其の三 落ち着くとこに落ち着けば○
「で?ちったぁ落ち着いたか?」
銀ちゃんからお茶をもらい一息ついた。
「お見苦しいところを大変申し訳ない。テンパると周りが見えなくなって暴走する癖があるんですよ。しかも他人巻き込まなきゃ止まらなくて。」
「はた迷惑なてんぱり方だな、おい。で?おめぇさんは何でうちの前に倒れてたんだ?飯ならねぇぞ。」
「いや〜この家の玄関の前に倒れてたのは私も想定外の事態で説明できないんですが.....あの〜その〜まあ〜....そういうことです。」
「どういうことだっ!?」
「あ〜〜......ちょっとありえん話なんですけど、聞いてもらえます?」
とっさのいい嘘も考えつかなかった(考えるのもめんどくさかった)私は取りあえず、今までの出来事をありのままに話すことにした。そしてこの世界が漫画になってることも話しておいた。
「あ〜違う世界からねぇ....。しかも俺が主人公の漫画ね〜。嫌な気はしねぇよ?むしろさすが俺!って感じだよ?まあ、取りあえず知り合いの精神科に電話かけてやるよ、うん。」
「はは...まあ、普通は信じませんよね。そりゃそうですよね...仕方ないですもんね。」
「とか言いつつ俺の胸ぐら掴むのやめてもらえませんかぁぁぁ!!!!」
いや、そりゃ私もいきなり見知らぬ人間から「異世界からきちゃいました、テヘ☆」なんて言われたら爆笑しながらムーンサルトをお見舞いするけどね。
はぁとため息をつきながら髪を耳にかけた。
あれ?私こんなに髪の毛長かったっけ?そしてこの髪の毛の色は何?ピンク?
「ちょ、そこの天パー!鏡貸してくりんさい!!」
「天パー言うなっ!これでも傷つきやすい青年なんだからなっ!ちょっと待ってろ。」
鏡を捜しに戻ってきた銀ちゃんはほらよ、と鏡を手渡した。すぐにそれを奪いさるように受け取った私はすぐに自分の顔を写した。
「なっ....なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁーーー!!!」
「うぉっ....どうしたってんだ、いきなり。自分の顔があまりにも酷すぎて鏡がわれちまったか?」
「それならまだいいっての!この髪と目の色はなんだよっ!!」
「(まだいいのか)なんだも何も、初めからその色じゃねぇか。」
鏡に映った自分の顔は紛れもなく生まれてから今まで見てきた自分の顔だった。しかしあるところが破滅的に違っていたのだ。
なんでサーモンピンクの髪の毛に目が青くなってんだぁぁぁ!?夏休み明けの中2もこんな色になんか染めないよぉぉ!!思えば自分の来てる服もなんか知らんがチャイナ服になってるし!!てか、何このドッキリ!?いきなり銀魂にトリップして自分の髪と目の色が違くなってるとか笑えないよ!どっかに企画者隠れてんだろ、どーせ!!さっさと出てこいよ!私の回転旋風脚くらわしてやんよ!!
「お、おい?どうした?さっきから1人で悶えてちょっとどころじゃない怪しさ満点なんですけど?」
「ただいまアルー!!」
「ただいま帰りましたー!!」
私が1人悶えて銀ちゃんが何気に怯え始めているところに、まだ少し幼い高い声と、変声期この間終わりました的な少年の声が玄関から聞こえた。
「銀ちゃん、定春の散歩行ってきたアルよ。」
「ついでに今日の夕飯の材料も買って来ちゃいました。ってアレ?どうしたんですか?」
「あ、いや、な。」
「あ、お客さん来てたんですか?てか何で銀さんそんなに怯えてんですか?お客さんに失礼じゃないですか。」
聞き慣れた声に少しパニック状態だった私の頭は落ち着き三人が立っている方へむき直した。
「あ、なんか1人で悶えちゃってスイマセン。また頭の中でフィーバーっちゃって。」
「......姉...。」
「へ?」
「神流姉ぇぇぇぇーーーーー!!!!!」
「グウフォオォォッッ!!!」
何故だか知らんが、神楽は私を見るなり知らぬ名前で呼びながら猛烈なタックルを喰らわしながら腹に抱きついてきた。
あ、やばい今日の朝ご飯が口からイルカの大ジャンプしそうになった....。というか口の中が仄かに胃酸の味がする。
「ちょ、く、苦しい!!落ち着こう!!とりあえずもちつけ!!肋骨がミシミシ音立てちゃってるぅぅー!!」
「お前、神楽の姉貴だったのか?どーりでどっかで見たような顔だと思ったぜ。」
「いや違うから!!つーかさっきお前に私の経緯話したよなっ!?」
「神流姉今までドコ行ってたアルか!?私ずっと探してたヨ!ずっと心配してたヨ!!」
「いやいやその前に離してください、マジお願いします!!ホントお願いしま....フグッ....。」
「ちょ、あんたら全員落ち着けーーー!!この人泡ふいちゃってますからっ!!」
お花畑のあるところで危うく船も使わずに川を渡りそうになったところで現実に引き戻された。
あぶねぇ、危うくバタフライで向こう岸まで行くところだったZE。
初めのように全員がお茶を飲み、ふぅと一息ついたところで再度さっきの騒ぎについての話に入った。
「で?神楽。こいつホントにお前の姉貴なのか?」
「間違いないネ!!神流姉はまだ私がちっさかった頃にいきなり行方不明になってしまったネ!!姉ちゃんの顔を間違えるはずないよヨ!!」
もうここまでくるとパニクる気にもなれないわさ。え〜と、まず銀魂にいきなりトリップしたでしょ?そんで髪と目の色が変わってたでしょ?最後のとどめに私が神楽の姉になっちゃってる.....ってどういうことさ?
