伊達に長く生きてない



あー最近暑くなってきたな〜。また夏がくんのか。ホームレスの俺にとっちゃ厳しい季節になるわな。とため息をついて煙草の煙を吐く。



「あ、いたいた!長谷川さーん!」

「んお?なんだ、涼子ちゃんじゃないの。今日はどうした?また銀さんの惚気か?」

「まあ、それもあるんだけど〜。今日は差し入れ!ミス○のドーナッツが安売りしてたから!」

「お、気が利くね〜。さすが銀さんのお嫁さん発言してるだけある。」

「私銀さんのお嫁さんふさわしいでしょっ!」

「おーおーふさわしいふさわしい。」



でへへ、と笑う涼子ちゃんは普通に可愛いと思う。いや、おじさんロリコンじゃないよ?ただ純粋に普通の感想言ったまでだからね!!そんなんじゃないんだからね!!
銀さんも、贅沢な悩みだな。まあ、確かに行動というかアプローチの仕方が変態じみてても普通に涼子ちゃんは良い子なのに邪険に扱うなんてよ〜。いつか後悔する日がくると思うぜ?



「でさ、ちょっと銀さんにキスしようとしただけで銀さん思いっきり殴るんだよ?彼女に対してひどくね?」

「まあ〜いきなりキスは吃驚するけどよ、銀さんも女に手ぇあげちゃ〜いけねぇよな〜。」

「そう思うよね!?でも私いいんだ!!銀さんからの愛を感じるもの!きゃー言っちゃったー!」

「ハハハ...そいつぁよかった。」



こうしていつも涼子ちゃんの愚痴と惚気を聞いてるのも悪くねぇ。他人の恋バナなんて反吐が出るが、涼子ちゃんの場合はずれてるせいか胸くそ悪くならねぇんだ。まあ、お父さんポジションだからな、おじさんは。



「でねでね!!...あ、少年がこけた。」

「あちゃ〜相当な転び方したな。泣いちまってるぜ。親はどこいんだよ。」

「ちょっと長谷川さん、ごめん!」



そう言うと涼子ちゃんは転んだガキに駈け寄って泣いているガキを立たせて泣きやませようとしている。中々泣きやまないガキに涼子ちゃんはドーナッツを渡して頭を撫でた。するとガキはみるみる笑顔になりそのまままた走り去っていった。

今時珍しいぐらいお節介で優しい子だよ。ホント銀さんにはもったいねぇぐらいだぜ。お父さんお嫁にやりたくねぇな。



「おい、涼子!!」

「あ、銀さん!もしかして私を探しに来てくれた!?」

「んなわけねぇだろ。俺が探してたのはお前が買いに行ったドーナッツだ!いつまで待たせやがんだ。」

「あははは、めんごめんご!この通り買って...あれ?ドーナッツがない?」

「何ぃぃぃぃぃーーーー!!おめぇ何買いに行ったの!?何でないんだよっ!!」

「あ、色んな人にお裾分けして、最後の1つもさっき転んだ少年にあげちゃったから....あ、あはは、はは!!」

「あはははじゃねぇよっ!!」

「いだぁぁぁぁ!!!殴ることないじゃん!!」

「るせぇぇ!!お使いもろくにできねぇ奴にお仕置きだっ!!」



あーあ、また殴っちゃって銀さんは。まあお裾分けしてドーナッツがなくなるってのも涼子ちゃんらしいけどな。にしても、本人達は気づいてねぇかもしれねぇが、ああしてみるとただの痴話げんかにしか見えないぜ全く。



「むぅ〜暴力的な銀さんにはこうだっ!!」

「うおっ!?背中に飛びつくなっ!お・り・ろ!!ただでさえ今日はあちぃんだ!てめぇがくっつくとさらにあちぃんだよ!!」

「ふっ...暑いのは銀さんだけと思ったら大間違い。私も今最高潮に暑い!名付けて『捨て身大作戦』!!」

「それそのまんまのネーミングじゃねぇかぁぁ!!もっかいドーナッツ買ってこいやぁ!!」

「いいよ、もうドーナッツなんて!変わりに私の愛を惜しみなくあげるから!!」

「そんなマイナス因子のもんはいらねぇよっ!!」



こうして俺が見てることに気づいてやってんのかね〜あいつらは。銀さんもまんざらじゃない顔しちゃって。いい加減素直になればいいのによ。見てりゃわかる。

ホントに今日はあっついぜ...。



伊達に長く生きてない

*長谷川さんは人間観察すごそう。

 

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