるから。」

「姉上...それマジで怖いんでやめてください。」

「姉御かっけぇぇぇー!!私も乙実姉に何かあったら姉御を手伝うヨ!!」

「好き勝手抜かしてんじゃねぇよ。誰がチンチクリンなお子様を襲うかよ。もっとこう...ボンッキュッボンッの女ならまだしも...。」

「おおっと、銀ちゃんのおでこにハエがっ!!死ねっ!!」



傘の先端から銃弾を発射させ銀ちゃんの眉間を狙った。「うおぉぉぉぉ!!!」と図太い声を発しながらも銀ちゃんはすれすれによけやがった。

ちなみに傘は私が万事屋に住むことが決定したその日に近くのゴミ捨て場で発見して持ち帰ってきた。




「てめっ乙実この野郎!!今明らか俺を狙ったよな!?最後の『死ね』も俺に向けて言ったよなっ!?」

「ッチ...はずしたか(笑)」

「ほら、今も殺意が俺に向けられてんじゃん!!何(笑)って!!」

「乙実ちゃん、銀さんを狙うときはもっと近くの零距離からねらい打ちしなきゃ。この人ゴキブリ並の素早さだから。」

「あー確かに。次からはもっと近くで射撃するよ。」

「ちょ、何この女性陣!!めちゃくちゃ怖いんですけどぉぉぉ!!」



しょうがないよ新八。だって私らだもん。



「そうだわっ!丁度買い物してきた所だし私の家でお昼食べに来ない?」

「ご飯が食べれるアルかっ!?行くアル!!」

「え?お昼って....まさか、姉上が作るんじゃ....。」

「ええそうよ。何か問題でも?」

「ありまくりに決まってんだろうが!!おめぇの飯なんか食ったら胃もたれどころじゃねーぞっ!一口目で一気にあの世逝きグフッ!!

「あの汚らしい天パーはおいといて私達だけで行きましょ。ほら乙実ちゃんも。」

「う、うん。」



一蹴りであの銀ちゃんを昇天させるとは...さすが妙さん。恐ろしい子っ!!
とりあえず、気絶している銀ちゃんを私が担ぎ上げて妙さんの家へ直行した。

志村家に着いた私達は居間で冷や汗をかきながら妙さんの料理ができるまで待っている。誰一人として言葉を発する人がいない。
なんかもう、死刑宣告された囚人のような感じだな...。



「はぁ〜い。みんなお待たせ。私特製卵焼きよ。乙実ちゃんの歓迎の意も込めてちょっと作り過ぎちゃったみたい。遠慮しないでドンドン食べてね。」



と、言われて出されたのはもう汚染物質の塊のような真っ黒焦げの物体。
なんかこれジュウジュウ言ってるんだけど?え?何これ、酸性?食べると胃どころか口内食道全部やられる感じ!?



「あら?みんなどうしたの?ほら、乙実ちゃんのために作ったのよ?遠慮しないで?」

「あ、あ〜〜妙さん?」

「あら、やだわ。そんな堅苦しくなくてもいいわよ。全然フレンドリーに呼んじゃって。」

「あ、そう?じゃあ、妙ちゃんで...。で、妙ちゃん?気持ちはホントに嬉しいよ?もう就寝についても布団の中で小躍り出来るほど嬉しいんだけど、生憎私卵アレルギーでさ。食べるともう全身に蕁麻疹どころじゃないぶつぶつができちゃうんだ。だから、気持ちだけ貰って、後は銀ちゃんに....。はいどーぞ。」

「ちょ、乙実!お前盛大な嘘ついてんじゃねぇぞ!!お前今朝卵焼きナチュラルに食ってたフゴォッ!!

「い い か ら 黙 っ て 食 っ と け ?」

「銀ちゃーん!私も朝ご飯がまだ腹に溜まっててもう入らないネ!銀ちゃんにあげるアルよ!」

「銀さん....僕もこれ以上目が悪くなりたくないんで...。」



おお、私の攻撃からみんなが一丸となって銀ちゃんに集中攻撃だよ。まさにチームプレイ(違
てか、新八はもう本音が出ちゃってるよ。それほどまで目にも障害が...!?恐ろしや。



「まあ!全部食べてくれて嬉しいわ!でも、乙実ちゃんが卵アレルギーだったのはちょっと残念ね。今度は違う料理でもてなして上げるわね。」


「ははは....そいつは嬉しいや。」



ぶっちゃけ言うならマジで勘弁願いたい。だって、ほらあの白夜叉と恐れられてた銀ちゃんがKOされちゃってるもん。後ろで泡ふいてんぞ。



「デザートにバーゲンダッシュ食べましょ。ほら、そこの薄汚ねぇ天パー寝てねぇでさっさと買ってこいよおら。」

「うごおぉっ!!?」



妙ちゃんは笑顔で死亡している銀ちゃんの腹に重い一撃をくらわした。当然銀ちゃんは口から真っ赤な液体を吐いた。私は何も見てないし聞いてない。うん。




*****




「ったく...だから俺はお妙んとこ行きたくなったんだ...。」

「銀ちゃーん!!」

「乙実?」



1人で買いに行かされた銀ちゃんをおけて後ろからダッシュで駈けて追いついた。



「んだよ、おめぇお妙んとこで待ってんじゃなかったのか?」

「いや〜妙ちゃんがまた悪質な物体を作ろうとするから2人を生け贄にしてきちゃった。それに銀ちゃん一人でバーゲンダッシュ100個も持てないっしょ。私手伝ってあげる。」

「ホントにお前は自分本位だな...。妹を生け贄って...。まあ、そんなら思いっきりこき使ってやるよ。」

「人間誰しも自分が一番って奴らよ〜。ま、私が10個、銀ちゃんが90個ってとこか。」

「お前それ全然手伝う気ねぇじゃねぇかっ!!」

「まーまー細かいこと気にしてっと禿げんぞ?」

「おい、引っ張るな!って俺の毛根はそんな柔じゃねぇよ!」



そう悪態をつく銀ちゃんを引っ張りながら少し早歩きで歩いた。



「ったく、お前はしゃぎすぎなんだよ。今日の依頼ん時もそうだったけどよ。」

「え〜だって、今まで病弱(設定)で全然外で遊んだりとか出来なかったんよ。健康でしかも身体能力抜群の身体になったら楽しくってしょうがなくってな〜。ちった〜多めにみちょってくれや。」

「はあ〜しょうがねぇな。」



頭をかきながらため息をつきつつも銀ちゃんの顔は全然しょうがないとは言ってなかった。さすが、根はお人好しの銀ちゃん。

今日も江戸で過ごす日は楽しいっす!

 

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