すると隣に座っていた銀ちゃんが軽く肩を叩いてきた。
「おい、仮にお前の話が1000歩程譲ってホントだったとして、お前は神楽の姉だった頃の記憶ってあんのか?(小声)」
「んなもんあるわけないっしょ!?『神流』なんて名前初めて聞いたし呼ばれた記憶もないわ!(小声)」
「じゃどーすんだよ!?神楽の奴マジで自分の姉貴が帰って来たとか思いこんじまってるぜ(小声)」
「.....どーしよもないっすね。なんかもう悩むのめんどくさくなってきた...(小声)」
「おいぃぃ!!お前の問題だろうが!!なんでそんなに無気力なんだぁ!!(小声)」
隣同士で座っているため後ろを向いてコソコソと話し合う私と銀ちゃん。
「銀ちゃん、神流姉と何話してるアルか?も、もしかして、銀ちゃん神流姉に気があるアルか!?たとえ銀ちゃんだとしても姉ちゃんに手ぇ出したら私が許さないネ!!」
「落ち着いて神楽ちゃん!!」
「黙れ、姉ちゃんの貞操の危機なんだよ!ただの脇役の地味キャラな癖して私に楯突くんじゃねぇ!!」
「脇役の地味キャラって誰のことだぁぁ!!地味キャラなめんなよ!!主役キャラが輝いていられんのも地味キャラあってこそなんだよぉぉ!!!」
と、また場が荒れ出したのでなんとか沈めてもらってお茶を飲んで落ち着く4人。何なんだ、この流れ。
「あ〜....神楽?い、言いにくいんだけどさ、お前の姉ちゃん、記憶喪失になっちまってるらしいんだ。」
「あ、う、うん。そういうことなんだよ。何かいつの頃からか記憶がチャリに巻き込まれたキーホルダーみたいにどっか行っちゃって....。」
「相当なぶっ飛び方してますね。」
銀ちゃんのナイスな記憶喪失設定に焦りながらも同意して何とかその場を丸め込もうとする。
「嘘ネっ!!姉ちゃんが記憶喪失になったなんて私信じられないネ!!神流姉、忘れちゃったアルか!?2人で絵描いたことも、一緒に寝たことも忘れちゃったアルか!?」
泣きそうな顔で詰め寄ってくる神楽。けど、どんなに神楽の姉の神流に演じようとしても共有してきた記憶がないためにどうすることもできずに俯くしかない。
あーホントに困った。これギャグじゃ乗り切れないよ。さすがに空気読んでどうしよもないよ。
「神楽ちゃん...記憶喪失ばかりはどうしよもならないよ。取りあえず今は一緒に暮らしてみたらどうかな?」
「いいこと言うね新八〜。うんうん、一緒に暮らすね。は?暮らす?」
新八の発言によりまた場の空気が変わった。
「ちょ、新八お前何言ってやがんだ!?俺んとこはもうギリギリの生活なんだぞ!?それに加えてもう1人増えたら家計が破産するぞ!!?」
「まあそうですけど、こんな神楽ちゃん放っておけないし、神流さん?も記憶喪失で大変そうですから一緒に暮らしちゃえばいいじゃないですか。」
「うおぉぉお!!新八のくせにたまには良いこと言うネ!神流姉、一緒に暮らそうよ!そしたら記憶が戻るかもしれないネ!!」
何やら私が万事屋に暮らすことが決定しそうな勢いである。まあ、行くところがなかったしラッキーっちゃあラッキーなんだけどね...。
「ったく、しゃーねぇな。駄目だっつって神楽に家破壊されても困るしな。お前も今日からここに住め。ただし!あんまし食べすぎんじゃねぇぞ。」
「きゃふぉーい!!銀ちゃんありがと!!」
「これからよろしくお願いしますね、神流さん。」
どうやらここに住むことが決定したようだ。もうなるがままになれ。
「あ〜じゃあ、これからヨロシクです。ちなみに今は『神流』じゃなくて『乙実』って名乗ってますんで、そこんとこヨロシク。」
「じゃあ、今度から乙実姉って呼ぶネ!今日は乙実姉が戻ってきてくれたパーティーするよ!!新八、さっさと飯つくるアル!!」
「はいはい。少しは神楽ちゃんも手伝ってよ。後銀さんも。」
「わぁってるよ。それとパフェ作ってくれよ。特大のクリームのったやつ。」
「そんなのファミレスに食いに行けぇぇぇぇ!!!」
なんだかよくよく考えてみれば、今まで漫画やアニメで見てた人たちが目の前で意志を持って動いてるのを見ると、なんだか変な感じだ。
ま、1つ言えることはこれから楽しくなりそうだ。
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